第23話 祭りの終焉と一抹の寂しさ
「はい。最後のスタンプです。」
ポムッ!✊ポムッ!✌ポムッ!✋
「保坂さん、ありがとうございます。
わあ…✨✨スタンプカード全部埋まったわぁ…!」
「「コンプリートじゃぁ!!」」
その後、室内に戻り、保坂さんにじゃんけんゲーム達成した証のスタンプを押してもらうと、全ての欄にスタンプで埋められたカードを見て、あかりは満足そうに微笑み、精霊達は互いに腕を組み合い喜んでいた。
「生き神様、出し物を全てコンプリートされたとの事、おめでとうございます。
頑張られた生き神様に、真人からまだ何かあるそうですよ?」
「…!!」
「「…!」」
先代贄に話を振られ、あかりと精霊達は、驚いたように俺の方を振り返り…。
俺は咳払いをして、あかりの方へ進み出た。
「あかり、今日は祭りに参加してくれてありがとうな?
島で毎年やっていて、俺も小学生まで参加していた子ども会の祭りの出し物を元に、あかりに合うようにアレンジしてみたつもりだ。
島の人達の祭りの様子をあかりにも体験してもらえたらと思ったんだけど、どう…だったかな?」
俺が躊躇いがちにあかりに聞くと、あかりは目を丸くした。
「…!島の子供達は毎年こんなお祭りに参加しているのね…!
ええ…。エキサイティングでとっても楽しかったわ!!
ありがとう真人…!先代贄様、菊婆、スタッフの皆さん、ありがとう…!」
頬を紅潮させて俺やスタッフにお礼を言う生き神様=あかりを温かい目で見守り、俺、先代贄、菊婆、スタッフの皆は次々に感謝の言葉を述べた。
「おう。あかりが楽しんでくれたならよかったぜ!本当にいつもありがとうな!」
「生き神様…。礼を申し上げるのはこちらの方です。ご立派になられて、感無量です。」
「生き神様…。こちらこそ、いつも島の皆の為、ありがとうございますじゃ。」
「「「「生き神様、ありがとうございます。」」」」
俺はそれを見て、祭りを開催してよかったと胸が熱くなった。
「真人様…。」
「うん。」
奥に置いていた例のものを保坂さんに渡され、俺は更にあかりに向かって歩み寄り、それを差し出した。
「あかり、いつも島の皆を守ってくれてありがとうな…!
これは、俺や皆からの感謝の気持ちだ。受け取ってくれ。」
「…!!あ、ありがとう…。真人…!!」
あかりは震える手でそのプレゼント=大きな紙袋を受け取ると、ガクッと膝から崩れ落ちた。
「うわあぁん…!!嬉しい!!ちゃんと貰えたわ…。うっうっ。よ、よかったわぁぁっ。」
「え、ええ?どした、あかり?!
ちゃんとって??」
「ふうっ。やっとサプライズが終了したか…。」
「ハラハラさせおってからに…。」
プレゼントを抱えて号泣しているあかりに俺はオロオロし、精霊達は何故か呆れ顔で安堵したようなため息を漏らし、周りの皆は温かい目で見守ってくれていた。
やっとあかりが泣き止んでくれたところで、俺は精霊達にも向き合った。
「キーもナーも祭りの準備手伝ってくれて、参加してくれてありがとうな?これ、参加賞の和菓子セットな?」
「「儂らにもサプライズがあるのか?」」
「わあぃ!おまんじゅうじゃ!」
「わあぃ!えびせんもあるぞ!」
和菓子の袋をもらい、小躍りするキーとナーに保坂さんの方を指し示した。
「保坂さんが老舗の和菓子店から取り寄せてくれたんだ。」
「「おう。スタッフの女よ。なかなか気が利くではないか。礼を言うぞ?」」
「保坂さんキーちゃん、ナーちゃんにプレゼントを用意して下さってありがとうございます。」
「いいえ。精霊様方に喜んで頂けるのなら何
よりでございます。」
精霊達も、あかりも礼を言われ、保坂さんは、穏やかな笑顔を浮かべた。
本当に、保坂さんは、いい人だ。あかりはそんな彼女と俺を交互に見て何故か少しすまなそうなホッとしたような複雑な顔をしていた。
「……💦(真人、保坂さん、仲を疑ってしまってごめんなさい…。何もなくて、本当によかったわ…。)」
*
「はむはむ…。まんじゅううまいのぅ…。」
「はむはむ…。えびせんうまいのぅ…。」
「わあぁ…✨✨美味しそうなドライフルーツに、女の子の絵が描いてある本と…、
可愛いお洋服に髪留め…。素敵だわぁ…!」
その後、他のスタッフは解散し、後片付けをしてくれる中、精霊達は、もらった和菓子を堪能し、
あかりは、紙袋の中のプレゼントを、宝箱の中身のように、一つ一つ大事に取り出し、目を輝かせていた。
流石、現役女子高生の渡良瀬さんのチョイスは間違っていなかったらしく、あかりの喜ぶ様子に俺は心の中でガッツポーズを取った。
フリル付きのワンピースを嬉しそうに体に当てているあかりを女の子らしくて可愛いなぁとポーッと眺めていると、ふいに俺の方を向いて、彼女は申し訳なさそうな視線を送って来た。
「あの、真人…。お洋服嬉しいのだけど、生き神は、和服が正装だから、着て見せる機会はあまりないかもしれないの…。ごめんなさいね?」
「ああ。それはいいよ。使えるものだけ使って貰えれば。」
あかりに、出来るだけ、同年代の女の子と同じものをと思ってプレゼントをしたが、もちろん、生き神としての制約はある。
その可愛いワンピースをあかりが着たらさぞかし似合う事だろうにちょっと残念だが、困らせてはいかんと笑顔を浮かべた。
「でも、この髪留めは着物にも合いそうだから、身に付けさせて貰うわね?
あの…。よかったら、真人、つけてくれる…?//」
「…!//あ、ああ。も、もちろん…!」
あかりの頼みに俺は赤い花の髪留めを受け取り、ドキドキしながら、その柔らかくてサラサラの髪に触れ…。
パチン。
「どう…?似合うかしら…?」
そう不安気に小首を傾げたあかりは、花飾りが良く似合っていて、その愛らしさはまるで花の精のようだった。
「うん。似合うよ。す、すげー可愛い…!!//」
俺は勢い込んでその白い手を両手で握り込むと、怒る様子もなく、あかりは無邪気に笑った。
「ふふっ。よかった…!真人、今日は本当にありがとうね?」
「……。」
目の前の彼女は満面の笑顔を浮かべてくれている。これだけ喜んでくれたのだし、祭りは成功したと言っていいだろう。
俺の役割は終わった。
あかりとはここで別れて、次に会うのは儀式の時になるだろう。
けど…。
俺はこの手をもう少しだけ握っていたかった。
「えーと、真人??」
いつまでもその手を離さない俺に、不思議そうに声を上げた彼女に、思い切って言ってみた。
「あかり。あともう少しだけ、一緒に遊ばないか…?」
*あとがき*
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