第32話 必死の蘇生 《四条灯視点》

「……!」


 自室で気を調整し、お腹に宿る命に過不足ないよう送り込んでいたところ、私は屋敷の外の異変に、ピクリと肩を揺らした。


「また、屋敷の近くで遮断されている場所を感知したわ」


「「! 侵入者でしょうか? まさか、島民会の奴らが……」」


 双子の精霊達も警戒する中、私は辺りの気を注意深く探った。


「分からないけれど、今度は前回のものより範囲が広い。二人以上かし……、あっ。あの子が真人のところからそこへ向かって……! っ……!!||||||||」

「「!!」」


 私も精霊達も、真人が迎え入れた鳩が遮断された空間の真上を飛んだ時、急激に気が弱まり、落下するのを感知した。


「キーちゃん、ナーちゃん!! 私をそこに移動させて! 」


「生き神様……!」

「しかし、危険で……!」


「早く!!」


 止めようとする二人に私は必死の形相で頼み込んだ。



         ✽


「いたわ……!!」


 屋敷からすぐの森の入り口の草地に、傷付いた鳩は身を横たえていた。


「カヒュッ。カヒュッ…。」


 矢が真っ直ぐに胴を貫き、白い体は血に染まり、呼吸は浅く、身体を痙攣させているその様子からも致命傷なのは明らかだった。


 可愛らしい仕草で真人やお友達に愛嬌を振りまいていたその鳩の、変わり果てた姿に私はショックを受け、その場にしゃがみ込んだ。


「なんてひどいことを……!!」


 侵入者は凶行後に立ち去ったのか、気配は既にない。


「これは助かりますまい……!」

「ああ。もう数分ももつかどうか……。

 奴ら、許し難い事を……!」


 苦々しい顔で首を振るナーちゃん、キーちゃんに、私は首を大きく振って叫んだ。


「いいえ! まだ分からない。蘇生出来るかやってみるわ!」


「「ええっ!し、しかし……」」


 私は、目を剥く精霊達に叫んだ。


「私がこの子に生命力を注ぎ込んで、治癒力を高めるから、キーちゃん、ナーちゃんは傷の修復具合を見計らって、矢を抜くのを手伝って!」


「「は、はいっ…!」」


「お願い。死なないで!」


 ポウッ……!


 ビクッ……!


 両手を当て、強い光を放ちながら生命力を注ぎ込み始めると、鳩の体は大きく跳ね、中で凄い勢いで皮膚組織の修復が行われていくのを感じた。


「生き神様、そ、そのお力の量は……!」


「ええ。儀式で力が増しているようなの。今まで出来なかった事も出来るかもしれない!」


「し、しかし、そんな膨大な量のお力を注ぎ込んでは、蘇生できたとして何らかの影響が出てしまうかも……」


「構わないわ! この子が生きてさえくれれば!」


 ヤケクソの様に私は叫んだ。


 神の力を全て注ぎ込むような覚悟で、全神経を治療に集中させると、重要な臓器の修復が進み、その機能が回復して来るのを感じたところに、二人に指示を出した。


「ナーちゃん、少しずつ矢を抜いていって?」

「キーちゃん、それと共に傷口の圧迫をお願い!」


「は、はい! く、くぅっ…!」

「は、はい! では、圧力をかけます!」


「グッ…!グギッ…!」


 それぞれ、精霊達は力を併せて、圧迫しつつ、少しずつ矢を抜いて行くと、鳩は苦しげに呻き……。


 ズッ…!


「グギーッッ!」


 血に染まった矢が体外に出た時、鳩は頭を逸らせて、長鳴きし……。


「ふっ…くぅっ…。」

 ガクッ。


 傷口の大部分が修復されたのを確認すると同時に、私はその場に崩れ落ち体を地面に横たえた。


「「生き神様ぁっ!!」」


 キーちゃん、ナーちゃんが泣きながら私に駆け寄って来る。


「うわぁん! 大丈夫でごさいますかぁっ!?」

「うわぁん! 小さいお命もありますのに無茶しすぎでございますぅっ!」


「ご、ごめんなさい。キーちゃん、ナーちゃん。少し休めば大丈夫。お腹の子にも障りないわ……。」


 泣きながら抱き着いてくるキーちゃん、ナーちゃんに心配をかけて申し訳なく思っていると……。


「クルック〜♡」

 スリスリ……。

「!//」


 血で汚れ、羽根の抜けた箇所はあれども、元気になった鳩が私の近くに寄って来て、私の頬に体を擦り付けて来た。


「ヨシヨシ、あなたが、生きててくれて、よかったっ……。真人の大事な存在を一つだけは守れたわっ。うっ…ううっ…」


 私は小さな生き物のフワフワした背を何度も指の腹で撫で、その温もりに涙を落としたのだった……。
















*あとがき*


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m(_ _)m


今後ともどうかよろしくお願いします。















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