第33話 友情の亀裂

 コン! コン! 


「ん?」


 部屋の窓ガラスに何かが当たる音がして、俺が窓の外を覗くと、俺と同じ位の背の男子がこちらを見上げていた。


「トシ!」


 目が合い、こちらに手を上げて来たトシに手を振り、俺は慌てて下に降りて行った。


         ✽



 屋敷の庭の木の陰に隠れるように立っているトシに、俺は駆け寄って声をかけた。


「おお、トシ! こっち来てくれたのは有難いが、どうしたんだ?明日、賽銭箱のところで待ち合わせって言ってなかったか?

 あと、俺の部屋よく分かったな?」


「ま、真人! ああ。ちょっと人に聞いてな……。」


「人に……? それって誰……」


 トシは親友だから問題ないけど、スタッフなら贄の情報を確認もなしに教えはしないだろう。俺が問い糾そうとすると、トシは神妙な顔でずいっと前に進み出た。


「真人! 菊婆の事……残念だったな。大丈夫か?」


「あ、ああ……。トシには心配かけちまったな。あんなんでも、俺のたった一人の肉親だったから、ショックだったけどな……。

 でも、苦しみを受け止めてくれた存在もいてくれたから、今は、自分に出来る事を頑張ろうと……」


「苦しみを受け止めてくれたって何にっ……? もしかして、伝七郎か?」


「えっ。伝七郎?」


 俺の言葉を遮るようにトシに勢い込んで聞かれ、俺は面食らって聞き返した。


「あいつ、まだ家に帰って来ていないんだ。伝七郎、真人のところにいるんじゃないのか?」


「…! 伝七郎なら昨日朝早くに窓から離したが、まだ帰っていないのか?」


 それを聞いて俺も伝七郎が心配になったが、逆にトシはホッとしたような顔になった。


「そ、そうなのか?なら、帰りが遅くなってるだけかも……。あいつ、いくつかエサを貰ってるお得意さんがあるみたいで、そこを回って行ってるのかもな……。」


 そう言ってウンウンと頷くと、トシは俺に笑顔を向けた。


「変な事言って、ごめん。辛いんだろうけど、思ったより真人が前向きでホッとしたよ。


 俺も、お前の為に出来ることがあったら何でも言ってくれ。」


「あ、ああ……。伝七郎、早く帰ってくれるといいが……。トシ、協力は有難いけど、まずは自分の身を最優先にしてくれな?」


 まだ帰らないと聞かされた伝七郎と共に、トシの事も心配だった。


 菊婆がもし殺されたのだとしたら、俺に協力する事で、トシに危険が及ぶかも知れない。


 もう、これ以上大切な人を誰も失いなくなかった。



「ああ、その辺はうまくやるさ。心配する……な……」


 トシはそう言いながら、俺の服の袖の辺りを凝視し固まった。


「トシ?」


 トシは目を大きく見開いて俺の袖を指差し、震え声で尋ねて来た。


「ま、真人、その袖についているのは……、何だ……?」


「えっ? わっ…!! 何だコレっ?!」


 服の肘から袖にかけて、ベットリ血のついた鳥の羽が付いているのに気付き俺が大声を出した。


「真人……。信じていたのに、やっぱりお前が伝七郎をっ……!」

「!! うわっ…!!」


 トシは頬に涙を伝わせ、俺に掴みかかって来た。


 ガターン!!


「返せよ! 伝七郎を返せ!」

「トシ、 違う! 俺じゃない! 何かの間違いだ! 俺が伝七郎に何かするわけないだろう…よっと……!!」


 ドサッ!!


「うぐっ…!」


 押し倒され、揉み合いになる中逆に俺が押し返すと、トシは地面に横倒しになった。

「大丈夫か? トシ……」

 パシッ!

「触るなっ」


「……!!」


 差し伸べた手を振り払ったトシは俺に憎悪の瞳を向けて来た。


「お前とは、もう友達でも何でもない! 社がどうなろうと俺はもう知らないからなっ」


「ト、トシッ!」


 ダッ!


 俺が呼び止めるのも聞かず、トシは駆け出して行ってしまった。


「っ……! もうっ! 何なんだよっ……!!」



 俺は親友だった奴の背中が消えていくのを遣る瀬無い気持ちで見送り、地面を拳で殴りつけたのだった。







 *おまけ話* 小さな訪問者四条灯視点


 コンコンコンッ!


「あら、あなた……!」

「お前は……!」


 部屋の窓を叩くものがあって、私とキーちゃんが近寄ると……。


 さっき蘇生した白い鳩が窓枠に止まっているのに気が付き、目を見張った。


 ガラッ。


「どうしたの? 飼い主さんのところへ帰ったんでないの?」


「クルックー♪」


 窓を開けてあげると、鳩は嬉しそうな声を上げ、中に入って来たかと思うと……。


 パラパラッ。


 くちばしに挟んでいた薄く小さなものを離し、いくつか床に転がした。


「これは……、植物の種……?」


 黒い薄っぺらい雫型のそれを拾い上げて、私が不思議に思っていると、鳩に付き添っていたナーが疲れたような声を出した。


「こやつ、なかなか家に帰らないと思ったら植物の種を集め始めまして、さんざん辺りをうろついて、そうかと思うと教えもしないのに、生き神様の場所へ真っ直ぐ戻ってきて大変でしたわ〜」


「まぁ、そうだったのね。ナーちゃんもお疲れ様。もしかして、この鳩さん、お礼をしてくれたのかしら?」


「クルックル〜♡」


 鳩は私の言葉を肯定するように一鳴きした。


 私はこの小さな生き物がとても愛しく思えて頭を撫でた。


「ふふっ。ヨシヨシ、ありがとう。でも、あなたが生きていてくれただけで、嬉しいんだから、お礼なんていいのよ?この辺りをあんまりうろつくのは危険だから、暗くなる前に飼い主さんの元へ帰ってね?

 ナーちゃん、悪いけれど、もう一度トシさんのお家まで送ってあげてね?」


「了解しました。おい。お前、今度こそ家へ帰るのだぞ?」


「クルックー!」


 ナーちゃんに言い聞かされ、鳩は賢げに一鳴きし、また窓からパタパタと飛び立って行った。


 私がそれを微笑ましく見守っていると、キーちゃんが難しい顔をしていた。


「しかし、あの鳩、生き神様の場所を感知し、儂らが見えているとは……。


 やはり、あの鳩は生き神様が蘇生された時に不思議な力を持つようになったようですな……」


「そうかも知れないけれど、あの子はとても賢いいい子だから、悪影響はない筈よ?」


「まぁ、邪な人間に力を授けるよりは余程よいかもしれませんがね……」


 キーちゃんはそう呟いて苦笑いしたのだった……。







*あとがき*


読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます

m(_ _)m


今後ともどうかよろしくお願いします。















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る