第28話 閑話 予期せぬ訪問者

《香月茜視点》


 クラスメートの鹿嶋葵ちゃんが亡くなったのは、社の御屋敷に真人に会いに行ってから、2週間程経った頃だった。


 せっかく会えたのに真人が髪の長い女の子と浮気をしていた事、

 そして、真人に詰め寄ろうとした時、手に静電気のような痛みが走り、怪しい声に脅かされた事で悩んでいた私も、それを聞いて頭が真っ白になった。


 何でも、崖の上から海に身を投げての自殺だったらしい。


 葵ちゃんとは親友という程ではないけど、いつも冬馬くんと話す女の子グループの一人で、よく遊びに行っていた子だっただけにその死がショックでしばらく呆然としていた。


 昨日の通夜では、おじさん、おばさん、お祖父さんの元市長さんも、早すぎる葵ちゃんの死に、悲しみを堪えきれず泣きじゃくっていた。


 葵ちゃんの許嫁の風切冬馬くんは、真人が贄として社に行ってしまってから、私と同じように不登校になっていたらしい。


 冬馬くんの不登校や、女子に人気がある事が原因で葵ちゃんが自殺したと思ったご家族は、

 通夜に参列しようとする彼を拒絶して、付き添っていた病院の院長である冬馬くんのお父さんと看護婦さんと言い合いになる場面もあった。


 悄然と俯いている冬馬くんは気の毒で、声をかけられなかった。


 だけど、その翌日ー。


 私は思いがけず、冬馬くんと自宅で会う事になった。


 お父さんとお母さんに神妙な顔で、呼ばれ、リビングへ向かうと、お客さん=昨日葵ちゃんの通夜に来ていた、冬馬くんのお父さん、看護婦さん、冬馬くんの三人がお客さん用のソファに並んで座っていた。

「こ、こんにちは。」


 わけも分からず挨拶すると、冬馬くんお父さん、風切病院の院長は、私を値踏みをするような不躾な視線を送って来た。


「おお、お嬢さん、また一段と美人になられて。こんなお嬢さんを相手に迎えられる息子は果報者ですな。」


 !?


「風切さん。そのお話は、まだお受けしたわけでは…。」


「どういう事??」


 院長に抗議するようなお父さんに、何が起こっているのかを問うと…。


「そ、それが…。」

「茜…。」


 お父さんは言い辛そうに眉間に皺を寄せお母さんも心配そうに私と院長を交互に見た。


「ふふっ。実は、香月茜さん。君に息子、冬馬の許嫁になってもらえないかというお願いに来たんだよ。」


「はいぃっ!?」


 この場の空気を支配するかのような院長発言に目を剥き、冬馬くんに視線を送ると…。


「フフッ…。」


 !??


 許嫁の通夜で悄然としていた姿は幻だったかのように、冬馬くんは心底愉快そうな笑みを浮かべていたのだった。




 *あとがき*


 この話をもって第3章終了になります。ここまで読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございました。

 m(_ _)m


 4章までしばらく間が空く事になるかと思いますが、再開した折にはまたどうかよろしくお願いします。














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