紅糸島の奇祭〜カースト底辺の俺を嫌って、イケメンに擦り寄る許嫁よ、さようなら!これから俺は、島の生き神様に贄として愛されひたすら甘々の日々を送ります〜
第30話 閑話 小さき生き物の血と画策《風切冬馬視点》
第30話 閑話 小さき生き物の血と画策《風切冬馬視点》
少し離れた森の一角から双眼鏡で屋敷の偵察をしていると、ある部屋の窓が開き、中から真人と白い鳩が現れた。
「伝七郎、一晩も引き留めちゃって愚痴っちゃってごめんな?トシによろしく!」
「クルックー!」
パタタ……。
「……?! あれは一体?」
真人との短いやり取りの後、空に飛び立った鳩を見遣り、俺が不思議に思っていると、傍らにいた俺の後継人役、上倉希が答えた。
「どうやら、友人の伝書鳩を使って
葛城真人は連絡を取り合っているようですね」
「あいつの友人……というと、桐生俊也…か?」
「はい。彼の両親も島民会の幹部です。島民会の代表者が椙原様の息子様に代わられたばかりの今、内部で変な動きをされたら、ちょっと困りますね……。 念には念を入れて手を打って置きますか」
「どうするんだ?」
「冬馬様、弓道部でしたよね?こういうのはお得意ですか?」
ガシャッ!
「……!」
上倉からボーガンを渡され、俺は目を見開いた。
「フッ。やってみよう。」
俺は何度か打ち方を確かめると、空を真っ直ぐに飛ぶ鳩に狙いを定め……。
ガシャ!ブンッ! ガシャ!ブンッ!!
「グギィッ!!」
二本放った矢のうち一本が鳩の体を貫
き、そいつは真っ逆さまに落ちて行った。
「よしっ!」
「冬馬様、お見事です!!」
辺りを探し回ると、翼は折れ曲がり、白い体を矢で貫かれ真っ赤な血に染めている鳩が地面に落ちているのを発見出来た。
「グ…ル…ッ。」
ビクビクッと体を痙攣させているその哀れな生き物を見て、上倉は俺に満足そうに頷く。
「致命傷みたいですね。流石、冬馬様!」
「まぁな。でも、伝書鳩を1羽殺したところでまた他の鳩を送って来るんじゃないか?」
今まで煮え湯を飲まされた分、多少の憂さ晴らしにはなったが、これに何か意味があるのだろうかと疑問に思っていると……。
「ええ。ですので……。」
ブツッ!
「この鳩に、今度は我々の為に一働きしてもらいましょう……。」
「??」
上倉は鳩から血染めの羽毛を引き抜くと、ニヤリと笑い、怪しく目を光らせた。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
真人の事で話があると手紙で家の前に呼び出すと、桐生俊也は両手でスタンガンを翳して俺をギッと睨みつけて来た。
「何だよ、冬馬、話って!! 香月さんと許嫁になって、島民会の奴らと結託して社に何をやろうとしてんだ!!」
「何だよ、トシ。物騒だな! 俺はただ、友人としてお前に気を付けた方がいい事を教えてやろうと思っただけなのに……」
俺が傷付いた表情を浮かべて桐生との距離を詰めようとすると、奴はスタンガンからバチバチと火花を散らした。
「それ以上近付くと、コイツをお見舞いするぞ? 何が友人としてだ!? 真人に仇なす事をしようとしているお前は俺の敵だ!」
「誤解しているようだな。俺は、ただ、社の贄制度を疑問に思っていたから、自らを犠牲に真人を解放してやろうと思っただけなのに……。
それに、残念だが、お前が親友と思っていた真人は今や見る影もないかもしれないぞ?」
「はっ?何か謀ろうとしているのか?」
俺の言葉を全く信じず、警戒している奴を前に、肩を落として力なく呟いた。
「そんな訳がないだろう……。助けてやりたいと思って何度も社を訪れたが、あいつは、たった一人の肉親の菊婆が亡くなって、周りに当り散らし、すっかり粗暴で自堕落な奴に変わってしまった。」
「嘘をつけ!」
「本当だ! 一度など、鳩を虐める姿を見た事さえある」
「は、鳩っ……? お、お前、伝七郎に何かしたのかっ?」
血相を変えて詰め寄ってくる桐生に、俺は愕然とした表情を浮かべた。
「伝七郎?? も、もしかして、あの鳩、トシの飼っていた鳩だったのかっっ?そ、そうか……。」
「伝七郎が、どうしたんだ!? おいっ! 冬馬!! 言ってみろよっっ!!」
「ぐっ……俺の口からこれ以上は言えんっ……!」
「うわっ!」
カシャン…。
襟首を掴みかかって来る手を振り払うと、桐生はスタンガンを落とし、膝をついた。
「気になるなら、真人に聞いてみるといい。社奥の屋敷の3階の一番奥の部屋に奴はいる。ガッカリしないといいがな……。」
そう言って、その場を足早に去る俺の背に桐生の縋るような声が響いた。
「お、おいっ! 冬馬、待てよっ! 伝七郎がどうしたのか教えろよっ! ううっ…畜生っ!!」
フッ。真人といい、桐生といい、頭の悪い奴らは本当に扱いやすいな……。
俺はこれから起こる奴らの友情の崩壊劇を思い浮かべ、密かにほくそ笑んだのだった……。
*あとがき*
読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます
m(_ _)m
今後ともどうかよろしくお願いします。
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