第6話 歩み寄りと失敗(真人→あかり)①
「真人、大丈夫っ?」
「う、ううっ。|||||||| だ、大丈夫大丈夫。」
あかりとスタッフの保坂さんの間に共通する俺のイメージが『厨二病のおっぱい大好き男子』になってしまっているという事実に大ダメージを受けながら、なんとか起き上がった。
ま、まぁ、この前はあかりに嫌われてしまったかと思ったのに、仲直りが出来て、読んでいる本の内容はともあれ、俺の気持ちに寄り添おうと努力してくれている事は素直に嬉しい事だと思えた。
俺も、あかりとの絆を作っていく為に努力しなければ…!
「あかり…。今まで、同年代の子と関わった事がないと言っていたよな。
これから、お互いの事をよく知って、生き神様と贄としてよりうまくやっていく為に、俺と一緒に色んな遊びをしていかないか?」
「あ、遊び…??」
あかりは、俺の言葉に目をまん丸にした。
「ああ。例えば、今日は、こんなものを持って来たんだけど、」
俺は折りたたみ式の木箱を開いて、マス目の書かれた盤を卓上に置き、木箱に収納ケースされていた小袋に入っていた小さな五角形の木片を取り出して、あかりに見せた。
「『王将』『飛車』『角』『金将』『銀将』『桂馬』『香車』『歩』?もしかして、これ、将棋ってゲームかしら?」
「ああ。やった事ある?」
「いいえ。でも、以前からどんなゲームなのか、気にはなっていたの。やってみたいわ✨✨真人、教えてくれる?」
社に移る時に、暇つぶしになるかと家から持って来たものであったが、あかりは思いの外興味を示してくれ、キラキラと目を輝かせた。
「うん。もちろん。将棋というのは、この将棋盤の上で駒を動かして、相手の王将を先に捕まえた方が勝ちになるゲームなんだ。」
「ふんふん。そうなのね?」
「次に駒の動かし方だけど、それぞれの駒の動き方に特徴があって…。……」
「ふんふん。なるほどなるほど…。」
あかりは熱心に俺の説明を聞いてくれていた。
「飛車は、縦横いっぱい、角は斜めいっぱいに進む事が出来るのね。すごいわ!まるでキーちゃんとナーちゃんみたいね?」
「あ、ああ…。そう言われて見れば、キーとナーもあかり(王)を守る為に、どこへでも飛んで行くもんな…。」
追われ、攻撃される者としてはたまったものではないが…。
和菓子を堪能しているキーとナーを見遣りながら、俺は苦笑いした。
「他の駒も、あかり(王)を守る社の人だと思えば、覚え易いかな…。」
「そうね。ふふっ。そうしたら、金将は先代贄様、銀将は菊婆かしら…?」
クスクス笑いながら、あかりは、それぞれの駒に社側の幹部をなかなか的確に当てはめていった。
「それから、真人は…。」
ちらっと俺を見て、いたずらっぽい笑顔を浮かべた彼女に、からかわれる前に唇を尖らせて先に言った。
「はいはい。俺は弱っちいからどうせ『歩』ですよ。それとも、厨二病的に変則的言動をするから『桂馬』か?」
「いいえ。真人は、人に守ってあげなきゃいけない気持ちにさせるから、やっぱり王だと思うわ。男の子だから、玉ね?」
「へっ!?」
俺はあかりの言葉に目を丸くした。
「だ、だって、真人は、ホ、ホラ…。下に女の子にはないものがあるから…。//
これ、男の子は『玉将』女の子は『王将』を使うって事でしょう…?」
?!!///
「将棋って男の子と女の子で、遊ぶゲームなんじゃないの…?」
キョトンと純真な瞳でそんな事を聞かれ、俺は爆死してその場に崩れ落ちた。
「あ、あかりぃ。それは違うよぅ…!将棋の駒にそんな大人チックな意味ないからぁ…!!///」
将棋の最初の駒の並び、そう言えば、『玉将』の隣り、『金将』だったよなとか一瞬考えちゃっただろ?
思い出すと、試合の途中で吹いて集中できなくなりそうだから、ホントやめてっ。
「えっ。ち、違うのぉ?//」
あかりは、赤らめた頬に手を当ててアセアセしている。
この生き神様、かなりのポンコツだな、クソ可愛いな、おい。
*
*
その後、気を取り直して、あかりに簡単にルールを説明した後、何度か実際に試合をした。(あかりは初心者なので、俺(10級程度)の方はハンデに大駒の飛車、角をなしにした。)
「う〜ん。ここに置いたら、真人(王将)に逃げられちゃうから、キーちゃん(飛車)に睨みをきかせてもらって、ここに置いて追い詰めれば…どうかしら?」
駒をマス目に置き、真剣な表情で、チラッとこちらを窺うあかりに俺は大きく頷いた。
「お、おお。あかり、すごいじゃん。詰まされた。負けました。」
「やったわ!✨✨嬉しいわ〜。」
手を組み合わせて目をキラキラさせて喜ぶあかりを、可愛いなぁと思っていると…。
「ふむ。将棋か…。」
「我々も、一時期興じた事があったの。」
お菓子を食べ終えたキーとナーが、興味を引かれてこちらにふよふよ漂って来た。
「将棋って、とっても楽しいゲームなのね?キーちゃん、ナーちゃん、やった事があるなら、真人と一度やってみたらどうかしら?」
「え。」
あかりの提案に、俺は思わず固まった。
キーとナーの将棋の腕が、どの程度のものか分からないが、負かしたら、逆上して恐ろしい目に遭いそう…。
以前キーとナーに氷と炎で攻撃された時の事を思い出し、俺は身震いをした。
「「いえ、せっかく生き神様が楽しんでいらしたところを我々がお邪魔しては…!」」
勧められるものの、恐縮して断ろうとしていた彼らに、あかりはにっこりと笑いかけた。
「気にしないで?キーちゃん、ナーちゃんがどんな将棋をするところを見てみたいし、他の人の試合しているところを見ると、私も勉強になるから、ねっ?よかったら…。」
「生き神様が…。」
「そこまで言われるなら…。」
「真人も、いいかしら?」
「あ、ああ…。いい…けど…。||||どんな結果になっても、氷と炎出すのはやめて下さいね…?」
「「ゲームの結果で、そんな事やるわけなかろうが!お主は何を言っておるか。」」
思わず、キーとナーに敬語で確認すると、冷たく突っ込まれ、あかりには笑われた。
「うふふっ。真人ったら、面白い冗談言うのね?」
いや、あかりさん、割とマジな話んすよ。
*あとがき*
読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます✨✨
前回は、数分間誤って5話より先に6話を投稿してしまい、混乱を招いてしまい、大変申し訳ありませんでしたm(__)m💦💦
ご迷惑をおかけしますが、今後ともどうかよろしくお願いします。
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