第9話 生き神様との真剣勝負

《生き神様VS真人》


「勝負よ、真人!!ゴキゲン中飛車で行くわっ!!」

「バカなっ!!💥角交換も辞さない…だとっ?!」


数日前に駒の動きを覚えたばかりとは思えない程、あかりは強くなっており、平手(ハンデなし)でも、彼女の型にはまらない攻撃に俺は翻弄され、

バックに集中線を背負いながら将棋漫画のキャラのようなセリフを吐いていた。


ここまであかりを強くしたのは他でもない先代贄の神山明人…。


「うん。攻撃しつつ、うまく真人の動きを抑えている。いい調子ですよ。生き神様!」


「「生き神様、頑張って下さい〜!!」」


声援を送る先代贄とキーとナーをげんなりと見遣った。


「くっそ。ずり〜。俺、めっちゃアウェイじゃねーか…。あかり!!それなら、俺も容赦しねーぜ!」

「ふふっ。ようやく本気になってくれたわね?臨むところよ!」

          

ついムキになってしまい、本来の目的を忘れて本気の勝負を仕掛けてしまった俺だったが…。

         *


「ま、負けました…。_| ̄|○ il||li」


20分後、あかりの前に膝をつく俺の姿があった。


「やった!真人に勝ったわ!!うっうっ…。嬉しいわ〜!!」


あかりは、嬉しさのあまり号泣していた。


「生き神様、やりましたね!!」

「はいぃっ。先代贄様。ううっ。これまで教えて頂いてありがとうございましたぁっ。」


「「生き神様ぁ…!!おめでとうございます!!」」

「ありがとうキーちゃんナーちゃん…!」


先代贄とキーとナーがあかりを囲んで温かい声をかける中、

一人アウェイの俺は納得がいかなかった。


「ちょっと待て!そこぉ!!俺を蚊帳の外にして、何あかりとの絆を深めてんだよ!?」


「「なんだ、真人はいしゃよ?生き神様の勝利の喜びに浸っているところに、水を差すつもりか?💢」」


それぞれに手の平に氷と炎を浮かべて威嚇してくるキーとナーに怯み、俺は視線を逸らせた。


「い、いや、お前らはいつもそんな調子だから、まだ許せるとして…。」


俺は先代贄を見据え、食ってかかった。


「先代贄!あかりとの仲を取り持ってやるとか調子のいい事言っといて、俺を悪者にして、将棋の勉強を通してあかりと絆を深めるなんてずるいぞ!」


「ハハッ。真人、人聞きの悪い事を言うな。私はあくまで、お前の気持ちも汲み、儀式としてもうまくいくよう配慮しただけで、そんな私情は一切挟んでいないぞ?ハッハッハッ。✨✨」


「嘘つけ!だったら、その清々しいまでの笑顔はなんだ?思春期の娘と久々に交流できて嬉しい父親の顔になってんじゃねーか!」


俺は先代贄のツヤツヤとした笑顔を指差して文句を言った。


「あらあら、そんなに怒らないで?

真人、仲間はずれにしてごめんなさいね。ギュッ。」

「あ、あかり…。//」


あかりは、慌てて俺の元へ駆け寄ると、その柔らかい手で俺の手を握った。


「ふふっ。負けると悔しい気持ちよく分かるわ。また勝負してあげるから、いつでもかかってきてね?」


「ううっ。なんかめっちゃ上から目線で言われたぁ…。」


まだ涙の残る目元を綻ばせていい笑顔を浮かべたあかりにそんな事を言われ、俺が脱力したところへ…。


「生き神様、失礼致します。」


聞き慣れた凛とした老婆の声が響いた。


ガラッ!


「大変恐れ入りますが、そろそろ儀式の支度の方をされませんと…。!!||||」


そう言い、和室の障子を開けた菊婆が、顔を上げた途端、あかりの顔を見て顔色を変えた。


「い、生き神様をお泣かせしてしまうとは!真人、またお前は何をやらかしたんじゃっ?!💢」

「へっ。うわっ!、ババア、何すんだ!!俺、何もやってねーよ!!いて!いてーって!!」


ツカツカと歩み寄ってきた菊婆に襟首を掴まれて、拳をゴリゴリと押し当てられ、俺は悲鳴を上げた。


「キャー!!菊婆!違うの、違うのよ!!真人は何もしてないわっ!!離してあげてっ!!」

「コラコラ、菊婆、儀式の前だぞ?当日は押さえんか!!」


あかりと、先代贄が慌てて止めてくれる中、目の端にキーとナーが腕組みをしてこちらを見て頷き合っている姿が映った。


「うーむ。あれが、修羅場というやつか…。」

「うむ。カオスと言ってもいいかもしれんの…。」





*あとがき*


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m(_ _)m


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