第2話 幼馴染みとの再会

「何で、お前がここにいるんだ…?!」


頓狂な声を上げる俺に、茜はにっこり微笑んだ。


「社に神酒を納めに来たお父さんについて来ちゃった。でも、真人とここで会えるなんてすっごい偶然!(ふふっ。やっぱり、私達、赤い糸で繋がっているんだわ。)」


「そ、そうなんだ…。ホント、すごい、偶然だな…。」


なんか、不思議だな…。


俺は今までのズケズケした物言いとは打って変わって、にこやかに話しかけて来る茜に戸惑いながらも、そんな彼女に自然に受け答えしている自分にも驚いていた。


生き神様の贄に選ばれ、元許嫁の茜に別れを告げ、社に入ってから、自分の生き死にを賭けて迷走し、生き神様であるあかりに出会い、彼女の過酷な運命を知り、儀式として関係を持った。


この二週間足らずの間に目まぐるしく様々な事が起こり過ぎて、確執のあった元許嫁も今や久しぶりに会う幼馴染みとして、不思議な程穏やかな気持ちで接する事が出来ていた。


「さっき、真人が忘れられないとか会いたいとか言っていたでしょう…?会えない間に気持ちが募るっていうのは、やっぱり恋…じゃないかな?」


「…!!やっぱり、そうだよな…。これは恋…だよな?//」


頬を染めた茜に指摘され、俺は改めてあかりへの恋心を自覚し、口元を押さえた。


「うん。私もそうだから、分かるよ?会いたくても会えない切なさと辛さ…。でも、そのおかげで自分の気持ちがよりハッキリ分かったの。」


「茜も…?」


「そう。私には、誰よりも輝いて、かっこ良くて、辛い時に寄り添ってくれる完璧な人が側にいてくれて、

私はその人に恋をしていたんだって…!」


「そう…なんだ…?」


茜に前のめりに、熱のこもった言葉を吐かれ、圧倒されながらも俺は頷いた。


誰よりも輝いて、かっこ良くて、辛い時に寄り添ってくれる完璧な人??


俺が社に入ってから、そんな男と出会いがあったのだろうか?

社からの紹介状で、お見合いをした相手かもしれない。


社に入る前は、別れる段になって、俺に執着を見せていた彼女が、この短期間でそんな恋煩いをするぐらいに好きな相手が出来たというのは正直驚きだが、

まぁ。恋って突然やって来るものだし、あり得ない事じゃないよな?


俺だって、出会ってからまだ数日しかたっていないあかりにこれだけ強い想いを寄せているのだから。


今や、幼馴染みとしてその恋を応援してやりたい気持ちになっていた。


「頑張れよ?茜。」


「うん。私、もう自分の気持ちをちゃんと素直に伝える事にする。真人も贄になって大変だけど(私と結ばれる為に)一緒に頑張ろ?」


「うん。俺も頑張る事にするよ。贄としての役割はあるけど、好きな気持ちはどうしようもないしな。」


「(真人ったら、そんなに私の事を想って…?//)そうそう。好きな気持ちはどうしようもないよね。」


「ああ。色んな表情が何度も思い出されて…。」

「真人…//」


「長い髪に、あの、ミステリアスな紫がかった瞳…。柔らかくて温かい体…。」

「ん?」


うっとりと俺がため息をつくと、茜は何故か顔を強張らせた。


「真人…。一体あんたは誰の話をしているのっ?」

「だから、俺の好きな人の話だけど…。」


ツートーン低い声で問いかけてくる茜に俺は戸惑いつつ、答えると…。


「最っ低!!真人の浮気者っっ!!」

バチンッ!!

「いってぇ!何すんだよ!?」


般若のような顔をした茜にいきなり平手打ちをくらい、驚いて文句を言った。


「あたしというものがありながら、長い髪の女と浮気したのねっ?まだ離れてから10日ぐらいしかたってないのにぃっ…!💢」


悔しそうにギリギリと歯ぎしりする茜に俺はワケが分からず、目をパチクリさせるばかりだった。


「は、はぁ?何言ってんだ?許嫁はもう解消したし、茜だって完璧な奴を好きになったって言ってたろうよ?」


「あれは、真人の事だもんっ!!」


「ええ…!そ、そうだったのか…!?💥」


今まで散々俺を罵倒してきた茜が、俺の事をそんな風に評しているとは、全く思わず衝撃を受けた。


「誰よ?その女は?スタッフの人?」

「いや、だから、い…。い…。??」


『生き神様』と言おうとしたとき、口が急に重くなり、喋れなくなった。

ああ、そういえば、生き神の事は他の人に喋れなくなっていたんだっけ?


あかりに濃厚なキスをされて術をかけられた事を思い出し、俺は顔を赤らめた時…。


『そこの娘…。邪な思いを持って社に立ち入るとは不届きな奴…!』

辺りに、唸るような声が響き渡った。


「な、何!?||||||||」


茜は周りに俺達の他に誰もいないのに、不思議な声が響いた事に慄いていた。


『贄の者から離れよ…!でなければ…。』

バチッ!

「きゃあっ!痛ぁい!!」

「…!」


茜の手に静電気のような光が走った。

響き渡る声といい、この不思議な術といい、誰の仕業かは、すぐに分かった。


『即刻この場を立ち去れぃ!また、贄の者に近付く事があらば、生き神様への不敬罪とみなし、子々孫々まで禍いが起きるであろう…。』


「ひ、ひいぃっ…!|||||||| 生き神の祟り!?真人のバカァッ!!私は絶対諦めないんだからねえぇーーっっ!!」


姿の見えない声の主に脅された茜は、縮み上がると、雄叫びを上げながらその場を走り去って行った。


「な、何だったんだ…。一体…?!」


呆然としている俺に、聞き慣れた毒舌が降り掛かってきた。


「事態を把握しておらんのか?あの元許嫁の娘が不憫に思える程のどバカだの…!」


「おまけに、早速生き神様の情報を漏らそうとしやがって、この考えなしのどアホが…!」


気付くと、着物姿の精霊達が腕組みをして、宙に浮いており、それぞれ、白髪に白銀の目、赤髪に赤目で俺を睨み付けていた。



*あとがき*


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