第35話 真人の覚悟
御堂さんを遣り切れない思いで見送った後、俺はスタッフさん達に向き合い呼びかけた。
「皆さん、色々な事情があるかと思いますが、ここからはあかりを守る為に全てを捨てられる方だけ残って下さい。今の社の状況は切迫しています。もし少しでも迷いがあるなら、社を離れた方が賢明だと思います」
「私は、どのような事態になろうとも、ここで生き神様方をお守りします」
「私も、社の外に家族がいるわけじゃないから残りますよ」
「私も残ります!」
「私も!」
「皆さん、ありがとうございます!」
「皆さん、私が至らないばかりに迷惑をおかけします。残って下さってありがとうございます……!」
最初に保坂さん、羽坂さんがそう返答すると、他のスタッフも残るという選択をしてくれ、俺はひとまずホッとして、あかりは涙を浮かべて礼を言った。
御堂さんの後任は、俺の身の回りの世話係をしてくれている保坂さんにお願いする事にした。
彼女に、既に返事をしてしまった島民会&風切総合病院側に連絡を取ってもらい、社の責任者の交代と第二の贄を受け入れる回答を撤回する旨伝えて貰ったが、その返答に向こうはやはり納得しなかったらしい。
一方的に断るなら、明日の夕方島民会と風切総合病院の面々を引き連れて、直談判に向かうと伝えられたそうだ。
「いよいよ、奴ら集団で押しかけて無理矢理要求を通す手に出るか……。
こちらは、先代贄が帰るまで、ここに立て籠もる準備をするしかないな。
刈谷さん、今ある食料を出来るだけ節約して使ってどれぐらいもちそうでしょうか?」
「は、はい。3、4日はもつものかと思われます。防災食を含めれば1週間ほどは……」
神妙な顔で答える刈谷さんに俺は頷いた。
「ふんふん。先代贄が帰るまではなんとかもちそうだけど、念の為、出来るだけの食材を保存、携帯出来るような調理携帯にしておいて冷凍しておいて下さい」
「は、はい!」
「富田さん、羽坂さんは防災食、防災道具の確保、お願いします」
「「はい!」」
「保坂さん、若い衆と警察に島民会との件を報告して、出来るなら協力をお願いして下さい」
「了解致しました!」
俺はスタッフさん達にそれぞれ仕事をお願いすると、あかりの側に控えているキーとナーに目を向けた。
「キーとナーは、この屋敷に外の人が入って来れないように防御する術とかかけてもらう事は出来るか?」
「ああ、無論じゃ!」
「屋敷全体に儂らの力で氷と炎の二重のバリアを張っておこう!」
「おおっ、何かすげー! ありがとう!」
俺の頼みを快諾してくれるキーとナーに礼を言い……、辛そうな表情のあかりに見遣り、視線を戻した後、もう一つ最大の頼み事をした。
「それから……、いざという時には、最優先であかりを守ってくれ」
「「……! 分かった! すまぬが元よりそのつもりじゃ!」」
俺の決意の表情に、キーとナーは全てを察したらしく、重々しく頷いてくれた。
「真人……? キーちゃん? ナーちゃん?」
俺達のやり取りをあかりは不可解そうな表情で見詰めていた。
*あとがき*
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