第7話 レヴァイン
私は空き家の扉を開けて手荷物をドカリと床に降ろす。この空き家は半月前まで村長の娘夫婦が住んでいた家で彼らは隣町へ引っ越し、ちょうどよく空き家となっていた。
椅子に座り、ようやく一息吐けた。面倒だが報告は大事だ。
『団長、レヴァインです。面白い者を二名ほど見つけました』
『ではこちらの方に送ってくれ』
『いえ、少々訳アリで送れないため私がここに残り、訓練を施そうと思っています』
『レヴァインが直々に? 珍しいな。どんな者なのだ?』
『エフセエ侯爵の長女を知っていますか?』
『ああ、長女がいると聞いたことはある。魔力無しで身体が弱く、領地で療養しているとの話だが。魔力無しの令嬢がどうしたんだ?』
『たまたま彼女と会う機会があり、話をしたのですが、彼女は魔力持ちです』
『魔力無しと言われているのに魔力を持っていたのか。だが侯爵家からは何も聞いていない』
『彼女の話では侯爵も知らないようです。彼女に仕えている者とそこの村にある教会の神父のみが知っているようです』
『それは面白いな。あとの一人は誰だ?』
『彼女の乳母の息子です。現在、エフセエ侯爵令嬢と共に生活し、従者として側にいる者です』
『レヴァインが面白いというくらいだ。そいつはどんな特殊能力がある?』
『乳母はおそらく魔力量をみるからに上位貴族だった者のように感じます。そして息子は母の魔力を引き継いでいるため魔力量も多そうです。どこかのご落胤かもしれません』
『平民で高魔力か。だがそれだけでは無いんだろう?』
『ええ、もちろん。二人の剣の師匠はレコです』
『…あいつか!! そんなところにいたのか』
『ええ、彼らはレコによって幼少期より育てられている。村人に聞きましたが、二人とも山遊びと称して身の丈よりも大きな魔獣を狩ってくるようで村は魔獣に怯えることなく平和そのもののようです』
『そうかそうか。後で報告書を纏めて送るように。レヴァインの代わりを手配しておくからこちらの方は問題ない。楽しみにしている』
『分かりました』
ジェニース団長は珍しく上機嫌だったな。
まあ、それもそうだろう。
それにしてもレコがこの村にいるとはな。レコは私の同僚であり、学生時代からの仲間だ。
彼は昔から飄々としていて何を考えているのかよくわからないが、いいやつではある。
彼の剣の腕は相当なもので学院を卒業後、騎士団長にあっさりと上り詰めた。
ある時、同僚の騎士が高位貴族出身の騎士に冤罪を掛けられ、同僚を助けたかと思えば恩を売るわけでもなく、あっさりと自らの地位を手放し、どこかに消えてしまった。
それを聞きつけた団長や私たちが探しても彼を見つける事ができなかった。
何故彼がマーロア嬢やファルス君に剣を教えることになったのかも気になる。
そしてレコが教えていたあの二人はとんでもなく強い。彼らの腕なら即王宮騎士団に入れるだろうな。
今後、レコから色々と聞くことは多そうだ。
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