第48話 サラ視点
「お母様! 王宮で今度、お茶会が開かれると聞いたわ。今回のお茶会の主催者はエレノア様なんですって。絶対に行きたいわ」
「そうねぇ。確かマーロアに招待状が届いていたと思うわ。まだ返事を出していないし、代わりにサラが出席しても問題ないでしょう」
「本当!? 絶対にいくわ!」
エレノア様といえば貴族令嬢の憧れであり、麗しのシェルマン殿下の婚約者でもあるのよね。二人の仲睦まじい姿は一枚の絵のようなの。
あの姉のクラスメイトだなんて考えたくないわ。代われるものなら私がクラスメイトになり、エレノア様の側でエレノア様を支える令嬢になりたいの。
そして殿下や側近の令息と仲良くなりたい。殿下の側近の方々も将来優秀で見目も良くて家柄も素晴らしい方ばかり。私もお近づきになりたいわ。
お母様は私の憂い事が手に取るように分かるのか、すぐに姉の招待状を代わりに私が参加するということで出してくれた。
―お茶会当日―
「もっと可愛い髪飾りはないの? ちょっと、このドレス気に入らないわ。もっとレースが付いている物に交換してっ」
「畏まりました」
侍女たちはいそいそと私の準備をしている。エレノア様に気に入られるために気合を入れていかないとね!
「サラ、準備はできたの?」
「お母様! 見て、これならきっとエレノア様たちの目に留まるわ」
「ふふっ、サラ、今日も可愛いわ。頑張ってきなさい」
私は意気揚々と本日の会場である王宮の中庭へと向かった。
「エフセエ侯爵令嬢様、こちらです」
「私はあっちの騎士にエスコートされたいわ!」
サラは馬車が停まり、迎えた騎士に向かって不満を口にする。騎士は慣れているのか一礼をした後、サラが指名した騎士を呼び、代わりにサラをエスコートし、中庭へと向かった。
「今回は円卓なのね。私はエレノア様と同じテーブルがいいの!変えてちょうだい」
「この席はこれは王太子妃殿下とエレノア様が準備をされた席でございますので……」
エスコートした困ったように答えている。
気に入らないわ!!
「私を誰だと思っているのよ!許さないわ。お父様に抗議を出すように言っておくんだから!」
「いかがされたのでしょうか?」
慌てたように従者が寄ってきて理由を聞いてきたので私は先ほどと同じように答える。どうやら今日は席を変えることはできないようだ。
何人もの令息や令嬢が何事かとこちらを見ている。
……仕方がない。
私の気分は悪かったけれど、そのまま席に着いた。
「皆さま、ようこそおいで下さいました。本日のお茶会は初めて私、エレノアが王宮の中庭を借り、お茶会を開かせていただきました。どうぞごゆっくりお過ごしください」
エレノア様がハノン嬢をお連れになっているわ。いつみても美人よね。シャルマン殿下と一緒にいる姿は一枚の絵になるわ。
ハノン様は学院卒業後、エレノア様の専属侍女として仕事をすると聞いているわ。
私もハノン嬢のようにエレノア様に仕えてみたいし、華やかな王宮で婚約者を探したいわ。
お茶会は穏やかに始まった。確か、エレノア様は王子妃になる一環として王宮でお茶会を開いたと聞いているわ。
そのせいかエレノア様と仲のいいお友達やアイズ公爵家に連なる派閥の方が多く出席している。
我が家は王太子の派閥に属しているため、第三王子の派閥のお茶会に呼ばれることはないの。悔しいけれど、クラスメイトである姉が招待されたのよね。
魔力なしの姉がエレノア様のクラスメイトというだけで呼ばれた。お情けで呼ばれたに過ぎないわ。
本当に恥ずかしい存在よね。
お茶会が始まり、しばらくテーブル内で会話をすることになった。早くエレノア様のテーブルに移動したいわ、そう思っていると、シャルマン殿下が現れ、会場が一気に盛り上がった。
「エレノア、君のことが気になってつい来てしまった」
「まあ、シェルマン様ったら。どうぞ、こちらにお座り下さい」
エレノア様の隣に急遽用意された椅子に座り、お茶会は花が咲いたようになった。
「今日はマーロア嬢が来るものだと思っていたよ。君は彼女の妹だろう?」
「はいっ、姉の代わりに今日は出席しましたっ」
同じテーブルにいた一人の令息が私に声を掛けてきた。同じテーブルにいるあとの方々も私たちの会話に興味があるようでお茶を飲みながら聞いている。
「マーロア嬢は元気かい?」
どうやら彼は恥ずかしい姉のことを知っているようね。
「姉は、残念ながら今も従者と遊びまわっていますわ。本当に恥ずかしいですよねっ」
「恥ずかしい? そんなことはないと思うよ。優秀だし、騎士としての実力もある。彼女はクラスでも人気者だよ。今頃剣の修行にでも出ているんじゃないかい?」
ここにも姉に騙されている人がいるようね。
しっかりと教えてあげないといけないわ!
「姉が人気者だなんて信じられません。だって姉のわがままで婚約破棄をされた可哀想な姉なんですよっ。
魔力無しで婚約者もいない。魔力なしの姉が可哀想でしかたがありませんっ。
男爵位程度で構いませんっ、後妻を取る年齢の方でもいいんですっ、誰か姉を貰っていただける方を紹介いただけませんか? 魔力なしの姉はきっとこの先も結婚できませんから私がこうして相手を見つけてあげないといけないんです」
ここでしっかりとアピールしておいた方がいいわ。私って姉思いで優しいよね!
彼も含め、テーブルにいた人たちは目を見開き、驚いたように一瞬、動きを止めたわ。私の気持ちが伝わったのかしら。
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