第10話
魔鳥は私たちに気づいたようで警戒音を出しながらこちらに向かって走ってくる。魔鳥たちが近づいたその時、私は身体強化して高く飛び上がった。
魔鳥がその様子を目で追い体は一瞬動きを止めた。その間にファルスが横へ走り、隙を突いて一匹を倒す。私は上から魔鳥に切りかかり倒す。残りの三匹をどうするか。
私が一匹と睨み合い、ファルスが二匹と対峙することになった。ファルスは一匹を無視し、もう一匹の頭を切り倒した。私は魔鳥が嘴で突いてきたのを避けながら首を切り落とそうとする。
……しまった。
角度が悪い。叩きつけるようにしてまった。
あーあ、やっちゃった。
一歩間違えば剣の刃が折れてしまうから叱られてしまう。
ファルスは残りの一匹の猛攻撃を防ぐ事で精一杯みたい。
「よそ見する暇なんてありませんよ」
助けに入ろうかと思っていると、レコが加勢してくれたわ。
私たちとは違いさっと魔鳥の横へ入り込み首を切り落とす。なんてスマートなんだろう。私たちが苦戦していたのにレコは二匹ともあっさりと倒してしまった。
「まだまだ練習が足りませんね」
「レコ、言いたいことは分かっているが、まず納品分は終わった。では帰るとしよう」
私たちは一人二匹ずつ魔鳥を抱えて町に戻る。ファルスが遠い目をしていたのは仕方ないわ。帰りの馬車で怒られてしまいなさい。
そうしてギルドへ納品分を持って行った。
もちろん依頼は成功よ!
「残りの三匹はどうしますか?」
「先生、一匹お土産に持って帰りたいです」
受付の人の言葉に私はすかさず声をあげる。
「そうだね。じゃぁ、残りの二匹は買い取りで一匹は持って帰るよ」
「有難うございます。魔鳥の買い取り価格は……」
そうして報酬金と買い取りのお金を四人で分け合いギルドカードへと入金してもらう。
カードを満面の笑みを浮かべながらカードを受け取るレコを見ていると、ふと疑問に思った。レコは冒険者登録をしてからせっせと小遣い稼ぎをしていたのではないだろうか。
王都からこんな片田舎に左遷されたも同然だものね。
そして村はあまりやることがないし、貯蓄を趣味にしているのねきっと。
そんな事はさておき、私はギルドカードを眺めて感動に浸っていた。初めての報酬金!これから何があるか分からないもの。これからどんどん貯めていくわ。
そう思うとレコを馬鹿に出来ないわね。私も貯蓄虫になろうと心に誓う。
村に帰る馬車に乗り込んだ私たちに待っていたのはやはり反省会でした。
「さて、ファルス君。言い訳はあるか?」
「……えっと、突進していった、こと、かな」
「そうだ。まだ魔鳥だったから良かったものの、他の魔獣なら確実に死んでいた。
ファルスは明日から別の特訓メニューを組み入れることにする。マーロアはどうかな?」
「えっと、魔鳥に身体強化を使った事と敵に剣を叩きつけた事ですね」
「まぁ、身体強化は良かったと思う。魔鳥の弱点は上からの攻撃だからな。だが剣を叩きつけたのは確かにいただけなかった。場合によっては剣が折れてしまう。
それに二人とも肝心な事だけど何故首ばかりを狙うんだ? 弱点ではあるけれど、まず動きを止める事を考えなくてはいけなかったはずだ。君たちはまだまだ初心者だ。
首ばかりを狙っているから隙だらけだった。まだFランクの魔物だから怪我をせずに済んでいるが、そこから変えていかないといけない事は分かった」
先生は眉に皺を寄せ私たちに咎めるような視線を向けている。
「まぁ、レヴァイン先生、今までマーロアたちは村の近くで食糧を得るために小さな魔獣を中心に狩りをしていたのです。
美味しく食べる為に血を抜く事が無意識にあるのではないですかね。中途半端に強い分、今までなんとかなっていたと思うんですよね」
レコは先生を宥めるように話す。私はレコの言葉にぐうの音も出ない。
「……そうか。マーロアたちにとって魔獣は食糧という意識なのか。だからお土産なのか」
レヴァイン先生は魔獣を食べるという考えはなかったようで妙に納得しているようだ。そうか、王都で魔獣は出ないと聞くし、魔獣は害獣、駆除するものと考えているのかもしれない。
倒せれば何でもいいのね。
これには私もファルスも先生の考えとの違いに驚いたわ。
きっとレコは王都出身で村に住むようになったから違いに気づいたのね。
まぁ、それでも攻撃を避ける事や弱点を探さずに首ばかり狙うのは未熟だと今日の事で感じた。
もっとやりようがあったと反省ね。
先生もそれ以上は叱る事はなかったけれど、課題が見えたと言っていたわ。明日からの実技は恐ろしい事になるかもしれない。
村に帰ってビオレタにお土産を渡した後は自由時間になった。
夕食は勿論お土産に持って帰ってきた魔鳥焼きやスープが出てきた。臭みもなくてとっても美味しかった。因みにレヴァイン先生は何か思う事があったのかお肉を真剣に食べていたわ。
単に美味しかっただけかもしれないけれど。
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