第25話

 翌日からは午前授業になった。学院に入ったら丸一日勉強なのだと思っていたが違った。午後からはクラブの活動をするのだとか。

 もちろんそれは自由参加なのだが、魔術師・錬金術師科は殆どがクラブに入って研究をしているらしい。


「ファルスは騎士クラブに入るのかしら?」

「んー俺? どうしようっかな」

「マーロアは?」

「私? 私はもちろんギルドへ行ってクエストをこなしてランク上げをする予定よ?」

「じゃぁ俺もそうするわ」

「いいのよ? 騎士になりたい人は騎士クラブに入っていれば目に留まりやすいのでしょう?」


「どうせ一年生なんて雑用だけだろう? それにギルドランクも上げたいし、小遣いも必要だしな」

「えー私の従者だから給料貰っているでしょう?」

「こういうのは貯められるうちに貯めておくんだよ」

「まぁ、そうよね」


 なんだかんだでしっかりしているファルスにちょっと納得いかない私。ファルスってもっと散財するのかと思っていた。


「じゃぁ、早速荷物を置いたら行こうぜ」


 私たちは荷物を置いて冒険者セットを入れたリュックを背負い、防具を装備して帯剣し、外出許可を貰ってから街へと出掛けた。ギルドの場所はレコから教わったから分かってはいる。



 初めて行く道にドキドキしながら歩いていく。目に映るもの全てが新鮮で楽しいわ!


 流石王都のギルド、とても大きな店で大きくギルドと書かれた看板が目についた。冒険者と思われる人たちが次々と店に出入りしていてその中に混じって私たちもギルドの中へと入っていった。


 ギルドは男の人が多いのかと思いきや、魔術師や弓使い等様々な人がいて女の人も沢山いたわ。そして依頼書も沢山貼ってある。

 町では見たこともないSランク依頼書が貼ってあった。


 初めてみる沢山張られた依頼書にちょっと感動したの。


 Cランクの依頼書も沢山出ていた。町のギルドでは討伐依頼ばかりだったけれど、王都では貴族の邸の警備だったり、探し物をみつける仕事だったりと様々な依頼があった。


「ねぇ、ファルス。どれにしよう。数時間で出来そうな物がいいよね」


 ファルスと私はジーッと依頼書とにらめっこしながら一枚の依頼書に決めた。依頼の内容は王都の外で繁殖しているレッドラビット三十匹の討伐。


 どうやら普段一部の食堂にも出される食用の魔獣ウサギらしいのだが、とてつもない繁殖量で定期的に討伐しなければいけないらしい。

 攻撃的なので気をつけないといけない。


 私たちは依頼書をギルドの受付に出す。


「おっ、学生さんかい? ランク上げには丁度いいやつだな。まぁ頑張ってこい。あぁ、それから東門の横にギルドで討伐した魔獣の受け取り口があるから狩った奴らはそこに渡してくれるといい」

「「分かりました」」


 私たちは受付に礼をしてそのまま東門へと向かった。出入口の門は人の監視や魔獣が入ってこないようになっている。


 街を出るのはギルドカードを見せるだけで出られるけれど、入る時には王都住みはカードの提示だけで済むが、行商などで王都に訪れる者は水晶に触れて犯罪歴がないか等、審査してから王都に入る事になるので門はいつも大勢の人たちが列をなしている。


「学生さんかい、気を付けていってらっしゃい」


 門番がそう声を掛けてくれた。私たちはカードを提示してから礼をして門を出た。やはり学院の騎士服は着ていて正解ね。


「ファルス、目的地まで走っていきましょう?」

「あぁ、少し遠いからそれがいいな」


 私たちは久々に森に向かって駆けていく。鍛錬は欠かさずにしているけれど、いつも同じ景色を見ながら走るのとは違って楽しいわ。

 十五分程道を走ったかしら。道といっても街道を少し走ってから二つ目の細くなった道を入ってまっすぐ走るだけなのだが。


 街道は綺麗に整備されているけれど、森を切り開いているので偶に魔獣が出るので注意するように討伐依頼書には書かれてあった。


 すぐにレッドラビット農場と書かれた看板が見えてきた。


 森を切り開いた農場という感じで柵の中に200匹はくだらないだろうか。沢山のラビットがいる。大きさはひざ丈位の大きさで結構大きい。


 これを三十匹狩るのね。


 私たちは剣を鞘から抜くと一気に走り出した。突然現れた私たちにレッドラビットは逃げたり、突進して来たりと様々な動きをしている。

 突進してくるものにはひらりと避けて横から剣を刺していく。そこまで抵抗はされないけれど、大きさと数を捕まえるのに一苦労したわ。


 狩ったレッドラビットを次々に柵の外に投げる。そうしないと持って帰る時に他のやつに邪魔されてしまう。


 なんとか三十匹を狩り終えてリュックからロープを取り出し三十匹を縄で繋いでいく。物凄い量だ。

 身体強化しなければ持ち歩けないと思う。私は誰もいないことを確認してからファルスにも自身にも浄化魔法を掛けた。折角の制服が血で汚れていたからね。


 ファルスはというと風魔法で繋いだレッドラビットを浮かせている。


「ファルス、凄いわ。前に比べて安定しているように見えるわ」

「レヴァイン先生が従者ならこれを覚えておいて損はないって無理やり練習させられたんだよな。門まで楽に運べるし、練習していて良かったよ」


 そして帰りは歩いて門の所まで帰ってきた。ギルドの受付が言っていた東門の隣に魔獣受け取りカウンターが設置されていたわ。


「依頼のレッドラビット三十匹を持ってきました」

「どれ、見せてみな」


 カウンターの男の人は捌く専門の人なのかな?

 筋肉だるまのような熊のようなそれは大きな筋肉の塊のような人だった。ちょっとビクッとなったのは内緒ね。


「三十匹を上手に倒しているな。血抜きも上手にしてあるじゃねぇか。買い取り金額アップしておく」


 男の人はしっかりと三十匹の査定をした後、サラサラと紙に書いている。


「ほらっ、この紙を持ってギルドへ向かってくれ。受付に出せば依頼完了だ」

「「有難う御座います」」


 私たちは紙を受け取りギルドへと向かった。そして先ほど受注したカウンターの所に紙とギルドカードを出す。


「お帰り。早かったね。依頼は完了しました。折半でギルドカードへと振り込まれます。また宜しくお願いしますね」


 受付の人はカードを機械に通して登録し、お金を受け取った。


 今回、ラビット三十匹の討伐依頼なので最低限の依頼達成は狩るだけ。狩った物を買い取りに持っていく事でわずかだけれど金額が上乗せされるの。


 農場に三十匹の死体放置は後処理に手間が掛かるからという理由らしい。少しでもお金が欲しい私たちは買い取ってもらう為にしっかり持って帰った。


 肉は食べる為に、皮は装備物や小物に使われるらしく魔獣の買い取られる金額も馬鹿には出来ない。勿論依頼の内容によってはそのまま放置だったり、肉が必要だったりと様々な指定があるのよね。


 今日はこの位にして私たちは寮へと戻った。


 今日の夕食は平民の食堂でボアの煮込みで美味しくいただいたわ。

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