第6話 大丈夫じゃねー!

 訓練の日々が続いた。そのお陰でずいぶんと剣の扱いは上達した。いや。ただ単に、ご飯が食べられて、筋肉がつくようになったと言い換えよう。この2週間で、肋もうっすらとしか、わからないようにまでなった。

 薬草採取も上達した。俺は発見したのだ。グルグル先生にマップ機能が付いていることに、マップ機能に薬草と入力すると、マップ上に薬草がある位置にピンが落ちていくのだ。それにより採取効率がアップした。

 指定量さえ採取していまえば、後はスライム狩りに全力で挑める。なぜか薬草を採取している森にもスライムしかいないのだ。


 俺にはレイピア新勇者の剣があるので、

 色つき当たりスライムを発見しても躊躇することなく、剣で突き刺せるのだ。



 そんなことをしている内に訓練期間の一ヶ月が過ぎてしまった。明日からは討伐チームと合流しなければならなくなった。憂鬱だ。



「いいか。俺たちが討伐するのは、常時依頼が出ているゴブリンの討伐だ。あいつらは、どれだけ討伐しても次から次へと増えていく。だから、街道沿いの森に入りゴブリン討伐を行うが森の浅いところのみだ、奥にはいかない。わかったな。」


 ドラクが手を腰に当てて偉そうに言ってくる。そもそも行かねえよ。まだ、ガキだし自分のできなさぐらいはわかってる。


「今日はリーダーのフーゴとエルムが前衛だ。後衛に魔術師ビーチェと弓師サイ。初心者のライラとエンはその間に入れ。」


 ドラクが指示をしてきたが、案外まともだった。ティオ爺もうんうんと頷いている。


「昨日は南の街道沿いを行ったので今日は西の街道沿いの森の浅瀬を通って戻るルートで行く。もし、ゴブリンと遭遇した場合、一回目は今までのチームで戦う。ライラとエンはよく見ておくように、それでは出発。」


 どうやら、首都ミレーテを中心に東西南北に延びる街道沿いを日替わりで周回しているようだ。まあ、冒険者ギルドに登録したからといっても、まだまだ、ひよっこだからそれぐらいが丁度いいのだろう。


 朝から街道沿いを歩いているが全くと言っていいほど魔物に遭遇しない。それはそれでいいのだが、拍子抜けだ。ティオ爺に聞けばこんなものらしい。


 昼休憩が終わったら、もと来た道を戻って行く。半刻1時間たった頃グルグルマップに赤い点が移動しているのが見えた。今までに見たことがない点だ。だんだん赤い点に近づいて来たとき、リーダーであるフーゴが止まるように指示をしてきた。

 これは元々決めていたサインで、音を立てずに行動するためのものである。フーゴの視線の先には、緑色の皮膚をした俺と同じぐらいの背のものが3体いた。ゴブリンである。

 最初の指示通り最初は俺とライラは見学だ。


 始めにビーチェが火の矢を放ち、続いてサイも矢を放つ。ビーチェの火の矢は一体の肩に当たり、サイの矢は別の一体の目に刺さった。それを確認したフーゴとエルムがゴブリンの前に出ていき、仲間を傷つけられ怒っているゴブリンを二人掛かりで倒し、矢の刺さった方をフーゴが、火の矢を当てられた方をエルムが倒していく。確実でいいフォーメーションだろう。


「よし。いいぞ。ライラとエンはゴブリンの討伐部位を切り取るのだ。」


 ドラクに言われ、ゴブリンの討伐部位である耳をナイフで切り取るが、何とも言えない感触だな。その内に慣れるのか?切り取った耳を麻袋に入れて、横のライラを見るが、顔が青い気がするな。


「ライラ、早くシュパッて切っちゃいなよ。」


 ビーチェがライラに言っているが、初めてで怖いのだろうか。そう思いながら、もう一体の耳も切る。


「ライラ仕方がないな。俺が手伝ってやろう。」


 ドラクはそう言って、ライラのナイフを持つ手を上から握り、耳を切り落とした。

 ライラは「ヒィ。」と言いながら、血の気がなく真っ白顔色になっている。大丈夫だろうか。

 苦手な物を無理やりさせるのは良くないと思いドラクの顔を見ると、めっちゃ笑顔だった。もしかして、ライラの顔色の悪さに気がついていない?


 気になったので離れたところにいるティオ爺に小声で相談する。


「なあ、ティオ爺。ライラの顔色めっちゃ悪いけど、本人が戸惑っているのを強引に進めるのはいいのか?」


「最初は皆こんなもんだ。その内に慣れる。」


 そういうものか?


「あと、気になったのがあのゴブリンはそのままか?」


「ああ、そのままで大丈夫だ。その内、無くなっているからな。」


 ・・・大丈夫じゃねー!絶対血の匂いに引き寄せられた魔物が食ってるじゃねえか。それも街道沿いの浅瀬でだ。これ、俺が口出ししていいことなのか?


「ティオ爺。それって街道沿いまで、補食する魔物が出て来てないか?」


「はっ。」


 え?今まで気がつかなかったのか。ティオ爺大丈夫か!


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