第51話 え。無理。
2日間の休みを満喫・・・いや、何かと誰かに付きまとわれた休みを過ごし、出発当日になったのだが。
これは何だ、ジェームズ。何故に騎獣に付ける荷袋ではなく、猫形のリュックなんだ?
フェーラプティスが余っていたワイバーンの革で作っただって?余ってるなら騎獣用の荷袋を作れよ。え?それは別の搬送ルートで試験運用中だ?なぜ、俺のリュックだけおかしいのだ。
おい、アルティーナ。またしてもリュックに白猫のぬいぐるみを付けるな。キアナお前も何を手に持っているんだ。その、青い鳥のぬいぐるみを付けるつもりじゃないよなって言っている側から付けだすな。
ソル!腹抱えて笑わなくてもいいだろう。ゼルトのおっさん、俺を置いて出発しようとしないでくれ。
「エン。」
騎獣に跨ったところで、ジェームズが声を掛けてきた。
「何だ。」
「南部はシャーレンとモルテに隣接している。国境沿いには支店を置いていないが、何かとエルフが彷徨いている。目を付けられないようにしろ。あいつ等は厄介だ。」
「ああ。ゼルトのおっさんとソルの言う事を聞いとけばいいのだろ?じゃ、行ってくる。」
俺はフィーディス商会を背にして、南方面に向かって出発した。
騎獣に乗って
しかし、思っていた通り、商品の発注の仕方が変わりすぎた為、説明を聞いている支店長は困惑気味だった。そんなときのために俺は説明書を用意したのだ。最終的には説明書を見ながら発注書を書いてくれと言って、次の町へ向かう。
今回は一日3店舗から4店舗を回る予定なのだが、前より少し余裕がある。やはり、一つ一つ取り出す作業が無くなったことで、
「エン、早めに終わったがどうする?」
ゼルトのオッサンが聞いてきた。
「その辺りをウロウロしてきていいか?首都にも近いから、まだエルフを警戒しなくてもいいだろ?」
ソルが腕を組み、東の方向を見ながら
「まぁ。この辺りは国境から大分離れているからそこまで警戒はしなくてもいいが、教会にもエルフはいるからな油断はするな。特に深い色を持つエルフは要注意だ。」
「深い色?」
教会で見かけるエルフは水色の髪や若草色の髪をしている。
「ああ、王族。いや、今はただの族長の一族と言った方がいいな。そいつらの持つ色は深い青だったり、深い緑の色だ。その深く濃い色を持った者しか、一族の中で王族と認めなかったらしい。シャーレン精霊王国の国内にはそういう色を持つものが多くいる。そして、他国の教会に配属されるエルフはよく見かける薄い色の者達になる。言い換えればエルフは色で階級分けをされているということだ。」
「変な種族だな。」
「まぁ。何かしら意味があるのだろうが、わからんな。あと、シャーレン精霊王国にいるエルフは他種族への偏見が酷いから、何を言われても手は出すなよ。あいつらな魔術師ではなくて魔導師だから、下手に手を出すとこっちの身を滅ぼすことになるからな。」
気をつけろと言いながら背を向け、ソルは町の中心部の方に消えていった。
「まぁ、ソルはああ言ったが、この辺りは教会の祭司ぐらいしか、エルフはいないから気にすることはないぞ。日がくれる前には戻ってくればそれでいい。」
門限が早い。小学生並だ・・・もしかして、見た目でそう言われているのか?
ソルとゼルトに許可を貰ったので、気になることがあり、町の外に出てみたのだが、教会にしかエルフがいないって言っていなかったか?ゼルトのオッサン。
俺の目の前にはホワイトウルフに追いかけられているエルフの少女が、こっちに向かって来ている。しかも狼の数が半端ない一体何をしでかしたんだ。
あちらも俺に気が付き
「た、たす・・けて・くだ・・・い。」
息切れが酷いようだ。おそらく身体強化を使っていると思われるが、ウルフとの追いかけっこは相当キツイだろう。
「え。無理。」
と、答えておく。流石に20匹はいるであろうホワイトウルフの集団に囲まれたら、やられるのはこっちだ。
身体強化を使い、町とは違う方向にダッシュを・・・ヘブシッ。足に何かが絡まり顔面から地面に激突した。一体何だ!と思い足元を見ると、足元に草が絡みついていた。
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