第50話 アマツの死は不可解

「肉。うまい肉をだせ。」


 肉肉うるさい金狼獣人から金を請求し、黒毛和牛A5ランクのステーキ肉を出してやった。あの霜降りの凄いやつだ。カセットコンロとフライパンをだし、塩コショウで味付けして焼いたシンプルなステーキだ。後は塩で食べるなり、醤油で食べるなり好きにしてくれ。


「何だ。この肉は!」


「この前の肉より食べごたえがあって、こっちの方がいい。」


 ソル、もう5枚目だぞ。まだ、食べる気か。ルギア、お前のやつは今焼いているから俺の分を取るんじゃね!


「このエール冷えていてうまいな。エールって冷やすとうまいんだな。」


 多分、そこまでうまくはないと思うぞ。


「この鳥肉うまいな。特にタレ。」


 ルギアは鶏肉好きだな。それ、焼き鳥の串が50本は転がっているだろ。



「あー。腹いっぱいだ。」


 ソル。ステーキ肉10枚も食べれば腹いっぱいになるだろう。


「エールのおかわりくれ。」


 まだ飲むきか!ルギア。


「そうそう、実は話したいことがあってな。連れてきたんだ。」


 ソル、どう見ても肉が食いたかっただけだろ。


「ジェームズからお前が今度、南の方に行くと聞いたんだ。だから、俺も付いて行くことにするから。」


「意味がわからん。なぜ、そうなったのか理由を言え。」


「南にはシャーレン精霊王国があるからだ。以上。」


「全く持って説明になっていない。」


「あー。んー。」


 ソルは目を泳がせながら言い淀んでいるが、シャーレン精霊王国か何かあるのか?確かに南東の国境に隣接しているが、別にシャーレン精霊王国に行くわけではない。なんだ?エルフの国だよな。教会にエルフの祭司は常にいるしな。神?ん?天津・・・。


「天津が殺されたことに関係しているのか?」


 二人が勢いよく詰め寄ってきた。


「「どういうことだ!」」


 え?俺が質問をしているのに。


「で、どうなんだ?」


「エン。なぜ、アマツが殺されたと判断したんだ。」


 ルギアの顔が怖い。そんなに俺を睨まないでほしい。判断した?あ。しまった。天津は病死設定だった。


「あ、すまん。忘れてくれ。」


「エン。何を知っているんだ?」


「天津のことか?人から聞いたことしか知らん。」


「違う。アマツの死についてだ!」


 ルギアなんでそんなに必死な顔をして聞いてくるんだ?


「俺は本当に知らん。ただ。」


「「ただ?」」


「教会に行った時に声が聞こえたんだ。俺の行動を面白がり、天津を滑稽だといい。気をつけないと、天津の様に殺されると忠告された。それだけだ。」


 二人は顔を見合わせた。二人の間で何かしら意思の疎通が取れているらしい。お腹がいっぱいになったし、帰って寝たいな。


「俺たちはアマツは病死ではなく、殺されたと思っていた。しかし、何も確証がなかったのだ。」


 俺の幻聴で確定をしないで欲しい。


「アマツの死は不可解だった。誰も目撃者もおらず、自室で眠るように死んでいた。

 俺たちの『四獣の剣』は初めはジェームズを入れてアマツをリーダーとして5人で組んでいたんだ。

 ただ、一国を動かず立場になると、裏から支える人物が必要になって来た。そのため、フィーディス商会を立ち上げこの国を裏から支える為にジェームズが抜けたんだ。」


 ジェームズってそんな凄い立場の人物だったのか!俺色々やってしまったが消されないか?


「その後にエルフ族の一人が国を追われた為に新しい国で生き、国の礎になりたいと言って、接触してきたヤツがいた。俺たちは反対したが、リーダーであるアマツが受け入れてしまったので、仕方が無く俺たちも受け入れたんだ。

 あの日だけだった俺もソルもジェームズもグアトールも首都を離れる日があの日だけ重なってしまった。おかしいとは思ったんだ。

 東西南北全ての辺境都市でAクラスの魔物が暴れているという情報が一斉にくるなんて、戻ってみればアマツは病死で死んだとあのエルフの野郎が言い。そのまま姿を消しやがった。アマツは水龍だ。普通のやつなんてアマツに傷一つつけられない。あのエルフ以外。」


 重い。空気が重すぎる。それで、シャーレン精霊王国がある南に行くことを警戒しているのか。しかし、エルフが俺を狙う理由なんてないだろ。


「天津が殺された疑惑はわかったが、それと俺がエルフに狙われることと結びつかないだろ。」


「『エン』とは人と人を結び付ける何かの力が動いた事をさすらしい。」


 ソルが俺を見ながら俺ではない誰かを見るような目で言う。


「あ?」


「龍族は普通の人より成長が遅いそうだ。未だに10歳ぐらいにしか見えんぞ。エン。」


「うるせー。ルギア!俺は今から成長するんだ!決して龍族なんてものじゃない!」


「くくく。」

「ははは。」


 二人に笑われようが、俺はこれから成長期を迎えるんだー!そして、龍族でないことを立証してやる。


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