第24話 俺は見習いだ

 今日から食品部門に配属された。ここは商品の入出庫を担当者に付いて覚える様に言われた。担当者は・・・キアナだった。キアナが食品部門であることに何の疑問もない。納得だ。

 キアナについて回るが、パソコン欲しいよな。キアナが担当している商品でも百種類はあるのではないだろうか。せめてバーコード管理でもあれば・・・だから俺は行商人希望だってーの。ここのシステム改善はしない。

 いや、しかし何で担当している商品があっちこっちに散らばっているんだ?せめて、野菜なら野菜。果物なら果物と置場所をまとめろよ。茄子みたいな野菜の横にブドウがあるんだ?色が同じだから?

 これ、傷んでいるけどそのままでいいのか?商品だし?回りも腐って行くだろうが!何がそう言えばなんだ?どおりで腐りやすいと思っただと?

 責任者は誰だ責任者は!


 ジェームズがやって来た。確かに責任者だろうが、なぜ、一気に飛び越えて会長に行くんだ。食品部門の責任者がいるだろうが!

 小柄なネズミ獣人の女性がやって来た。とても、目をキョロキョロさせとても挙動不審だ。


「で、どうしたって?」


 ジェームズが聞いてきた。


「まず、陳列と倉庫の管理を種別に分けよう。キアナの担当している野菜の在庫管理をするのにあっちこっちに行かなければならないので、効率が悪すぎる。動線を考えた方がいい。」


「動線?」


「動く道筋だ。ジグザグに動くより、直線で動くほうが早いだろ?この倉庫の並びは品物が増えることで、隙間隙間に在庫を置いて行ったって感じだな。」


「おお、そうだよくわかったな。商会が大きくなる度に取り扱う品物も増えていったからな。」


「あと、傷んでいる商品は傷みあり、で安く売ればいい、他の商品に傷みが広がらない内に取り除いたほうが、他の商品も痛まない。」


「そうか・・・。じゃ、エン頼んだぞ。」


「は?何がだ?」


「さっき、自分で言っただろ?」


「ジェームズ、俺は見習いだ。見習いが主導して、進めていいことじゃないだろ?」


「この中で一番理解しているのはエンだ。そういうことで頼んだぞ。」


 やってしまった。あまりにもの非効率さに、あまりにもの食品衛生管理がなっていなかったために口を出してしまった。俺がやるのか。この何種類あるかわからない商品の倉庫の動線管理を・・・。



 3ヶ月かかってしまった。3ヶ月の時間を無駄にしてしまった。もう、秋は終わり冬に差し掛かろうとしている時期だ。こんなにも時間かかかってしまったのには訳がある。担当商品の聞き取りだ。全く分かっていなかったヤツもいるし、人が管理している商品まで管理しているヤツもいたし、お前らどうなっているんだ!今までよく問題なく回っていたな。


「エン。仕事が早く終わったから、夕食用意してね。」


「なんで、仕事が早く終わるとキアナの夕食を俺が用意しなければならないのかわからん。そもそも、早く終わったのは俺が倉庫の整理をしたからだろうが!」


 倉庫の整理をし、皆が仕事を始めれば今まで以上に仕事が早く終わり、別のところに人員を割くことができるようになったらしい。従業員に感謝されたが、見習いの仕事ではない!


 休みの日は休みの日でルギアがやって来て冒険者ギルドのルギアの執務室に連行され、書類の片付けと食事を用意させられた。

 なぜ、俺の休みの日がバレてるんだ!休みの日は体を休める日だと言ったのは誰だ!そう、文句を言えば、座ってできる作業だから大丈夫だ?休みの日はキアナが教えてくれるだ?

 そこの繋がりはなんだ。金か!キアナに情報料として金を渡しているのか。どうりで、よくキャラメルや飴を買っていくわけだ。


 食い意地の張った奴らが手を組むとろくなことがない。


 そして、やっとここに見習いに来てから何も予定が無い日ができたのだ。ここで、前の様に冒険者ギルドに行くとルギアに捕まってしまうので、今まで稼いだ軍資金を握りしめて、商業区を散策することにしよう。


 イベントリーの中に全部入れていたはず・・・札束がバッサーとイベントリーから流れ出た。俺はこんなにお金を持っていたのか?そう言えば何かと食事の用意をさせられていたな。日本円は使っても、Gガートは使っていなかったな。

 これを課金すればいいんじゃね。課金画面を開いて100万Gガートをよく分からない空間に入れる。


『100万Gガート=1万円になりますが、課金しますか?』


 ちょっと待て!おかしいだろ。どうみてもおかしいだろ!

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