第25話 お前は人族か?

 100万Gガートが1万円!なんだこのレート換算は!思わず『いいえ』を選択する。

 はっ。10円のキャラメルが1000Gガートは間違いじゃなかった。間違いではなかったが、Gガートから円に課金する意味がない。

 まだ、スライムのクズ魔石の10円の方がいいのではないのか?


 なんだ?この理不尽すぎるレート換算は・・・。俺は部屋で一人、打ちひしがれていた。


 ふと、思い出した。3ヶ月前に倒したワイバーンの魔石が残っているじゃないかと、イベントリーから取り出し、一つよく分からない空間に入れる。


『ワイバーンの魔石B=100万円になりますが、課金しますか?』


 ワイバーンの魔石がBなのか?じゃ、ブラックウルフはどれだけ強かったんだ?ていうか、そのブラックウルフを倒してしまった俺って何?ネットチートだけだと思っていたけど、違うのか?

 そう言えばティオ爺が俺のステータスがおかしいと言っていたが、何がおかしかったのだろう。


 取り敢えず『はい』を選択し課金をする。

 魔石の方が換金率がいいことがわかった。いくら、Gガートを儲けようとも、円に代えることはないだろう。だとすれば、商人としてネットの商品を売ろうとすれば魔石で課金しなければならなくなる。

 しかし、今まで遭遇した魔物がゴブリンとグリーンウルフ、ブラックウルフ、そして、ワイバーン。それ以外はスライムばかりだ。


 今年の雪解けから始めてからこれだけしか遭遇していないと言うのは、拍子抜けと言ってもいいのではないか。というか 、ラインナップがおかしい気もする。


 異世界物といったら、魔物で色々騒動あるじゃないか。生まれてから、町が魔物に襲われたとか聞いたことがない。ダンジョンができたとかも・・・その前にこの世界にダンジョンってあるのかどうかも知らない。思っていたより、魔物が大人しい性格なのか?それとも、どこぞの誰かが無双して駆逐していっているのか?

 魔石が手に入り難いとなれば、行商人として立ち居かなくなってしまう 。一度ティオ爺に聞いていた方がいいな。

 商業区をプラプラしながらティオ爺を探すか。


 俺はキャスケットを深く被り外套のフードも深く被る。部屋を出たところで、ジェームズに捕まってしまった。


「エン。どこかに行くのか?」


「商業区をプラプラしようかと思っている。」


「ルギアが来ているのだが?」


「あ゛?俺は今日は手伝わないと言ってある。」


「別件らしい。俺の執務室にこい。」


 はぁ。なぜ俺の休みはルギアにバレているのだ。

 ジェームズの執務室に入るとルギアとティオ爺がいた。この二人の組み合わせはなんだ?


「ルギアのオッサン。俺は今日は休みの日なんだけど?」


「知っている。キアナに聞いたから。」


 また、キアナお前か!俺の情報で金儲けをするな。


「で、なんだ。」


「さっきティオと話をしていたときにお前がブラックウルフを倒したと聞いたのだが本当なのか。」


「俺が、倒したらと言ったらなんだ?」


「普通はSランクの冒険者かAランクの冒険者パーティーが3グループではないと厳しい魔物だ。」


 ・・・ルギアその説明なんかおかしくないか。


「なんで、Sクラスの冒険者がAランクパーティー3グループと同等なんだ?そこおかしくないか?」


「ん?ああ、Sクラスになる条件の一つとしてレベルが100を越えることという条件がある。Aランクはレベル60~90程だ。そこには越えられない壁が存在するから、Sクラスの冒険者は特別だ。」


「90~100の間はなんだ?」


「レベルが上がらない。そこで頭打ちだ。俺もレベル90から上がることはなかった。」


 マジで!あれかレベル90を越えるには限界突破とかそんなスキルがいるのか?


「ティオに聞けばお前はレベルが23だったというじゃないか。それなのにSクラス級のブラックウルフを倒し、ゼルトがワイバーンをお前が倒したと言っていた。お前は人族か?」


 俺の人族じゃない論が出てきた!!種族の特徴なんて何処にもないぞ。


「人族以外の何に見えるんだ?」


「人族に見える。人族にしか見えないのだが、アマツが気になることを言っていたのを思い出して、それから、そればかりが・・・・。」


 ルギアが頭を抱えだした。天津がどうしたって?


「アマツ様は何を言っていたのですか?」


 ジェームズが代わりに聞いてくれた。


「『自分は人族だと思っていた』と」


 ん?天津は水龍だと言っていたな。その、天津が人族だと思っていたと?


「成人した時に角が生えてきたと。」


 は?龍族の角は後から生えて来るものなのか?

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