第26話 カンストだと!
「ああ、それならあのおかしなステータスにも頷ける。」
ティオ爺がうんうんと一人納得して頷いている。
「「おかしなステータス?」」
ジェームズとルギアの声が重なる。
「レベルが23だというのに3桁になる数値があったのだ。測ってはいないがエンの魔力は相当高いと思うぞ。あと運がカンストしていた。あれだと。運の良し悪しが両極端になっているのではないかと思うぞ。」
「ティオ爺なんだそれは運の良し悪しって。」
「例えばワシが指導員としてついていたときは、ゴブリンしか遭遇しなかった。普通はコボルトやオークなどに当たるがそれがなかった。そして、普通遭遇しないブラックウルフに遭遇する。両極端だろ?」
「え?もしかして普段スライムしかいないのも?」
「運が良い方に傾いているからだろうな。」
そんな理不尽なことがあっていいのか!なんだ普段はスライムで運が悪いとSクラス級の魔物って平均しろ平均。その前におかしいじゃねえか!
「LUKって幸運って意味じゃなかったのか!」
「普通はそうなのだか、カンストしてる人物を見ていて思ったのだ。これは幸運がカンストしているのではなく、運の振り幅がカンストしているのではとな。」
「ティオ爺誰だよ。俺以外にカンストしてる人物って言うのは。」
「アマツだ。」
答えたのはルギアだった。また、お前か天津!
「ははは、懐かしいな。アマツ様はグアトールが修行と言って拳で吹き飛ばした大木によく直撃していたよな。」
え。それ普通に生きていないだろ。
「ダンジョンの落とし穴に落ちたら、そこが魔物の巣だったこともあったな。」
ダンジョンあるのかよ。っていうか、落ちたら魔物に囲まれていたなんて最悪じゃねーか。
天津、良くそれで700年も生きたな。
「じゃ、俺も運の振り幅がカンストしてるって言いたいのか。」
「していると思うぞ。」
ティオ爺の言葉に項垂れる。確かに運が良いわけではないが運が良いと思うこともある。しかし、人生と言うものはそういうものではないのか?で、結局ルギアは何を言いに来たのだ。
「ルギアのオッサンは何を言いにきたんだ?」
「お前がアマツの子ではないかと・・・。」
「は?どっからそんな事が出てきたんだ?」
「聞けば聞くほどそうではないかと思って来た。アマツ曰く龍族は自分で子育てをしないらしい。卵を産んだら人族がいるところに置いておくそうだ。そうすれば、見た目が人族と変わらない赤子を人族が育てるらしい。だから、自分の親が誰かは分からないと。」
あれかホトトギスとウグイスの関係か!自分の卵を他の鳥に育てさせるという。
「アマツも幼い頃は人に育てられたが、物心がついた頃に育てもらっていた家族が食っていけなくなり、捨てられたらしい。それからがとても大変だったと言っていた。」
だからと言って孤児院が楽なところではなかったぞ。
「それで、俺が龍族だったとして何がかわるんだ?何も変わらないだろ?人であろうとなかろうと、黒を持つことには変わらない。人に向けられる視線が変わることはない。」
俺が帽子を被り、外套のフードまで被らないと人の視線というものは俺に突き刺さってくる。
「俺は今から行くところがあるから」
俺は返事を聞かずジェームズの執務室を出ていった。外に出て目的地もなく歩き続ける。
俺が龍族なんて馬鹿馬鹿しい。なんの根拠も無いことばかり勝手に言いやがる。黒髪だから、ルギアの子ではないかだとか、天津の子ではないかだとか、最後には龍族だと言うじゃないか。本当に大人ってヤツは好き勝手な事ばかり言う。
だから、俺の何が変わるんだ。何も変わらないじゃないか。
気がつけば、首都の中心部まで来ていた、目の前には大きな教会がそびえ立っている。毎刻、時刻を知らせる鐘楼はこの首都の建物の中では一番高い建物だ。
教会か、神というヤツがいると言うなら、文句の一つや二つ言っても良いよな。
教会に入れば、教会を牛耳るエルフに神に祈るなら御布施をしろと言われた。神というヤツはがめついな。それともエルフ共ががめついのか。100万
中央の大きな祭壇がある広い空間に出た。普通なら神を崇拝するために偶像物が置いてあると思ったのだが、そういう物は見られない。ただ、十字架に似た物は中央に掲げられいた。
左右に別れた長椅子の列の一番後ろに座り、周りを見渡す。本当に石像も無ければ壁画も無い。
俺は中央に鎮座する祭壇に向かい心の中で問いかける。
『神というものがいるというなら尋ねてみたい。俺はなぜ、この世界に存在するのだ。』
━そうだね。面白そうだからかな?━
・・・は?
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