第23話 美味しい物は正義
全快復活した俺は、いつの間にか食品部門の配属に変更されていた。あ、やっぱりぶっ倒れたのが悪かったのか。完全復活したが、念のため、あと二日仕事を休むように言われたので、今日は朝から、冒険者ギルドに来ている。久々に依頼を受けようと思ったからだ。
仕事の合間に依頼を受けなければいつまでたってもFランクのままだ。行商人をしながらFランクの冒険者ってのは、ダメだと思う。
そして、キャスケットを深く被った上に外套のフードを被れば、黒髪は見えなくなる。一人で依頼を受けるから、いつも通りの薬草採取でいいか。なんでもコツコツが一番大事だ。
受付カウンターで依頼を受け、ギルドから出ようとしたら、宙に浮いた?振り返れば、ルギアが外套の首根っこを掴み俺を宙吊りにしていた。
「おい、くそガキどこに行く気だ。」
「薬草採取。」
「ジェームズから休みだと言われただろ。」
「言われたから、薬草採取に行くんだ。」
「休みの意味分かっているのか!」
「自由の日。」
「バカか。体を休めるための日だ。」
頭を叩かれた。今日行かずにいつ行くのだ!仕方がない。休みは二日貰ったから、明日にするか。
「明日もダメだぞ。」
「考えていること読めるのか!」
「読めねーよ。どこぞの誰かと同じだからわかるんだ。」
ルギアは俺を宙吊りにしたまま、受付カウンターに戻り
「さっき受けたこのガキの依頼はキャンセルだ。わかったな。」
そう、受付の担当者に言い付けて、そのまま階段を昇っていく。
「おい、オッサン降ろせよ。」
「降ろしたら、そのまま戻らずにフラフラどこかに行くつもりだろ。」
絶対に俺の頭の中を読んでいるだろ。
そして、どこかの部屋に連れて行かれ、降ろされた。すっげー散らかっているが、何なんだこの部屋は。
「暇なら俺の仕事を手伝え。」
「暇じゃねー。そもそもフィーディス商会に来る暇があるならこれを片付けろ。」
「うまい物があるなら俺はそこに行く。何があってもだ。」
「食い意地が張っているだけだろ!オッサン!」
そして、俺は夕方までルギアの仕事を手伝わされた。これ、ランクアップに全く関係が無いじゃないか。
「オッサン。俺は早くランクアップしたいのだ。だから、明日は薬草採取に行くからな。」
「明日も手伝うのなら、Eランクにしてやってもいいぞ。」
は?
「ギルドマスターにそんな権限あるのか?」
「あるぞ、Aランクまでなら各ギルドマスターにランクアップの権限がある。で、どうする?」
それはもちろん。
「よろしくお願いします。」
「あと、夕食と昼食も付けてくれ。」
「・・・・意味がわかりません。」
「お前がいるならうまい物が食えるだろ?」
「食事は別料金です。」
「ちっ。」
俺の方が舌打ちをしたいわ!結局、金は出すのか。今日の分も?今から用意をしろと?この前の唐揚げ弁当でいい。まあ、それぐらいなら。
二人分の弁当を出して食べようとしていたら、キアナが乱入してきた。ジェームズに言われて迎えにきたというが、何だその目はやらんぞ。ルギアを見ると弁当を抱え込んで食べていた。
金を払え、金を。社員割引の申請するだ?別に俺がキアナを雇っているわけじゃないから、社員割引なんて存在しない。
キアナ。ルギアにまで借金をしようとするな。後々困るのはキアナだぞ。美味しい物は正義だ?
正義で借金をしてどうするんだ!
キアナに唐揚げを一つやり、その場は収まった、ジェームズなぜキアナを迎えに寄越したのだ。
次の日も冒険者ギルドに行き、ルギアの仕事を手伝う。出入りする職員から、生暖かい目線をもらうのだがなんでだ?
今日も一日何事もなく終わり。報酬として、ルギアにランクをEランクにしてもらった。キアナが来る前にルギアに焼き肉弁当を渡して帰った。キアナとルギアが一緒にいると9割は食べ物のことでもめる。面倒なので、さっさと帰るのが一番いいのだ。
冒険者ギルド職員 side
「ねぇ。見てきた?」
「見てきた。見てきた。」
「それで、どうだった?やっぱり、ルギアさんの隠し子?」
「帽子被っているけど、黒髪見えているし、目も黄色いし、似ているよね。」
「あの事から首都に寄り付かなくなったルギアさんがいきなり帰って来たのはやっぱりあの子ため?」
「あ。」
「何どうしたの。」
「思い出したのだけど。引退したティオさんが連れてくる子供たちがいるじゃない?」
「ああ、孤児院の子供達の指導ってやつね。」
「その中にあの子いたのを思い出したのよ。」
「え。隠し子じゃなかった?」
「でも、その子スゴかったのよ。初めて剣を持ったみたいだったけど、訓練所の
「え。隠し子なの?そうじゃないの?どっちなの。凄く気になるー。」
挿絵:キアナ
https://33361.mitemin.net/i491463/
お時間があればどうぞ、おねだりをするキアナです。
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