第29話 ずるいのぉ

 女性は満足して帰っていった。しかし、別の女性が赤い顔をして、ぷるぷるしている。まだ、我慢しているのか?


「なんですか、この子供はお祖父様に気に入られているからと言って、見習いの癖に表の店側にまででしゃばって来て、許されることではありません。」


 ああ。ジェームズの孫か、じいちゃんを取られて寂しかったのか。


「なんだ、俺がジェームズと仲がいいから妬いていたのか。別に俺はジェームズを独り占めしている訳じゃないぞ。」


「ほうほう。」


 ジェームズはニヤニヤしながら、俺とアルティーナを見ている。アルティーナは顔を更に赤くして


「妬いてなどいません。見習いなら見習いらしくしなさいと言っているのです。」


「え。じゃ、俺は倉庫の整理しなくてもよかったんじゃねぇ?ジェームズ。見習いをこき使い過ぎじゃないのか?」


「それです。それ!お祖父様を呼び捨てにするなんて何様ですか!」


 それはさっき説明したし、ジェームズに許可をもらったと、面倒くさいなぁ。あれかカルシウム不足か?それともマタタビの方がいいのか?確かペットコーナーにマタタビの・・・粉と小枝みたいな物があるな。両方をポチして、小枝の方をイベントリーから出してみる。

 ジェームズとアルティーナの様子が変わった。一本をジェームズに渡してみる。


 ジェームズは目を細めゴロゴロ言いなが小枝を噛んでいる。尻尾がゆらゆらしているから気に入ってはいるようだ。その様子をアルティーナはガン見をしていた。


「お祖父様、私にもその魅惑の香りがするものを下さい。」


「これは俺の物だから、エンから貰いなさい。」


 アルティーナは不服そうな顔をしながら


「お祖父様に渡した物を出しなさい。」


 アルティーナにイラッとする。


「そんな態度で不服そうに言われたら、有っても出したくないよね。」


「くっ。お祖父様に渡した物を私にもいただけませんか?」


「1本4千Gガートになります。」


「た、高い。」


 10本入りが400円だったから、レート換算したらそんなものだ。俺の儲けがないのに文句を言われても困るな。ジェームズが札束を出してきた。ジェームズ、最近散財し過ぎじゃないのか?キアナほどじゃない?・・・確かにキアナは甘いものを買いすぎだ。ジェームズは4万Gガートを出してきたので10本の小枝を渡した。

 その売買を目の前で見ていたアルティーナはとうとう我慢が出来なくなったのか、顔を真っ赤にしながら、その場を走って出ていった。間に合うといいな。



 戻って来たアルティーナは肩で息をしながら、4千Gガートを出して来た。そして、俺は1本の小枝と交換した。

 アルティーナは小枝をパクリと口に含む、その瞬間、眉間にシワが寄っていた顔が恍惚に呆けた顔に変わった。小枝を咥えながら恍惚な表情をする女性は絵的には大丈夫だろうか。ヤバイ薬をヤっている感じにはなっていないだろうか。


 二人の猫獣人から距離を取るために俺は一歩下がる。距離を取られたのを感じたのか、アルティーナが詰め寄ってきて、俺の肩をガシリっと掴んだ。


「ねぇ。後どれぐらいあるのぉ?全部欲しいわぁ。」


 先程と全然態度が違う。マタタビはダメだったのか。ジェームズを見てみると、普通に小枝をシガシガしているオッサンだった。いや。普通のオッサンは小枝など咥えないが、煙草の一服をしている風にリラックスしている感じだ。

 アルティーナはどうだ。これは酔っぱらいのではないのか?


「どうなのよぉ。」


「ジェームズこれは渡してもいいと思うか?」


「良いんじゃないのか。これは嗜好品としていいな。」


「それは、猫獣人専用だからな。豹獣人に好まれるかは俺はしらん。」


 ん?でも虎にマタタビを与えてみたっていう番組コーナーがあったな。猫科ならいけるのか?


「ずるいのぉ。おじいさまとばっかりしゃべって、わたしともお話してよぉ。」


 何を話すことがあるんだ?小枝を咥えながらゴロゴロと喉を鳴らす女性に話すことはない。


「わぁ、エンがアルティーナにたかられてる!」


 キアナお前は食品部門だろうが何故こっちに来た!


「キアナ、仕事中じゃないのか。」


「今日はお休みですぅ。新しいところで頑張ってるエンの応援に来てあげたのに、キアナは悲しいので、チョコレートと言うものを所望する。」


 たかりに来たのはお前だろ!


「キアナとはお話して、アルティーナとはお話してくれない。」


「チョコ。チョコ。早くちょうだい。」


 キアナは両手を俺に突き出して来て、アルティーナは小枝を咥えながら、俺に抱きつきしくしく泣き出した。お前ら一体何なのだ!


「ジェームズ、どうにかしてくれ。特にジェームズの孫!おかしすぎるだろ。」


 ジェームズは小枝を咥えながら 腕を組み、頷いている。何、頷くことがあったのだ!その時の俺はジェームズの言葉が聞こえていなかった。


『やっぱり、アルティーナはエンが好きだったんだな。でも、エンは黒色を気にしなければモテそうだからな。キアナもちゃっかり餌付けされちゃたしな。ライバルは多そうだね。うん。うん。』



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

補足

獣人は強い人に惹かれます。本能ですね。


挿絵:アルティーナ

https://33361.mitemin.net/i493275/

お時間があればどうぞ、またたび酔いのアルティーナ

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