第64話 白い杖
「エン。終わったのに、いつまでここに座っているの?」
余りにも動かない俺にキアナが声を掛けてきた。
「最後に出る。」
「なんで?お腹が痛いの?」
ヴィーネ。お前の様にアイスの食べすぎで腹痛を起こしたわけじゃない。
「いや、いつまであそこに居るのかと思って。」
そう、未だに総統閣下が四つん這いになったまま、舞台上で放置されている。誰か回収に行かないのか?
「ああ、あれは毎回のことだから、放置しておいていいぞ。」
ジェームズ毎回のことって、誰か分かっているなら回収しろよ。
「毎回あそこで今回の反省と、どうすれば英雄に勝てるか思案してるだけですから。」
ギルドマスターがそう教えてくれるが、ここで反省しなくても帰ってからすればいいと思う。大体、この勝負自体がおかしいのだ。公平な勝負をするのに神輿を使う必要もないだろう。
「そもそも、神輿を武器として使う意味がわからん。神輿は神霊を運ぶ輿だ。」
「「「「「は?」」」」」
ジェームズを始め周りの人達が俺をみる。
「ルールを作った武闘大会でいいんじゃないのか?舞台から落ちれば負け。参ったと言えば負け。相手に瀕死するような怪我をさせれば負けとかだ。それで優勝者は前回優勝者に挑む権利を与えるでいいんじゃないのか?」
「それはいい。いや、それがいい!」
いつの間にか俺の目の前に上半身裸の筋肉隆々の狐獣人がいた。いつ来たんだ。さっきまで、下の舞台で四つん這いになっていたはずなのに
「狐のおっさん。いきなり話に割り込んで来るなよ。」
「狐のおっさん・・・俺のことか。ははは、そんな事を言われたことは初めてだ。で、このクソガキはなんです?ジェームズ様。」
「アマツ様とルギアの子供だ。」
「なに!」
そう言って総統閣下は俺のキャスケットを剥ぎ取った。
「俺は認めていない。」
総統閣下からキャスケットを奪い取り再び被る。
「確かに、ルギア様にそっくりだ。ジェームズ様、なんで隠していたのです。絶対にこの子はこの国に必要ではないですか。」
「あ゛?俺はこの国の為に必要?俺を使おうっていうのか?」
「アウル。エンはそういう事はしないと思うぞ。何度もアマツ様とは違うと言われたしな。」
「く。惜しい。でも、先程の武闘大会の意見は採用だ!コレなら行ける。次こそは勝てるぞ。ハハハ。」
そう笑いながら総統閣下は去って行った。いや、ソルには勝てんと思うぞ。そもそも、動きが全く違うかったからな。
俺はキアナとライラに挟まれ中央広場の屋台を見て回っている。その後ろにはアルティーナとヴィーネとフェーラプティスは後ろからついてくる。
そして、何故か俺に視線が刺さってくる。おかしいな黒髪は隠しているのにな。
「あ。」
ライラが何かを見つけたようで立ち止まった。
「どうした?」
「あ、なんでもないよ。」
「そう「欲しい物があるならエンに買ってもらうのよ。」」
アルティーナ。この前、買わされたから欲しいものがあっても買わんからな。
「そうそう、今がチャンスです。」
何のチャンスだ。キアナ。
「じゃ、ヴィーネはアイスが欲しい。」
ヴィーネ、もう今日は2つもアイスをあげたぞ。
「私は、紅茶と茶菓子を」
フェーラプティス。お前も便乗するな。
「黒い石のペンダントが欲しい・・です。」
「うお!」
俺の目の前に深く帽子を被ったアイリスがいた。いつからいた?全く気配がなかったが、今は食品部門で見習いをしているはずだ。え?フェーラプティスと一緒に来ていた?全然わからなかったが?
「私の存在価値なんてないのです。」
そこまで言っていないだろ。
「エンって酷いよね。」
「酷いわね。」
キアナ、アルティーナ。二人で俺を責めるな。本当に気づかなかったんだから仕方がないだろ。
買えばいいんだろ。買えば。
「はぁ、ライラも欲しい物があるなら言えばいい。」
「えっと、コレが気になっただけだから別に大丈夫だよ。」
ライラがそう言って指した先には白い杖があった。露天で売っている魔術師用の杖が気になったらしい。値段を見ると100万
「いいぞ。爺さんコレをくれないか?」
白い髪と白い髭に顔中が覆われ、頭の横から曲がりくねった角が出ていることから、露天商は山羊獣人だと思われる。見た目の年齢が分からないが手のシワが老人のようだったので爺さんだろう。
「ほう。100万
俺は爺さんに金を渡し
「杖が持ち主を選ぶ?」
「この杖の持ち主に選ばれずに使うと不幸が訪れると言う曰く付きの杖じゃ。ホッホッホッ。アリス様以来持ち主が現れなかったと聞いておるが、やっと見つかったようじゃな。」
爺さんがライラに曰く付きの杖を渡しながら言う。それ、本当に大丈夫か?
「アリス様とは誰だ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます