第105話 便利なのかそうじゃないのか
俺の魔力量の半分を注いだところで完全に魔石が光を放った。これってさぁ、燃費悪くないか?俺の魔力量ってかなり有る内の半分だぞ。使える奴ってごく少数じゃないのか?
はっ!だからか!ここまで魔力を消費しないと起動しない転移門は使えない人からすればただの部屋って事か!いや、その前に使い勝手悪すぎるだろ。
誰だよこんな使えない物を作ったヤツは!あ、エルフだったか。
そんな事を考えていると少女のような女性の声が聞こえてきた。
『本日はエルフ転移門をご利用いただきまして、誠にありがとございます。』
あ?日本語?それもなぜキャビンアテンダント風なんだ?
『この便は千歳発となっておりますのでお間違えなきようにお願いいたします。』
千歳!どこが千歳なんだ!
『ご到着の門をパネルから選択してくださいませ。また色が付いていない門は
パネル?なんか目の前に半透明の地図が出てきた。多分、この大陸の地図なんだろう。そこに赤い文字と無色の文字が表示されている。赤い文字は大陸の北側の端に集中していることから、ここがギラン共和国であり、俺が行けるところなのだろう。
「エン。ミレーテの文字を魔力を込めながら触ってくれ。」
ソルが赤い文字の一つを指し示しす。
ああ、ここか。しかし、本当に大陸中に転移門があるんだな。ん?ギラン共和国と反対側の東側の端の方には全くもって文字の表記がない。
何だここは?
『因みにラース公国便は存在しませんのでご了承くださいませ。』
「あ?ラース公国?何で転移門がないんだ?」
「そんなこと決まっているだろ。カウサ神教国もエルフ神聖国もラース公国には敵わなかったからだ。」
ソルが当たり前の様に言ったが、いつの時代の話だ!ラース公国以外、今は存在しない国じゃないのか。
まあいいや。ラース公国は強国なんだろう。それで占領下に置かれたことがないということか。
取り敢えず、ミレーテと示された赤い文字に触れる。
『ご到着の門は能登でございます。』
なんで、北陸へ行ってしまうんだ。どういう設定だ!ふざけ過ぎだろ。
『当便は出発の準備に入らせていただきます。お忘れ物はございませんでしょうか?旅の無事をクソ神に祈りましたか?』
あ?クソ神ってまさか・・・。
『当便は絶対に安全とは限りませんのでお気をつけくださいませ。』
「何!安全じゃないってどういうことだ!」
「エン。どうした?」
ゼルトが聞いてきたが、俺を抱えているソルが小刻みに揺れていることから、きっと笑っているんだろう。これか!天津が面白い反応をしていたっていた原因は!
『クソエルフ共。良き地獄の旅へ行ってらっしゃいませ。案内役はアリスが担当いたしました。』
「あ・・アリス!テメェーふざけ過ぎだ!」
やっぱりアリスか!そして、俺達は眩いばかりの閃光に包まれた。
『目的地へ到着いたしました。良き旅を』
一番初めに聞いた単調な音声の声が聞こえてきた。今度はこの世界の言葉だった。
光が収まったため、目を開けると変わらない石造りの床と壁が目に入ってくる。本当に転移ができたのか?魔力を半分持っていかれただけって事はないよな。
ソルは俺を抱えたまま、何もない部屋から出ていく。部屋から出るとそこは一度だけルギアと来たことがあるミレーテの役場だった。
おお、ここに出てくるのか。もしかして、役場の役目は転移門の管理も含まれているのか?
「マジで転移ができた。でも、あれはふざけ過ぎだろ。」
心の声が思わず漏れてしまった俺にソルが笑いながら言ってきた。
「くくく。エンもアマツと同じような反応するよな。最初はわけわからんって顔をしていたと思ったら『危険なの!』って叫びだしてな、慌てふためき出したんだ。くくく、俺たちには何の事か、さっぱり分からなかったんだがな。」
それはそうだろ。あんな事を転移の直前に言われてしまったら、普通は慌てるぞ。はぁ。しかし、この転移門は便利なのか便利じゃないのかわからないな。
俺は転移を使ったことはない。そもそも、魔導術が使えなければ転移は使えないのだが、転移するには前もって転移先の記録を自分自身でしなければならないと聞いた。だから、行ったことのない場所には転移ができないのだ。
しかし、転移門だとあの赤い表示がされている所になら、何処でも転移できるとい仕組みなのだろう。魔力量を大量に消費するという事が如何せんデメリットではある。
俺の魔力量の半分て、一体どれだけの人があの転移門を起動できるんだろうな。
あ、元々はエルフ専用の転移装置だったか。
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