第7話 ご褒美の金平糖

 結局、ビーチェとライラの魔術で土に穴を開けて埋めることになった。本当に今まで大丈夫だったのか。


 そういえば、グルグルマップの赤い点はゴブリンを倒したら無くなった。あれは、ゴブリンを指していたのだろう。


 それからの帰りは何事も無く無事に首都ミレーテに帰れた。帰りは冒険者ギルドに寄り、ゴブリンの討伐部位を出して換金して終った。今回は30Gガートだった。それは、全額が孤児院用の貯蓄に回るので 、俺たちには1Gガートも入らない。ちなみにGガートはこの国の通貨だ。感覚的通貨価値は日本の円と変わらない気がする。


 孤児院に帰ってからもライラの顔色は悪いままで、夕食も殆ど手を付けていなかった。明日も討伐に行くのに大丈夫だろうか。ドラクがいないのを確認してライラに声をかける。


「ライラ、大丈夫か?」


「な、何の事?」


「ゴブリンの討伐から顔色が悪いから気になったんだ。」


「あ、うん。」


「気になることがあるなら言ってみろ。」


「あ、あのね。私がおかしいのだと思うのだけど・・・。うんん。やっぱりいい。」


「別に笑ったりしないと思うぞ。」


「あ、ゴブリンがね。人みたいだなって思ったの。緑の人。だから、皆が平気な顔をして殺しているのが怖くって。」


 確かに人型ひとがたの魔物ではある。緑の人か・・・。こういうのは一旦そう思ってしまうと意識を変えるのは中々難しいな。


「それは、ゴブリンが怖いわけではなくて、皆が怖いと言うことか?」


「あ。えーと。皆が怖いわけじゃなくて、私が人を殺すのが平気になるのかなって。」


「そう思っている限り平気になることはないんじゃないかな。それにライラは補助魔術をこれから覚えるのだから、直接命を奪う行動に出ることは滅多にないと思う。」


「そっか。エン、ありがとう。皆が怖いわけではなくて、私自身がそうなることを怖がっていたんだね。」


 何か納得したらしい。これから、どうするのかはライラ自身の気持ち次第だ。


「ライラ。口を開けてみろ。」


 ライラの口の中にご褒美の金平糖を1つ入れてやった。


「あまい!なにこれ!直ぐに無くなってしまった。」


「今日、頑張ったご褒美だ。じゃ、おやすみ。」



 討伐メンバーに入って、2ヶ月がたった。

 その間、気味が悪いぐらいドラクがおとなしかった。原因はわかっている。ティオ爺の監視の目があるからだ。

 そして、とうとうティオ爺の監視の目が外れる日が来てしまった。ティオ爺が討伐メンバーとして、問題なくやっていけると判断したからだ。

 この日が来ることはわかってはいたが、来てほしくなかった。


「今まで問題無くやってきたように、わしが居なくても今まで通りすれば問題はない。皆、頑張れよ。」


 そんな言葉を残して、ティオ爺の指導は終わってしまった。今まで問題がなかったのはティオ爺がいてくれたからだ。できれば、ドラクも連れていってくれ!

 そう、ドラクの指導は外れないのだ。俺は生きていけるだろうか。


 今日は北の街道沿いの森を行くらしい。リーダーのフーゴを先頭に、エルム、俺、ビーチェとサイ、最後尾にライラとドラクの順に進んで行く。ドラクがライラの隣を歩くようになったのは、初日の次の日からだった。一番最後尾で、ドラクがライラにずっと話掛けている。よく疲れないものだ。それに、最後尾を陣取るならもう少し、周りの警戒というものをしてほしい。


 しかし、今日は何かおかしい、ずいぶんと奥に入って来ていないだろうか。ライラもそれに気が付いたのか


「ドラクさん、少し奥に入り過ぎてませんか?」


「ティオ爺がいないときはこんなものだ。毎日、魔物が1体や2体じゃつまらないだろ。」


 ちょっと待て、お前一番始めに言っていたよな。

 『街道沿いの森に入りゴブリン討伐を行うが森の浅いところのみだ、奥にはいかない。わかったな。』って言っていたよな。あれは嘘か。早速、問題行動か!


「敵発見。行くぞ。」


 そう言って、エルムが先走って行った。お前もか!エルム!連携はどうした。連携は。

 後に付いていくと、グリーンウルフがいた。そのグリーンウルフにエルムが突っ込んでいく。それに続き、ビーチェが火の矢をサイが弓で矢を放ち始めた。お前ら、連携はどうした。その撃ち方は誤射されそうで、すっげー怖いんだけど。1匹のグリーンウルフは直ぐに倒したが、魔石を取って、そのまま次に行こうとしている。


「魔物の死骸を埋めないのか?」


「それ、魔力の無駄。」


 ビーチェが言ってきた。


「前から思ってたけど、あんたがいらないことをティオ爺に言うから、今まで必要のない事をさせられていたのを我慢していたけど、これからはしないから。今までも問題無かったのに、何かあるはずないじゃない。」


 そう言って、前衛に付いていった。ビーチェ。お前は魔物の世態を知らないのか!ウルフは大抵集団行動を取るんだ。これが絶対にハグレウルフだという根拠はないんだぞ。


 仕方が無く穴を魔術で開ける。あ、開けすぎた。魔術は難しいな。グリーンウルフを穴に落としいれ、また、魔術で蓋をする。あ、今度は盛り上がってしまった。


 そして、あいつらの後を追おうとグルグルマップを見てみると、赤い点に囲まれた。青い点の集団がいた。

 マジやばくないか?

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