第34話 う・・・うさぎ
翌朝、俺の目には不可解なモノを映していた。なんで、フェーラプティスがいるんだ!お前は家に憑く妖精じゃなかったのか!
「ジェームズ、これはどういうことだ?」
「昨日の夜に商会に来てな。ここでワイバーンの革代として無給で働くと言って来たんだよ。ははは、家事妖精であるシルキーが商会に来てくれるなんて、それもタダ働き。いいねぇ。」
フェーラプティスがジェームズに扱き使われる絵がとても想像できる。フェーラプティス頑張れ!
「エン。フェーラプティスが作った鞄をすべて提供をしてくれたから、背中に背負う鞄に入れて行くのはどうだ?」
ジェームズはそう言いながら、リュックサックタイプの収納鞄を渡してきた。しかし、どうみても幼女ものだ。俺にこれを背負えと?
ジェームズに怪訝な視線を送る。
「う、うん。言いたいことはわかる。とても、うさぎの形が可愛らしいな。」
そうなのだ。ワイバーンの革で作られた、うさぎのぬいぐるみに背負える紐がくっついているのだ。
イヤイヤ、俺は男だ。そんなものは背負えない。背負いたくない。
「エン。まずは言い出した者が業務運用をすべきだと思わないか?」
「今回は通常運行で「エン。業務命令だ。」・・・くっ。」
被せて命令を言われた。所詮雇われだ。雇い主から言われたのなら、やらなければならない。う、うさぎのぬいぐるみを背負うぐらい・・・室内なのに雨が。
そして、俺はゼルトのオッサンに連れられ、旅に必要な物を買いに行った。因みにこれも実費だ。
無給の新人にはこれはキツくないか?お前はいろんなところで儲けているじゃないかって?ゼルトのオッサン。俺じゃなくて普通の新人だ。
はぁ?俺は特別研修だったって?普通は雪解けの春に見習いを採用して、3ヶ月基本的な勉強をして、夏の3ヶ月で食品部門の研修して、秋の3ヶ月で衣類部門の研修して、冬の3ヶ月で雑貨部門の研修するのが普通だって?じゃ、運行業務は2年目からだというのか!
俺の見習い期間はほとんど仕事らしい仕事はしていないぞ!
エンだからいいってなんだ!意味がわからない!
今思ったのだが、なぜに他の店で物を買っているんだ?フィーディス商会で買った方がいいのではないのか?市場調査だ?これは2年目を連れて行くことなのか?
他の店のことも知っておくべきだと・・・。確かにそうだ。しかし、基本的物価がわかっていない新人には不向きだ。
店の商品も把握をしていない者に市場調査なんて無理だろ。せめて一通りの業務内容を把握した3年目以降の人にすべきだと思うぞ。あっ。今のは聞かなかったことにしてほしい。
ゼルトのオッサン!ちょっと待ってくれ!ジェームズに報告はしなくていい。俺を置いて行こうとせずに、買い物の続きをしよう。さあ、他に何がいるんだ?
はぁ。またやってしまうところだった。ゼルトのオッサンがジェームズに報告しなければそれでいい。
買ったものは、通常より半分以下になったらしい。野宿の工程が全て省かれてしまったので、その分の購入が減ったということだ。
野宿するには色々用意をしなければならないからな。
しかし、3日後に俺が各地に商品を運送することが、決まったことを聞いたのか、キアナが甘いものをくれっとつきまとって来た。欲しいなら金を払え。あと、食べ過ぎると太るぞ。最近、フィーディス商会の制服が入り難いとかないか?
キアナはセクハラだ!と言いながら、涙目で去っていった。急激に太ると服がヤバイ事になるからな。
オッサンだった俺にも経験があるぞ。パツパツのスーツをまだ着れると思い込み、着ていって、ディスクの椅子に座ると『ビリッ』っと嫌な音が響いたことが・・・。どこが破けたかって、一番破けたらいけないところだ。
フェーラプティスも仕事の合間に俺のところに来て、ワイバーンの革代はここで働いて返すから、紅茶を売って欲しいと、足元に縋って来た。やはりそっちか!
フェーラプティスには、信用を回復できたら売ってやると言えば、花を撒き散らせながら去っていった。この花はどうなっているんだろう。
アルティーナも俺を見つけたらソクソクとやって来て、魅惑の香りを売って欲しいと言って来た。お前ら自分の欲望に正直過ぎないか?
アルティーナ、お前には絶対に売らん。
そんな2日間を過ごし、出発当日になった。俺の姿を見たキアナが『今度はうさぎの耳を作ろう』と言い出してきた。そう俺は今、うさぎのリュックを背負い黒豹の耳のカチューシャを着けていた。
やめろ!俺はバニーになるつもりはねぇ!
フェーラプティスは、『くっ、黒豹にすればよかった』なんて言っているし。だから、お揃いにしようとするな!
アルティーナ。なぜ、俺に手の平サイズの白猫のぬいぐるみを渡して来た。これはいらないよな。ジェームズ!なぜ、横を向いて笑っているんだ!お前の孫はおかしすぎるぞ。アルティーナ、うさぎのリュックにつけなくていい。
そうして、俺は商品運搬業務に就いたのだった。本当に大丈夫なんだろうか。
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