第38話 氷の精霊
「どう見てもこれをなんとかできる状態じゃないよな。根本的原因が街の中にあるんだろ?あの魔物の価値はなんだ?」
「見ればわかるだろ?あの立派な牙だ。」
遠目でこっちに尻を向けているから、牙があるかどうかなんてわからないだろ。
牙に価値があるからと言って、ここまで街を襲うことがあるというのか?もっと別の何か・・・
『真否の透視』
真実かそうでないか見透す術だが、この場合でも使えるだろうか?
街の東側に何か異物がいるようだ。なんだ?
『氷の精霊』
精霊が街の中にいるのか!
「なぁ。ゼルトのオッサン、街の中に氷の精霊がいるみたいなのだが、あの街にはフェーラプティスみたいに住んでいる精霊がいるのか?」
「何?精霊は普通、街の中には住めんぞ。」
「じゃあ、なんでいるんだ?」
「知らん。しかし、それが本当だとすればヤバイかもしれん。あの、サーベルマンモスを精霊が操っている可能性がある。」
マジか。精霊って魔物を操ることができるのか。
「エン。精霊はあのフェーラプティスより厄介だ。精霊のいる場所に向かうぞ。このままだと、街が壊滅だ。」
え。嫌だな。ホラーなフェーラプティスだけでも勘弁してほしいぐらいだったのに、それより厄介って何があるんだ。
巨大な魔物に外壁を囲まれているため、騎獣に乗ったまま街の中に入る。街の中は蜂の巣をつついたような騒ぎようだ。それはそうだろう。外壁と同じ高さの魔物が十数頭、街の周りに陣取り、囲まれてしまっているのだから。
目的の場所にはたどり着いた。しかし、ただの石畳の地面が広がる広場の中央だった。
マップ機能って立体的にならないかな。これは地下にいるよな。って思っていたら3Dの立体地図になった。マップ機能って立体構造もいけるのか!複雑なら分けがわからなくなりそうだが、ただの一本道が地下を走っているようだったが、移動している?
「ゼルトのオッサン、地下の道を通って移動しているみたいだ。ただ、速度が遅いから掘りながら進んでいるようだ。」
「そんなことまでわかるのか。入り口はどこだ。」
入り口か。一本道をたどって地上を歩いて行く。途中建物があったりしたので、騎獣に再び乗り上空から視ていく。反対側の西側に来てしまった。着いた先は一軒の豪邸と言っていい屋敷だった。上空からでも、門から屋敷までが相当の距離があるのがわかるし、フェーラプティスの屋敷も大きいと思ったが、その倍はありそうだ。
「この屋敷の中だ。」
横を見るとゼルトのオッサンは頭を抱え込んでいた。まぁ、屋敷を見てもそれなりの権力者の所有物だとわかる。
「誰の屋敷だ?」
「コートドラン商会の頭取の屋敷だ。フィーディス商会と二分する商会だ。ただ、マルス帝国と繋がりが強いため、ジェームズの大旦那が警戒している。特に今の4代目はやり手だ。どんな汚いことも平気でやるクズだが、ここ数年で急成長したもの事実だ。」
「屋敷内はあまり人の気配がないようだが、そのまま侵入するか?ただ、侵入しても狭い穴蔵だ。いつ崩壊してもおかしくないところを俺は入りたくない。もしくは、街の外に出たところで仕掛けをして引きずり出すか。」
「引きずり出せるのか?」
「うーん。無事に引きずり出せる保証はない。」
「まあいい。やってくれ。このままでは、街がもたん。」
ああ、外壁からバキバキと音が漏れているから、崩壊するのも時間の問題だな。
騎獣に乗り街の外に出る。街の東側で準備をしたいところだが、でかい象が邪魔だな。ここからだと、3頭か・・・。
「オッサン、あの何だったか?牙のやつ。」
「サーベルマンモスか?」
「そう、それ。邪魔だからちょっと倒してくる。」
そう言って、俺は騎獣から飛び降りた。
「エン!ちょっと待て!」
ゼルトが何か言っているがさっぱり聞こえない。
身体強化をして空中で軌道修正をしながら、一頭目の頭上に標的を合わせる。レイピアを抜き魔力を込める。
『超振動』
象の首元にレイピアを突き刺す。超音波の振動を魔力で再現したものだ。突き刺すしかないレイピアを魔力で覆うことにより、魔力の刃が出来上がり、超音波の振動を再現をすれば、ゴトリと巨大な魔物の首が落ちてく。あと、二匹。牙はいらんが、魔石は欲しいな。
他の二頭も同じようにレイピアで斬って行く。二頭目の足を斬り落としバランスを崩したところを首元を切り裂く。三頭目がこちらに向かって牙を振るってくるが、その攻撃、何か冷気を纏ってないか?跳躍をしたいが流石に5メルは無理なので、二頭目を踏み台にして、三頭目の頭上に跳躍し首を斬り落とす。
その直後、周りから勝鬨が上がった。おい、お前ら他にもまだいるんだからな。俺は別に象を倒したかったわけではないからな。他はお前たちでがんばれよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます