第16話 ワイバーン襲来
俺は街道沿いから外れたところを歩いている。しかし、疲れた。まさか孤児院で教えられていた言葉が全然足りていなかったことに驚いた。商人の専門用語でもあるのか?だから1年も見習い期間があるのか?
この話を受けてよかったのかわからないが、なんの伝のない俺が商人として成功者となる確率はほぼ0だったのが50%ぐらいになったのは理解ができる。
ジェームズが信用できる人物かまだわからないが、契約を交わす相手としては利がある人物だというのがわかる。一月100万か・・・俺は足を止める。
「何か用か?」
先程から俺を付けている者がいる。後ろを振り向き声をかけた。
「え?俺の尾行バレてた?」
グルグルマップは常に開いているから、青い人の点が俺に付いて来ているのがわかっただけだ。
木の影から出てきたのは、3日前に荷馬車に乗せてもらった、蜥蜴人のオッサンだ。スキンヘッドで目がギョロリとしているから、見た目が怖い。だから、荷馬車の運搬要員に選ばれたのだろう。
「大旦那にちび助を見るように頼まれたんだよ。」
大旦那?ジェームズのことか。
「俺を見張るように言われたの間違いだろ。」
「そうとも言う。」
はぁ。
「少し一人になりたいだけだ。明日の朝に商会を訪ねるって言ったんだ。問題ないだろ。」
「そうじゃなくてな。街道沿いでも魔物がうろうろしているんだ。早く街へ戻ろう。一人になりたいのなら、宿を用意するからな。」
魔物?スライムのことか?確かにたくさん
「いや。このままで問題ない。」
蜥蜴人のオッサンは髪のない頭を掻き
「ガキを一人でうろうろさせておくのが問題だと言っているんだ。」
そう言って俺を荷物のように抱えて街の方に歩きだした。なんだ?見た目が小さいのが悪いのか?体が大きければ問題がないのか?
オッサンに担がれながら行くこと数十
「オッサン、なんかスッゲー速い魔物がこっちに向かって来ている。」
「何!それはなんだ?」
「さあ?何かがこっちに向かっているとしか・・・。」
おかしいなそろそろ目視できてもいい距離まで来ているのになぁ。・・・地上ではなく上空!俺は見上げた。そこには十頭はいるんじゃないだろうか。巨大な翼を持ち、上空を飛行する巨体が存在した。
「オッサン!上に何かいるんだが、あれはなんだ?」
「あ゛?ワイバーンじゃねえか!今、繁殖期だから獲物を探しているんじゃないか?」
「その、獲物は俺たちか?」
オッサンは立ち止まり
「終わった。いくらなんでもあの数に狙われたら、逃げ切れねぇ。」
「オッサン。諦めが早いなぁ。取り敢えず降ろしてくれないか。」
1頭のワイバーンがこちらに狙いを付け滑空を始めた。俺はレイピアを抜き、魔力を纏わせ、ワイバーンに狙いを定めて突き出す。
「『絶対真空』」
理論上存在しない状態を作り出したものだ。原子も分子も圧力も存在しない空間を作り出す。何が起こるかといえば、空間すらも切り裂くものとなるのだ。
滑空してきたワイバーンの頭に直撃し頭が粉砕し、衝撃でバランスを崩し、きりもみ回転をしながら地面に激突した。続いて、俺の一撃目の攻撃が頭を貫いたあと上空にいた2頭目の翼を切り裂き、2頭目も落ちてきた。そいつはまだ生きていたので、身体強化して眉間を貫く。
次が襲ってくるかと思えば、残りのワイバーンは空高く上昇し、もと来た空を戻って行った。
「おい、オッサン。ワイバーンの魔石はどこにあるんだ?」
・・・・返事がない。振り返ると、放心状態のオッサンが突っ立っていた。オッサンの目の前で手を叩き、意識をこちらに向かせる。
「うぉ。い、今のはなんだ?」
「何言ってんだ?オッサンがワイバーンって言ったじゃないか。」
「違う。何で、剣を突きだしただけで、ワイバーンの頭が吹っ飛ぶんだ?おかしいだろ!」
「全くおかしくない。」
「そうか、ちび助がおかしいのか。」
俺は正常でおかしくないぞ。オッサンがおかしいのではないのか?
「で、オッサン。ワイバーンの魔石はどこにある。」
「ん?ああ、この辺りだ。」
言われた辺りをナイフで切り裂くが刃が入らない。仕方がなく、皮を切り裂くときにも身体強化でナイフを突き立てた。はぁ。ガキの力じゃこんなことまで、身体強化しないといけないのか。後ろのオッサンが『なんだ?このちび助ありえねー。』とかうるさいが、何がありえんのだ。
2頭分のワイバーンの魔石が手に入ったので、後はいらないのだが、どうしたらいいのか。
「オッサン。後は俺はいらないのだが、このワイバーンどうしたらいいんだ?」
「冒険者ギルドに持って行けば金になるぞ。」
「こんなデカ物どうやって持って行く気だ?」
「ちび助、アイテムボックス持ちだろ?」
このオッサンか!ジェームズに俺が空間収納持ちではないかと言ったヤツは!
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