第82話 また女の子を拾ってきたの?
豹獣人だって!少女を見る。言われてみれば、こびりついた血でわからなかったが、髪が丸く頭の上で盛り上がっているようにみえる。綺麗にすればわかるのか?
「『クリーン』」
少女に付いた血を綺麗にしてみると、赤に染まっていた髪は白くその間からは白い丸みを帯びた耳が出ていた。
「なぁ。ソル、どう見ても白いぞ。黒じゃないから。ルギアと種族が違うだろ?」
そう少女は雪豹のように白い髪。白く長い尾に薄く斑にヒョウ柄が浮き出ていた。
「エン。ルギアは雪豹の豹獣人だ。」
おっふ。今更な情報が出てきたぞ。黒なのに雪豹とはこれは如何に。
「まぁ。ルギアの種族はいいとして、確かに今のルギアに保護を求めるのは厳しいかもしれんな。」
未だに天津に囚われているルギアに保護など求めることはできない。
「ジェームスに頼むか?いや、でもな。この前従業員が余っていると言っていたしな。なぁ。本当に頼る人はいないのか?親戚とかもいないのか?」
しかし、少女は首を横に振る。
「エンが面倒を見てやればいい。あの拾ったエルフの子も仕事を与えているそうじゃないか。」
ソル、他人事だからといって適当に言わないでほしい。確かにアイリスにはやってもらっていることはあるが、俺の個人的なことを仕事の合間にしてもらっているにすぎない。
「お願いします。エンさま。」
少女はそう言ってきたが、俺は面倒を見るとは言ってねー!
結局、ゼルトにもいいんじゃないのかと言われ、最終的にジェームスに頼むことになった。いやだってな。今の俺の雇用主はジェームスだから、ジェームスに頼むしかないだろ?
今日はここで露店を開く予定だったが、この騒ぎで露店を開けるわけもなく、トンボ帰りで首都ミレーテに戻ることになってしまった。
「なんだ?行ったと思ったらもう問題にぶつかったのか?エンらしいな。」
ジェームスの執務室の扉を叩いて中に入った早々に言われてしまった。俺らしいってなんだ?
「行った町が魔物に襲われた後だったんだ。家族が殺されて死にかけの少女を治療したんだが行く宛がなく・・・ソルが豹獣人だから俺が面倒を見ればいいと言われたんだが、ここに置いてもらえるか?はっきり言って俺に人の面倒をみる余裕なんてないんだ。」
俺の言葉にジェームスはニヤニヤしながら
「今度は豹獣人か。」
なんて言ってきた。今度はってなんだ!拾ってきなのはアイリスだけだ。
「そうだなぁ。アイリスが作っているものが何か教えてくれたら、いいぞ。」
なんだ?ソルも言っていたが、俺がアイリスに頼んでいる物が気になるのか?
「あれか?ハーブだ。」
そう、アイリスの称号にあったのだ。『緑の手を持つ者』と、これは色々試すべきだろ思いついた。
はっきり言ってここのというか、この国で塩味以外の料理に出会ったことがないのだ。確かに塩分も体に必要だが、毎日毎日、同じ味付けは流石にあきる。
だから、何かといてルギアとソルが俺のところに食い物をねだりに来て、キアナがそれに便乗しようとしているのだと思う。
なので、ハーブの種をネットで購入してアイリスに育ててもらっているのだ。あれは適切に管理しないと雑草並みに繁殖するからな。実家の庭がレモンバームだらけになったり、お前は木だったのかと言いたくなるほどのローズマリーとかな。
「ハーブとはなんだ?」
「香りが強い葉っぱかな?詳しくは知らんが、お茶にしたり、肉に香り付をしたりするものだ。精油も作れるものも・・・」
突然、後ろの扉が勢いよく開いた。
「お茶ですって!」
後ろを振り返るとお茶の用意をしたトレイを持ったフェーラプティスが扉を開けて入ってきた。多分、ジェームスのお茶を用意して、入るタイミングを見計らっていたと思われるのだが、そのフェーラプティスが俺に詰め寄って来て
「アイリスさんが育てている物はお茶になるのですか?どんな味がするのですか?いつになったら飲めますか?」
しまった。一番聞かれてはならない人物に聞かれてしまった。お茶にできるとわかれば根こそぎ持っていかれそうだから、フェーラプティスには知られたくなかったのに。
「そのうちだ。そのうち。ああ、そうだ。怪我を治したんだが、血を流しすぎて療養が必要な少女を連れて帰って来ているか・・・ぁ?」
なぜか目の前にアルティーナとキアナがいた。お前ら仕事はどうした?
「また、エンは女の子を拾ってきたの?」
「私達が居るのにまだ足りないと?」
アルティーナ、またってなんだ。だから、アイリスだけだろ。毎回連れ帰っている言い方をしないでほしい。
キアナ、何が足りないんだ?お前の食欲以外の物が足りないと俺は思うぞ。
「エン。いないと思ったらここにいたの。」
横腹に衝撃と共にヴィーネの声がした。また、アイスをねだりに探していたのか。
「お前らいい加減にしろよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます