第12話 見た目で判断するな!

 俺はミレーテを出たものの何処に向かおうか、迷っていた。はっきり言ってギラン共和国はヤバイ国に囲まれている。


 まずはシャーレン精霊王国だ。世界中の教会を牛耳っているエルフがいる国だ。何がヤバイってエルフ族以外を無能扱いして、見下しているやつらがいる国だ。まず、普通には入国できない。

 そして、東にいけばマルス帝国だ。ここは人族主義国家だ。獣人が奴隷扱いされている国だが、ここも出入りのチェックが厳しい。

 一番行きたくないのは南のモルテ国だ。この頃王の奇行が激しくなってきたと噂で聞いた。ここは絶対にパスだ。

 やはり、一番ましなのがマルス帝国か・・・そのまま、ラース公国に抜けるかグローリア国に抜けるか。悩むが行き当たりばったりでいいか。


 その前に、この国をぐるりと巡るものいいかもしれない。この国は南北に長いからこれだけでも1年はかかるかもしれないな。


 今は夏が過ぎた頃なので先に北に行ったほうがいいか。まずは北の中核都市から行こう。

 旅は順調だった。本当は騎獣という人に慣らされた動物に乗って移動することもできるのだが、円は持っていても、Gガートは1Gガートも持っていないのだ。

 だから、俺は歩いて街道を進む。時よりその辺の村人が小さい子が歩いているのを不憫に思ったのか、町から町へ荷を運ぶ荷馬車に乗せてくれたりもした。俺はお礼にリンゴを渡す。北国のため果物が手に入りにくいので、喜ばれるのだ。

 そして、5日後には中核都市にたどり着いた。まずはGガートを稼がないと今日の宿にも泊まれない。今まで野宿だったので、今日は布団で寝たいからな。

 Gガートがないなら魔物の素材を売ればって?順調だって言ったじゃないか。荷馬車に乗っているときも、一人で歩いているときも、魔物には襲われなかった。ただ、見慣れた丸いフォルムを追いかけて、小銭稼ぎをしたぐらいだ。


 中核都市の外門で身分証である冒険者ギルドのタグを提示し、都市の中に入る。首都ミレーテに比べれば小さいが活気のある街だ。まずは、売り出している商品を見ながら商業ギルドを目指す。

 商業ギルドの受付でこの街での商売の仕方を聞くと、受付の人は怪訝な顔になった。

 なんだ?黒髪は隠しているので 、見た目が小さいのが悪いのか。何を売り出すのかと聞かれたので、前と同じ様に麻袋に入れた白い砂糖を出してみると 、今度は何処から盗んで来たと言い出した。前も思ったが商業ギルドのヤツは人を見た目でしか判断しないのか。

 ここはもういいと思い、出ていこうとすれば、腕を掴まれ、盗んだそれを置いて行けと言い出した。こいつ本当に頭おかしいな。まあ、この砂糖は1kg200円だった物だし、くれてやってもいいが。


「あのさ、俺が盗んだという証拠はなんだ?」


「あなたのような子供がこんな高級な砂糖を持っているはずないでしょ。」


「じゃ、あんたはこれほど白く精製した砂糖を見たことがあるのか?」


「ありませんけど、盗んだ以外はありえません。」


「俺は砂糖を白く精製する方法も知っている。あんたは知っているのか?」


「知らないわよ。じゃ、言って見なさいよ。」


「そんな企業秘密言えるはずないだろ。あんたら、商業ギルドのヤツは人を疑うのが好きだな。ミレーテでも同じだったしな。」


「ミレーテ?」


「別に俺にとってはこれぐらいの砂糖どうだっていいんだ。」


 そう言って麻袋を逆さにした。


「あー。あなたなんてことを!」


 それを、魔法の火で炙る。


「火が砂糖に火が」


 カラメル色にこんがり焼けた砂糖の溶けた板ができた。それを風を起こし冷ましてカウンターから剥がす。


「やるよ。じゃあな。」


 俺はカウンターから離れ商業ギルドから出ようとしたら、立ち塞がれた。顔を上げると、ほっそりとした体格で白髪に三角の耳が生えたおっさんだった。


「ボウズはミレーテのギルドマスターが交渉を失敗したというエンと言う名前の子供で合っているか?」


「合っていようが、間違っていようがここでは取引しない。」


「じゃ、俺のところで取引しよう。」


「ん?」


「俺はジェームズ・フィーディス。この国で1番古いフィーディス商会の会長だ。」


 これが長年付き合うことになる、フィーディス商会の会長ジェームズとの出会いだった。


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