第4話 爆散した?
「まあ、ライラはビーチェと同じく魔術を担当しよう。エンは剣を使ってみようか。当分の間は討伐ではなく採取をやってもらうがな。」
「よかった。明日から魔物討伐って言われたらどうしようかと、どきどきしてたの。スライムは倒したことはあるけど、他の魔物なんて見たことないし。」
確かに薪拾いに行く森はスライムしかいなかったな。
「武器を使ったこともないガキに初っぱなから魔物討伐しろとは言わん。パニックになって仲間を傷付けたら意味がない。まずは武器を扱えるようにしないといけないからなぁ。」
パニックは怖いな。
「初心者用の武器の貸し出しがこっちにあるから、来てみろ。」
ティオ爺に言われて行って見れば、使い古した色んな武器がいっぱいあった。
「ティオ爺、武器がいっぱいあるけど、どうしたらいいの。」
「ライラはこの辺りの杖を触ってみて手に馴染んだ物にしてみるといい。エンはこの辺にしておけ。」
示されたところを見ると、70~80
適当に手に取ってみるがやはり、
「ティオ爺。もう少し軽いやつがいい。」
「ん?なぜだ?」
「剣の重さにつられてしまう。」
「少しぐらい重くてもいい。エンは他の子より小さいが、すぐに大きくなるから大丈夫だ。」
小さいって言わないでほしいな。しかたがないじゃないか、まともにご飯も食べられないのだから。
「うーん。ん?ティオ爺、ここは武器の貸し出しっていっていたが金は払うのか?」
「いいや、金はいらん。正確に言うとこれらは、先輩冒険者の使い古しだ。
武器というのは魔物を殺すためのものだが、自分の命を守るものでもある。新人の頃は金がないから良いものは手に入りにくい。高い武器を買ったが、本当は安物のをつかまされていた。
そんな経験をした者たちから新人たちへの贈り物だ。だから、お前たちもいつか、武器をここに持ってきて、新人たちへ贈り物をしてほしいという意味をこめて、武器の貸し出しということだ。」
それは、いいやり方だ。孤児である俺に剣が買えるかと言えば、買えない。使い古しでも剣が手に入るなら、ありがたいことだ。
先ほどから気になっている剣がある。他の物よりも少し短く60セルメルの青い鞘に入っているものだ。剣を引き抜くとショートソードより細身の剣だった。レイピアとか言われるヤツだろう。
これを見た瞬間、スライムをぶっ刺すのに良さそうだなと思ってしまった。しかし、これも重たいな。
「エン。掘り出し物を見つけたな。それは中々良いものだぞ。」
「そうなのか?」
「作りがしっかりしている分、エンには重いかもしれんが、中堅者が使ってもいい程のレイピアだ。」
「ふーん。じゃ、これにする。」
「エンも決まったみたいだね。私はこれにしたよ。」
そう言いながら、ライラは緑の石がはめ込まれているショートステッキを見せてくれた。
「ライラは初心者向きのいいものを見つけたな。」
「えへへへ。」
「それじゃ、それを持ってここの練習場で使ってみようか、合わないようなら、またここに探しにくればいい。」
「はい。」
「ああ。」
ティオ爺の後を付いていって建物の外に出た。そこは中庭になっているようで、広い空間が広がっていた。
「ライラ。こっちに来なさい。」
ティオ爺はライラを連れて中庭の奥の方へ行った。どうやら、魔術師にライラの指導を任せるようで、身長と同じぐらいの長さの杖を持った、金髪の女性のところへ連れて行った。
「エンはこっちだ。」
連れて行かれたところは、木の棒に藁が縛りつけられた張りぼて人形の前だ。
「エンが思うようにその剣を使ってみろ。」
「え?指導してくれるんじゃないのか?」
「さっきのステータスが本当なら、それなりに使えるはずだ。指導はそれを見てからだ。」
えー。そうなのか?俺が使っていたのは心では勇者の剣だが、所詮その辺の木の枝だしな。ティオ爺がガン見してくるので、言われた通りに今までやってきたようにしてみる。
剣を鞘から抜き、片手で構える。重くてやはり剣先が下がってしまうなぁ。なんか、漫画とかであるよな身体強化って、できるかなぁ。どうするのか?魔力を全身に纏わせる?うーん?こんなものか。剣が持ちやすくなったし、これで行けそうだ。
張りぼて人形の真ん中に視点を定め、勢いよく突く。剣先は定めた人形の真ん中を貫き、人形が爆散した?なにこれ?
「ティオ爺この剣おかしいぞ。」
「おかしいのはお前だ。」
そう言われ頭に拳骨をくらった。いてー。
「わしは剣を使えと言ったのだ。なぜ、魔力も一緒に使ったのだ?」
「持てないから。」
「持てないから、体を作ることから始めるのに、いきなり魔力で体の強化をするバカがどこにいる。」
「ここ。」
「はぁ。もう一度隣の人形に剣を振ってみろ。」
ため息を吐かれてしまった。気を取り直して、隣の人形に向けて剣を突く。やはり、腕がぶれてしまって、思った通りの攻撃ができなかった。
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