第77話 クソ神って絶対こいつだろ!
そうか、そういうことか。エルフは転生者を排除しようとしていると、だから、王を殺さない限り俺が生きる道がないと言ったのか。
天津が生き続ける限りエルフに命を狙われ続けると同じ意味で俺も命を狙われると。
だが、転生者とわかるきっかけがあった筈だ。アリスはあるときから死の未来しか見えなくなったと言っていた。天津はなんだ?もしかして、この国を築き上げたことか。
じゃ、俺は何だ?いや、俺はまだ何もなしてはいない。このままだと問題ないのでは?しかし、今のままで俺は納得するのか?
ふと、頭をよぎった。教会の謎の声だ。俺のなぜこの世界に俺が存在するのかと言う質問に面白そうだからという答えだった。多分、その続きの言葉があったはずだ。
もう一度、教会に行くべきだろう。
俺は目の前のダンジョンマスターを見て
「なぁ。天津は俺がエルフに殺される未来を知っていたか?」
『知っていた。』
「そうか。」
俺はイベントリーからスノードームを取り出してダンジョンマスターの目の前に置く。小さな家と優しい雪が降る世界だ。この国の厳しい冬ではなく。穏やかに雪が降り積もり、温かい家がある世界だ。
「俺はこんな世界を望んでいた。」
俺は立ち上がり元来た入り口に向かうために歩きだす。そんな俺の背中に声が掛けられた。
『黒いエルフが言っていた。未来が遠くなるほど曖昧になると、一人の少女の未来は複雑過ぎて、頭がおかしくなりそうだとも言っていた。だから、未来視は絶対ではないということだ。』
俺は立ち止まり、ナーガの姿で語り掛けてきた男に宣言する。
「俺は俺の生きたいように生きる。そんなつまらない理由で死んでたまるか!」
転生者だからと理由で殺されてたまるか!
俺は次の休みの日に教会に来ていた。もう、北からの風が肌に突き刺さるように痛い。
たしか、今日はギラン祝賀パーティーがあると言っていていたなぁ。あの伯爵夫人は納得してくれたのだろうか。翌日は衣類部門にやってきて色々あったらしいが俺は関わりをもたなかった。
教会の入り口でお布施と言う名の強奪にあい、中に入っていく。中に入ると前列で祈りを捧げている人達がいるので、邪魔にならないように一番後ろの席に座る。
前回と同じ様に心の中で問いかけてみる。
『神と言うものに質問がある。』
答えてくれるかどうか。
―何かな?―
答えた!相変わらず軽そうな声だ。
『同じ質問だ。何故、俺はこの世界に居る。』
―面白そうだからではダメかな?―
なぜ、その一択なんだ!
『ダメだ。それは俺ではなくても良かったはずだ。』
―君じゃなくても良かったと言えば良かったよ。でも、僕的には君が良かったかな?だって、君面白いし―
結局、面白いしかないのか!アリスが言っていたクソ神って絶対こいつだろ!
『その面白いからと言われて、エルフの王に殺される未来を突きつけられているのだが?』
―ああ、それ?最近、僕の声をきちんと聞いてくれる子がいなくて、ちょっと苛つくかなぁ―
ああ、それって言われる事じゃないし、軽い感じで言われても本当に苛ついているのか?しかし、その後の言葉は今までの軽い雰囲気の声ではなくなっていた。
―君が何を心配しているかわからないが、君は我が名においてこの世界に喚んだ。だから、君の望む生き方をすればいい―
それっきり声は聞こえなくなった。収穫はあったようで無かった。多分、神の声を聞ける者たちは苛ついていると思うぞ。光の神に信仰を変えるほど。
わかったことは、先程の声の主に面白そうだからという理由でこの世界に転生した事だけだ。
はっ!だったらLUKを普通にしてくれと頼めばよかった。いや待てよ。面白そうっと言ってそのままかもしれん。そんな事を思考していると、肩を叩かれた。振り向くとそこにはライラが立っていた。
「あっ。お祈り中だった?」
「いや全く。」
ライラは俺の隣りに座り、正面の祭壇に向って祈りの姿をとった。少しして俺の方を振り向き
「少しお話しする時間はあるかな?」
「今日は休みだから時間はある。」
「じゃ、こっちに来て」
ライラに言われるまま付いていき、教会の中を通って、裏庭のような所に出てきた。
「やっぱ、外は寒かったかな?」
確かに風が冷たいが、太陽の陽がある分ましだ。
「いや、大丈夫だ。で、どうした?」
ライラは立ち止まり俺の方にふり向いた。
「きちんとお礼を言っていなかったと思って。」
ん?お礼?何のだ?
「新しい杖を買ってくれてありがとう。おかげで、光魔術が使えるようになったの。」
ああ、祭りの日に買った杖のお礼か・・・今思ったが、俺にお礼を言ってくれるのはライラだけじゃないのか?
「それはよかったな。なぁ。この前やってくれたまじないが書かれた本を見せてくれないか?」
「おまじないが書かれた本?ちょっと待ってて」
そう言ってライラは教会と逆の方へ走っていった。多分、光の神の慈悲を乞うまじないはアリスが書いたのではないだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます