第45話 腕組んで連れ歩くこと
「エン。私とデートをしよう。」
いまだに終わりが見えな書類とペン一本で格闘しながら、埋もれている俺にキアナが言ってきた。お前にはこの状況が見えないのか!
「俺は忙しい。」
「えっへん。私の休みは今日なんだよ。エン君。」
誰かの口真似をしているらしいキアナが休みだと言ったが俺の休みは今日ではない。
「今日は一人でデートをしてくるといい。」
「エンってバカ?一人ではデートって言わないんですぅ。」
イラッとくる。お前は俺の仕事の邪魔しか、していなじゃないか。この前も、プリンが食べたいと言って用意させたよな。
「エンはキアナとデートしていい、って大旦那様から了承を得ているから、今日はデート日和なんですぅ。」
意味がわからない言葉が出てきだぞ。ジェームズが了承した?
「ちょっと待て、ジェームズになんて聞き方をしたんだ?」
「普通に、エンとデートしたいから、エンの休みを今日にしてほしいって言った。」
「お前なんで人の休みを変えたんだ。俺にも予定と言うものがある。」
「え?この前の休みの日も昼から書類に埋もれていたって部門長が言っていたけど。それが、エンの予定なら、キアナとデートしてもいいよね。」
「ぐっ。」
確かに前の休みは昼まで寝ていたが、どうしても気になってしまい、昼から続きを始めてしまったのだ。
「さあさあ、今日はデート日和です。」
そうして、俺はキアナに外に連れ出されてしまったのだ。この大量の書類を置いて
キアナにキャスケットとフードを被るのを禁止され、黒豹獣人モドキの俺はキアナに腕を組まれ、引きずられるように連行されていった。
「ここで、昼食を食べよう。」
そう言って連れて来られた店は、なぜかカップルしかいない店だった。
「この店はなんだ?」
「え?知らないの?」
「知らん。」
なんで、知っていて当たり前みたいな反応をするんだ。
「アマツ様が恋人同士でゆっくり食事が出来るところっているよね。という鶴の一声でできた喫茶店なんだけど。知らないの?」
店の中に案内され席に着くが、キアナ。お前、色々おかしいぞ。
「そもそも俺とキアナは恋人同士でもなんでもない。」
「え?キアナは捨てられるの?」
ここ最近、聞いたことのあるセリフだ。
「食い意地の張ったキアナに俺が付きまとわれているだけだ。」
「キアナより他の女の方がいいのね。」
まだ、続けるきか。
「じいさんからの小遣い止めるぞ。」
「それはダメ。キアナの生命線だから。」
「キアナの生命線はいくつあるんだろうな。」
「5つ程?」
誰だ!キアナに金を毟り取られている不憫な奴は!
「それと俺は俺の生まれた以前の事を当たり前のように言われても知らん。あと、こちら側の商業地区は見習いに来てから覚えたことしか知らん。」
「それなら、物知りなキアナさんが、いろんなあれやこれやを教えて上げましょう。」
「仕事以外の知識はいらん。」
「そんな事をいちゃっていいのかな?商人志望なら客のニーズに合ったものを提供しなければならないと思わない?」
くっ。キアナにまともな事を言われてしまった。
そして、俺は食事が終わったあとも、キアナに腕を組まれ連行されて行った。
しかし、その殆どが
「ここのお肉は美味しいからお勧め。」とか。
「ここの果物ジュースの配合比率は天才的。」とか。
「ここのパンが一番美味しい。」とか。
全部、食い物の事ばかりじゃないか!他にないのか他には!なんだその顔は無知な俺に教えてやっているのに文句ばっかりだ?
食い物以外にもあるだろ。今流行のお守りがあるだとか、獣人専用のアクセサリーには尻尾用と耳用があってこの店の物が人気だとかあるだろ。
あ゛?アクセサリーの人気の店は何処だ?さっき行ったパン屋の向い側だ。ちょっと待て!腕が抜ける。そんなに引っ張るな。
「今日はキアナとデートだったので、エンはキアナにプレゼントをするべきです。キアナはこれが欲しいです。」
俺はキアナに人気のアクセサリー屋に連行され、耳飾りを買うように強請られている。おかしい。絶対にこれはおかしいぞ。今日は普通に仕事だったのに連れ出され、食べ物屋巡りをしてアクセサリーを買うように強請られているのはおかしすぎないか?
「キアナ。そもそもこれはデートではない。」
なんでガーンって効果音が付きそうな顔をしているんだ。
「キアナにデートという定義を問いたい。」
「腕組んで連れ歩く。」
「・・・・。」
それで、今日は連行されている気分になったのか。そもそもだ、俺とキアナの身長差を考えろ。そして、デートの意味もおかしいじゃないか。
「キアナはエンにこれを買って欲しいです。」
「欲しいなら自分で買え。」
店の中で
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