第119話 地図が役に立たない
怖ろしい。そこまでだったのか。ダンジョンマスターから聞くと運が怖ろしいほど悪い。なに勝手にダンジョンの仕様変更しているんだ。
運って本当になんだ?
「そ・・・そんな感じで出来ればダンジョンを通常に攻略するってことは控えたいんだ。直接そこまで行く方法はないだろうか」
『いいよ。』
「え?」
『そこまでの道を作ってあげるよ。君には良いことを教えてもらったからね。それぐらい僕には造作もないよ。なんせ僕はダンジョンマスターだからね』
アホー鳥が鳥胸を膨らませて威張っているが、所詮鳥は鳥だ。格好をつけても
明日迎えに来ると言って、アホー鳥は小屋の窓から飛び立って行った。アホー鳥が消えていった空はもう月が高く昇っていた。
「もしかして、俺たちが攻略したダンジョンって元々のダンジョンじゃなかってことか」
そんな事を言ってソルが頭を抱えている。
「確かに地図を手に入れても役に立たないことが多かったよな」
ルギアは懐かしそうに目を細めながら言っている。
「役に立たないことばかりだったじゃなか。はぁ。流石、アマツだよな」
ソル、それは天津を褒めているのか貶しているのか。
二人は酒を取り出して、昔話を肴に酒を飲みはじめた。俺の知らない事だ。母親だと言われても他人事にしか思えない。ただ、この国の人々に大きな影響を与えた人物だということはわかる。
アリスはそんな天津にどのような言葉を残したのだろう。まぁ、明日になればわかることだ。
俺は焼きすぎた魚を手に取り、口にする。少し苦いな。
『アホー!アホー!』
朝から波の音に混じって変な鳥の鳴き声が聞こえてくる。
『アホー!アッホー!』
人が気持ちよく寝ているというのにイラッとくる。
『アッホー!アホッホー!』
「うっせーぞ!アホ鳥!」
朝から気分は最悪だ。目覚めが悪すぎる。ルギアもソルも不機嫌な顔をしている。それはそうだろう。小屋の窓に止まったアホー鳥の大音量の鳴き声が目覚ましだったのだから。
『準備が出来たから迎えに来てあげたのに酷いね』
だったら普通に起こせ。大音量でアホアホ鳴くな。
朝食を取ったあとアホー鳥がダンジョンの中を案内してくれるという。因みに朝食も代表者の女性が用意してくれた。久しぶりの魚はやはり美味しいかった。
そして、俺はソルに荷物の様に抱えられていた。なんで毎回このスタイルなんだ?
『まだ朝だけど疲れてる?』
何故かアホー鳥に心配されてしまった。やっぱりこれはおかしいよな。
「いつもこんな感じだ。毎回文句は言っていたが、改善されたことはないので諦めた」
俺からはアホー鳥の姿は見えないが俺の背中が痛いので、背中の上に乗っているのだろう。地味に爪が刺さって痛い。
「エン、これは罠への対策だった」
俺を抱えているソルが答えてくれたが、足にバシバシ尻尾があたってこっちも地味に痛い。
「しかし、罠ではなくただの不運だったという真実は驚きだな」
そうだろうな。そして、その不運に皆が巻き込まれていくと。
さっきから、ルギアは何も話さないが、緊張でもしているのだろうか。
『ここを入って行くといいよ』
アホー鳥がそんな事を言ったので顔を上げると、トンネルの様にドーム状の暗い空間が目の前に存在していた。きっとこれは海の下のダンジョンから陸地につなげて来た道なのだろう。
その後もアホー鳥が『ここ右』とか『ここ下』とか指示を出す通りにソルとルギアが進んで行く。時には『ちょっと待って』と足を止められることもあった。
『いやー。本当にすごいね』
アホー鳥は何か感心したように声を上げた。
「何がだ?」
『本当は最初に曲がってからは
何だと!何かと右や左や曲がらされて、下と言われたと思ったら今度は上に登るように言われ、このクソ鳥!ふざけやがって!と思っていたら、俺の所為だったのか。
『ねぇ。君何者?僕のダンジョンをここまで干渉するなんて普通はできないよ』
「言っておくが俺は何もしていない。なんで
俺の心からの叫びが思わず出てしまった。異世界に転生したら冒険者になってダンジョンを攻略するって一度はやってみたいと思うじゃないか。
なんでダンジョンマスターにお願いしてダンジョンに潜らなければならないんだ。ダンジョンマスターが側にいてもコレだぞ。俺にはダンジョンをまともに攻略する術はないと見せつけられているみたいじゃないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます