第56話 絶対にバグだ!

「ジェームズ。やっぱりおかしい。俺の目は壊れている。」


「何がおかしいんだ?」


「何で一年前レベルが23だったのに93になっているんだ!おかしすぎるだろ。」


 ジェームズは呆れた顔になり


「エン。この一年で倒した魔物はなんだ?」


「グリーンウルフだろ、ブラックウルフ、ワイバーン、サーベルマンモス、ホワイトウルフだけだ!」


「はぁ。エン、そこがおかしいことに気がつこうか。」


 ジェームズにため息をつかれた。数にして20匹倒したか倒してないかぐらいだぞ。おかしすぎるだろ。


「普通は、ブラックウルフの討伐はできない。ワイバーンの空からの攻撃にも対応出来ない。サーベルマンモスの分厚い皮に刃は通らない。普通では倒せない魔物を倒しているんだから、それぐらい行くだろうな。」


 え?マジで?


「じゃあ、LUKはともかくSTR、AGI、INTが5桁でカンストしているんだが?」


「グアトールもそんな感じだったから問題ない。」


 そこと同じにしないで欲しい。


「さ、最後に龍人族ってのは絶対にバグだ!」


「エン。」


 ジェームズは俺の肩に手を置いて


「みんな分かっている。成人すれば大きくなるから大丈夫だ。プッ。」


 肩を震わせ笑いながら言うことじゃねぇ!



「なんだ?どうした?ジェームズ。何、面白いことがあったんだ?」


 ソルがアイリスを連れて入ってきた。なぜ、面白いこと限定なんだ。


「くっ。あとで、教えてやるさ。エン。彼女を見てみろ。」


 ソルがアイリスを俺の目の前に連れて来た。俺はアイリスを見ながら魔力を練り上げる。


「『鑑定』」


アイリス(西の56番)


 68歳

 種族:エルフ族


 Lv.20


 HP 107

 MP 92


 STR 51

 VIT 22

 AGI 44

 DEX 47

 INT 98

 MND 87

 LUK 24


称号

緑の手を持つ者



 え?低すぎないか?


「ジェームズ。Lv.20でMP 92だ。」


「本当に白者だったのか。アイリスだったか。雇うのは雇うが、ここの者たちはエルフ族に良い印象は持っていない。それでもいいか?」


「はい。頑張ります。」


「では、下りなさい。あとで、必要な書類を書いてもらう。」


「失礼しました。」


 アイリスはそう言って、頭を下げ部屋を出て行った。


「エルフにしては低姿勢だな。」


 ソルの感想に俺も頷く。


「で、俺が居ない間に、どんな面白い事があったんだ?」


 ソル、それは聞かなくていい。


「ああ、それがなエンは自分のステータスが見れる事を知らなかったんだ。」


「ああ、普通は成人まで教えられないからな。」


 ソルは分かっているじゃないか。ジェームズ、俺はおかしくなかった。


「それでなレベルが93なのはおかしすぎると言い出したんだ。」


「お!スゴイじゃないか!流石、アマツの血を引く事はあるな。」


 え?


「くっ。最後に龍人族ってのは絶対にバグだと、ステータスを見ても否定してきたんだ。」



 ハハハ。と廊下まで響いているソルの笑い声を背中で聞きながら、俺はゼルトの元に向かっていた。そこまで笑う必要はないと思う。


 食品部門の倉庫にたどり着き、商品をまとめているゼルトに声をかける。


「オッサン。ジェームズへの報告は終わったが、そっちはどうだ?」


「おう、エンか。こっちはもう少しかかりそうだ。出発は明日にしよう。今日はもう上がっていいぞ。」


「明日か、わかった。それじゃ、お先。」


「おう、お疲れさん。」


 簡単に挨拶をして倉庫から出ていく。さて、まだ昼過ぎだしどうしようかっ。

 いきなり、後ろからのタックルを食らった。誰だ!


「エン。お帰り!お土産はチョコレートでいいよ。」


 どうやらキアナからのタックル攻撃を受けたようだ。キアナ、チョコレートはお土産とは言わん。それはただの催促だ。


「キアナ、欲しいなら金を払え。」


「エンってばか?お土産にお金はいらないんですぅ。」


「何で仕事に行って土産が発生するんだ?」


 そう言うとキアナは胸を張って


「キアナさんへの感謝と求愛に対するお土産ですぅ。」


 あ?変な言葉が混じってきたぞ。最近、目の調子が悪いと思ったら、耳もおかしくなったのか?働き過ぎたか。今度ジェームズに長期休暇を申請しよう。う゛。

 今度は後ろから捕獲された。


「エン。お帰りなさい。」


 アルティーナが俺を捕獲しながら上から覗いてくる。くっ。これは身長差を見せつけているのか。


「エン。私もお土産が欲しいな。」


「なぜ、そこに土産が発生するのか聞きたい。」


 アルティーナにも聞いてみる。すると、アルティーナはモジモジしだし


「それは私への愛。キャ。」


 きゃ、ってなんだ。はぁ。本格的に耳がおかしくなった様だ。

 ジェームズに休暇を申請するのは早急にしなければならない。


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