第84話 鱗ってなんだ!
「己の種族を黒を持った者が食って、己の血を持つ者のみに置き換えて行ったと言われている。」
「意味がわからない。」
「突然変異の黒を持つ者の血が交じると、黒に侵食されるらしい。現にお前はアマツの色を持たずに俺の色しか持っていないのが証拠だ。」
いや、ちょっと待て。遺伝子的に双方の色が交じることもあれば、どちらかの色のみが子供に受け継がれることもあるし、一代飛んで隔世遺伝されることもある。何も不思議なことは無いし、恐れることもない。
この話何かおかしいな。
「ルギア。それは当たり前のことだ。何を今更言っているんだ?そんなもの確率の問題だ。黒色を持つ者が多くなれば黒を持つ子供も多くなるそれだけのことだ。」
俺の言葉を聞いたルギアはくしゃりと顔を歪める。
「本当にそういうところはアマツにそっくりだよな。アマツもそんな事は当たり前だと言ってくれた。」
「多分さ、黒は力があるんじゃないのか?ルギアは俺の前で使ったことないけど、普通に魔術を使えるよな。
獣人は魔力が少ないと言っていたが、俺が視た感じではルギア程魔力を持っている獣人にあったことないぞ?だから、生き残る確率が高くなる。だから、黒を持つ者が多くなる。
それを知った何処かの誰かが危険視をして黒を持つものを消そうとした。それだけなんじゃないのか?」
ルギアは唖然とした顔を俺に向けている。考えれば、おかしな話だと思うじゃないか。まるで黒が悪で白き神の世界で生きているのが罪だと言わんばかりに・・・あれ?もしかして、これもエルフ絡みだったりするのか?有り得そうだ。
「そう・・なの・か?」
「可能性てしては高いと思うぞ。あと、魔人の存在だ。俺は視たことがないから、予想するしかないが、魔人は元がどんな色を持っていようと、黒に染まってしまうと聞いた。その持つ力は強靭で、魔力も底がしれないと聞いた。その辺りに何か謎が隠されているのかも知れないなぁ。」
「そうなのか。」
「まぁ。ルギアが雪豹族だと言われても違和感しかないな。一層のこと黒豹族でいいと思うぞ。」
「くくく。そうか、黒豹族か。エン、お前が言うとそれで良いように思えてくる。」
ひとしきり笑ったルギアは戻ると言ってギルドに戻って行ったが、その表情は穏やかになっていた。多分今までに色々あったのだろう。
今は英雄と崇められているが、それまで、黒を持つルギアが受けていた物は辛いものだったのだろう。それを天津が受け入れてしまって・・・天津に依存してしまった?
天津!せめて拾った黒豹は自立させておけよ。
ルギアが帰ったあと、ゼルトと相談しながら、持っていく商品を黒猫のリュックに入れていく。はっ!俺のリュックは何処にいったんだ?普通に黒猫のリュックを使っているじゃないか。
リュックから入れた物を出そうした腕をゼルトに掴まれ、首を横に振られてしまった。俺は俺のリュックに入れたいだけだと言っても聞いてもらえず、荷物のように抱えられ、宿舎まで送り届けられてしまった。
なぜ、普通のリュックではだめなんだ!
寒っ。目を開ければ朝日が眩しい空を飛んでいた。なぜ、空を飛んでいるんだ?昨日はきちんと部屋のベッドで寝たはずだ。
「お、起きたか、エン。」
ソルの声がするが・・・ん?もしかして、後ろ向きに縛られているのか?
「なんで、こんなことになっているんだ?」
「ああ、昨日ゼルトと話して日が昇る前に出発することになっていたんだが、エンが全然起きて来ないから、連れてきた。」
出発時間なんて聞いてないぞ?
「おっさん!俺は聞いてないぞ!」
ゼルトの姿は見えないがマップ機能で見るとソルの前方を飛んでいた。
「わりぃー。言い忘れた。」
「忘れるな!それとソル、せめて起こせよ!外套の下は寝間着のままだろ!寒い!」
「よく寝ていたから、起こすのも悪いと思ったんだ。」
「はぁ。何処かで着替えさせてくれ。あと腹が減った。」
直ぐに騎獣を地上に降ろしてくれた。マジで寒かった。雪解けの水が流れている川の側に降り立ち、ソルが火を焚いてくれた。いくら外套を羽織ろうが、春の冷たい風が吹き抜ける上空に寝間着はないよな。
黒猫リュックから俺の荷物の一式を取り出し、着替えていると、上を脱いだところでソルに腕を掴まれてしまった。
「なんだ?ソル。寒いから早く着替えたいのだが?」
「あ、いやエンの鱗はやっぱり黒なのかと思ってな。」
うろこ・・・鱗!
「鱗ってなんだ!なんで鱗があるんだ?何処だ。何処にある!」
「エン。忘れているかもしれないが、お前の種族は龍人だぞ。アマツもそうだったが、寒いと鱗が浮き出ていたぞ。」
寒いと出てくる?鳥肌の代わりに鱗肌になるってことなのか?俺は腕を見る。二の腕の肌が浮き立った黒い鱗で覆われていた。マジで俺、龍人なのか?
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