第89話 アホー鳥ではないヨー
「おお、エン。お怒りのようだ。お前を睨んでいるぞ。」
リヴァイアサンの鋭い眼光が俺を捉えている。まぁ。誰が攻撃したかなんてわかりきったことだろう。俺もレイピアをイベントリーから取り出し、構える。
ん?歯の隙間から光?そう思った瞬間、俺は空中を飛んでいた。
「うぉ!エン、すっげー飛びすぎだ!」
俺はソルに抱えられ、リヴァイアサンの頭上高く飛んでいた。眼下には炎に包まれた舟と凍った海面が見える。
リヴァイアサンって火を吐くのか?やばいな。あんまり氷を溶かされると足場が無くなってしまう。
「ソル。以前はそのリヴァイアサンは剣で斬ることはできたのか?」
「俺とルギアの剣は通じなかったが、グアトールの
あれ?なんか変な言葉が出てきたぞ。まあいい。
「取り敢えず強化したソルの剣が通じるか試してくれ、俺は
俺にも重力解放の魔術を掛ける。
「わかった。」
そう言ってソルは眼下に向かって降下して行った。
そして、俺はリヴァイアサンを視て見る。勝てるのか勝てないのか。
リヴァイアサン
HP 2804856
MP 64683
STR 590000
VIT 1280000
AGI 29000
DEX 115000
INT 15000
MND 43000
LUK 56000
全体的に高いのは覚悟をしていたが、HPが高過ぎる。それに防御力も半端ない。勝てるか?
唯一の救いがあまりMPが高くないことか。
レイピアに魔力をまとわし、そのまま降下するが、リヴァイアサンは俺の存在に気が付き火が漏れている口を上空にいる俺に向けて開けて来た。避けられるか?しかし、こちらも魔術の発動準備に入ってしまった。このまま突っ切るか回避するか・・・突っ切ろう。結界を3重に張り、そのまま降下する。
「エン!」
ソルの声が聞こえるのと炎に体がのまれるのが同時だった。パキンパキンと結界が割れる音が聞こえる。パキン最後の結界が壊れてしまい、炎が俺の体を舐めて行く。
「『陣風雷撃!』」
口を開けたリヴァイアサンにそのまま突っ込む。レイピアから発する風で切り裂いていき、雷で焼き切っていく。
凍りついた海面には2つに切り裂かれ息絶えたリヴァイアサンとそのリヴァイアサンの体液にまみれた俺と唖然とした表情のソルがいた。
あれ?もしかして外皮は硬いけど内側はそうでもなかった?
でもさぁ。一撃で約3百万のHPが削れるか?もしかして、復活する?リヴァイアサンを凝視していると、光の粒になって消えていった。
ん?魔物ってこんな感じで消えていったか?雷の衝撃?
「ダンジョンの魔物みたいだな。」
ソルがぽそりとつぶやいた。ダンジョンの魔物!
「ソル!さっき西側のダンジョンの話していたよな。何処だ。何処の場所にある!」
俺の言葉を聞いてソルは腕を組んで考えだした。覚えていないのかよ!
「なんかさ、山の中でアマツがいつものように行方不明になっていたから、それを探していた時にアマツが崖の下の洞窟にハマっていてな。どうやらダンジョンらしいから行ってみようってなったから、正確な場所は知らん。」
アマツが山で行方不明になるのはいつもの事なのか。
「近くにここの住人みたいな奴らが住んでいた集落はなかったのか?」
「ああ、あったぞ。魚人の集落が。」
絶対、ここにダンジョンがあったんじゃないか!それで、エルフ王と暴君の戦いで入口が海に沈んでしまった。
おかしいと思ったんだよ。あのリヴァイアサンに生贄を交渉する知性があるとは思えなかった。
「おい、ダンジョンマスター聞こえているか。」
『聞こえているヨー。』
俺のすぐ側から声が聞こえたが、俺の側にはソルしかいない。
「何処だよ。」
『ココ。ココ。』
はぁ。聞き間違えじゃないよな。どう見ても「アホー」としか鳴かない九官鳥もどきから声が聞こえた気がした。
「アホー鳥が喋っているように聞こえたが気のせいだよな。」
『アホー鳥ではないヨー。ロロって名前付いているヨー。』
アホー鳥でいいんじゃないのか?
「なぁ。あんただろ?贄を要求したヤツは」
『そうだヨー。』
「なんでだ?」
『だってサー。ダンジョンの入り口が壊されちゃって誰もダンジョンに入ってこれなくなってサー。ダンジョンの維持が難しくなっちゃったんだよネー。』
「だから、贄なのか?」
『そうだヨー。今までの贄の子もダンジョンの中で暮らしてもらって居るヨー。今では村の大きさまでになったヨー。』
「はぁ。だったら、今の集落の近くに入り口を伸ばせばいいじゃないか。そうすれば、贄も必要ないよな。ユールクスは街をダンジョンに取り込んでダンジョンの維持をしているぞ。」
『はっ?町をダンジョンに取り込む?』
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