第94話 撫でてほしいな
作りきった。本店の従業員の夕食を作りきった。マジ疲れた。よく、ガジェフ一人で朝昼晩の食事を作っていたよな。
ミリアがいてくれて助かった。最初は戸惑っていたが、簡単な指示で、理解して指示通り動いてくれた。ガジェフより断然器用だった。
あと、4.5人ぐらいは欲しいところだ。それで、休みを入れて回せるはずだ。
そして、俺はやっと食事にありつけた。
「魔魚うめー!」
サーモンだ!脂がのったサーモンだった。
「ジェームズ。これ普通に川で捕れるのか?」
「ああ、捨てるほど捕れる。」
捨てるなんて勿体無い。ここまで、サーモンだと刺し身で食べたいよな。食べれないかな?一度川に獲りに行って、試してみるか。
「しかし、魔魚がここまでうまいとはな。もう少し多めに仕入れるか。」
どうやら、ジェームズも気に入ったみたいだ。しかし、なぜお前たちは俺の周りにいるんだ?
「エン。食後のデザートを所望する。キアナさんにチョコレートを出しなさい。」
なぜ、キアナからチョコレートを所望されなければならないんだ?
「エン。私にお土産はないのかしら?」
アルティーナ、モジモジしながら何を言っているんだ?俺は仕事に行っているんだ。お土産なんてあるはずないだろ。
「エンさん食後のお茶をどうぞ。それで、アイリスさんが育てているものはいつになったら茶として飲めますか?」
お茶は有り難くもらっておく、フェーラプティス。しかし、ハーブティーは好みが分かれるものだ。それに、お茶にするために作ってもらっているわけじゃない。
「エン。アイスが欲しいの。」
ヴィーネ、お前はそれしかないのか?毎回、毎回、なぜ、アイスをやらなければならない。一層のことこの食堂で作ってもらった方がいいんじゃないのか?
「エンさま。ミリアはお役に立ちましたか?」
おう、めっちゃ助かった。マジで助かった。俺はミリアの頭を撫でながら
「ミリア、ありがとう。ミリアさえ良ければ、このまま食堂で働いてもらえないか?」
「はい。エンさま。」
ミリアは目を細めながら笑った。うん。笑えるようなら大丈夫だろう。
「え?なんでこの子はエンに撫でてもらえるの?キアナさんも撫でて欲しい。」
「エン。私も・・・撫でてほしいな。」
「ヴィーネもなの!」
あ゛?
「お前ら、褒められることを何もしてないだろ!」
いつもいつも、何かをクレしか言わないだろ!お前ら!
俺は隣の席で酒を飲んでいるソルに話しかける。
「ソル。いつになったら剣の調整というのが終わるんだ?さっさと言われた仕事に行きたいんだが?」
「ああ、3日ほどだ。しかし、エン。この酒何の酒だ?」
「ここで出されている酒が何かなんて知らん。」
「いや。この前、エンからもらった酒だ。」
ああ、ヤマタノオロチを倒したときに使った余りの酒か。
「日本酒のことか。米の酒だ。」
「コメ?」
米はないのか。無いのだろうな。このフィーディス商会にいて、見たことないからな。
「湿地に生える穀物だ。もう少し暖かい地域じゃないと育たないものだ。それがどうした?」
「ああ、スッキリとした酒だと思ってな。」
この国でよく飲まれる酒はブドウ酒かエールだ。エールもビールほど炭酸が強いわけでは無く微炭酸の常温だったりする。
俺は取り敢えずビールでと注文するオッサンだったからなぁ。日本酒も好んでは飲まなかったし、ワインの味は好きじゃなかったからな。
俺は立ち上がり、洗い物をしているガジェフに声をかける。
「ガジェフ、エールを2つ持ってきてくれないか?」
「エン。お子様がお酒飲んだらいけないのよ。」
キアナ、お子様って何だ!まるで幼児みたいじゃないか。
「エンさん。果汁水を用意しましょうか?」
フェーラプティス、俺はお茶でいい。できれば食後は緑茶が飲みたいが、ないだろうから言わないでおく。
「俺が飲むんじゃない。」
ガジェフが俺の前にエールの入ったジョッキを2つ置いて行った。一つに氷魔法でジョッキごとエールを冷やしておく。外で飲むには肌寒い季節だが、暖かい室内ではこれぐらい問題ないだろう。
「ソル。これを飲んでみろ。」
「あ?それ、普通のエールだろ?」
スッキリしたものが好みなら、冷やして喉越しを良くしたエールも好みなんじゃないのだろうか。
「冷た!つめたい?」
ジョッキに触れた瞬間ソルはそう言って、ジョッキを手放した。ジョッキが冷たいことが不可解に思ったようだ。
「いいから、それで飲んでみるといい。」
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