第17話 どこのバカだ!
「俺がアイテムボックス持ちだとしたら、それを公言すると思うか?」
「大人だと普通は言わんが、ガキは自慢したい衝動ってあるから、言うだろ?」
「俺をバカにしているのか?」
俺はオッサンを睨み付ける。
「い、いやいや。一般論としてだ。あ、うん。普通は言わんな。」
「で、どうやって運ぶんだ?」
オッサンは一つの麻袋を取り出した。見た目にはお米10kgの大きさと同じぐらいだ。
「これは収納袋だ。商人や冒険者がよく使用しているが、小さいものでも1つ100万
どうみても、袋の口の大きさと入れる物体の大きさが合わんが?怪訝な顔でオッサンを見る。
「マジ入るって、試しに袋を持って、ワイバーンに触れてみろ。」
渡された袋を持ち、ワイバーンに触れてみる。消えた・・・。袋を除き込むが真っ暗でわからん。
もう1頭も触れてみる。よくみると、袋に吸い込まれているようだった。
「な。入っただろ?」
なぜオッサンがドヤ顔をしているんだ。
俺はワイバーンを売るために先程の街に戻って来た。オッサンに案内され冒険者ギルドに入り、素材取引カウンターの前に立った。少し顔が出ないので背伸びをする感じになってしまった。
「素材を買い取って欲しいのだけど、ここに出すには大き過ぎるから、どうすればいい?」
カウンターの女性は俺の顔を見るなり鼻で笑い。
「僕には大きすぎるかもしれないけど、ここに出して貰っていいのよ。」
と言って来たのだ。なんだ?小さいのが悪いのか?俺は収納袋の中に手をいれ、オッサンが『ちび助止めろ』とか言っているが、カウンターの女性からしたら、子供の言葉は信じるに値しないということだろう。収納袋からワイバーンの死骸を取り出す。頭の潰れた方だからその分は小さいな。
ワイバーンの死骸はギルドの内装を破壊しながら、床に沈んで行った。
「お姉さんの言うとおり出しましたけど?」
まあ、カウンターの女性はワイバーンの死骸に押し潰されて聞こえていないだろう。周りが騒がしくなってきた。
「なんだ!これはー!どこのバカだ!」
その、雑音を切り裂くような声が辺りに響き渡る。
「お前か!くそガキ!取引カウンターでこんなデカ物を出すなんて、ダメだってことぐらい考えればわかるだろ!」
声の方向をみれば、黒髪に丸い耳が生え、金色の目をしたオッサンが俺を睨み付けていた。黒い髪、俺以外で初めて見た。しかし、人族ではなく、頭に丸みを帯びた耳に黒い長い尻尾を持つことから、黒豹獣人だということがわかる。
「カウンターの女性にはいいましたが?ここに出すには大き過ぎると、しかし、女性は鼻で笑い『僕には大きすぎるかもしれないけど、ここに出して貰っていいのよ。』って言われたから出した。そこのハゲのオッサンも聞いている。」
「ハゲじゃない。」
オッサン、それがハゲじゃなければなんだ?
「ん?ジェームズのところのゼルトじゃないか。このくそガキはなんだ?」
「大旦那のお気に入りだ。ワイバーンを倒したのも、ちび助だ。ちび助、ワイバーンをしまってくれ。」
はいはい。俺はもう一度収納袋にワイバーンを入れる。床には、白目を向いて気絶をしている女性が倒れていた。本当にこの世界の人たちは子供だということでバカにしてくる人が多いいな。
「じゃ、ここの修理はジェームズに払ってもらうか。」
は?この豹獣人のオッサン、何を言っているんだ?こっちの過失はないだろ。担当者の指示にしたがったのだから。
「おい、豹獣人のオッサン。」
「俺のことか?」
「そうだ。俺はここの担当者にここでは出せないと言ったのに、ここの担当者が出せと言ってきたんだ。その指示に従ったのに、過失がこっちにあるってどういうことだ?そもそも、子供の戯言と判断した担当者の目が腐っているからじゃないのか?」
「じゃ、くそガキはこっちが悪いと言いたいのか?」
「当たり前じゃなか。担当者の再教育をした方がいいんじゃないのか?」
「くそガキが大人ぶってるんじゃね。」
俺は、豹獣人のオッサンに胸ぐらを掴まれ持ち上げられる。本当にギルドと名前が付くところは腐っているんじゃないのか?なんで、子供だからと言ってキレられなければならない。
俺は身体強化で掴まれた腕を蹴りあげる。直ぐに反対の手で掴まさそうになるが、頭を飛び越え、床に降りた。その時、被っていたキャスケットが落ちてしまった。ヤバい。直ぐに被るが、周りの目が恐怖に色づいていた。俺はそのまま、ギルドを飛び出した。
「黒い髪。」
豹獣人のオッサンの言葉が耳に刺さる。
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