第70話 対精霊戦

 いよいよSSSダンジョンへの挑戦が始まった。

 世界中から英雄を集めただけあり、最初の方は快調に飛ばしていたのだが、途中からまったく進めなくなった。


「あれは見たこともないモンスターだな。さすが未踏破ダンジョン、一筋縄ではいかないね」


 今回の攻略では、過去のデータを元にパーティ構成を練っていたとのこと。

 しかしながら、未踏破エリアには過去のデータは存在しない。

 ただまあ、それでも同系統のモンスターなら何も問題はなかったのだが……


「精霊系か……困ったな、アレには魔法は通じない。かといって普通の剣では傷一つつかない」


 さすが超難関と言われるだけはある。

 色とりどりの光の珠が現れたかと思ったら、様々な姿に変身して襲ってくる。

 今オレ達を苦しめているのは黒い珠で狼の姿をとって攻撃してきている。


「ハァッ! 参ります!」


 レミカ様がその狼を細切れにする。が、すぐに元通り。何匹かは消滅しているが……

 現状、精霊系にダメージを与えられるのは神器を持っているレミカ様のみ。

 で、奴らは狼に変身してはいるものの、ゴーレムと同じようにコアらしきものを叩かない限り消滅しない。


 前衛がひたすら防御に徹し、隙を見てレミカ様が細切れにする。

 それ以外の人は応援だ。オレも含めて。

 なんでも、魔法を撃てばその魔力を吸収し、さらに強くなるとか。

 試しに一発ぶちこんだら、狼の体が膨れ上がった。


「ハァ……ハァ……」


 レミカ様も随分お疲れのようだ。


『装填・ホローポイント!』


「セイジ、魔法はダメだよ」

「うす。でも、試したいこと、ある」


 赤外線スコープをオンにして見てみたとき、一瞬、赤いポインターが強く光るときがある。

 もしかしたら、弱点部分だと強く光る機能があるのかもしれない。

 えっ、今まではどうしてたかだって? こんな場面でもなけりゃ~気にしやしないっスよ?


 オレはじっくりと狙いを定める。くそっ、意外と的が小さいな……外したら敵を強化させちまう。


 ―――今だっ!


 オレの銃弾が狼の頭に吸い込まれる。その瞬間、狼の体が煙のようになり四散した!

 どうやらうまくいった模様。


「セイジの魔法は精霊を傷つけることが出来るんかじょ!?」


 王子様が驚いている、口調が戻ってますよ?

 しかしこれは厳しい。今までのように適当に撃つ訳にもいかない。

 なにせ、弱点意外に当たれば逆に強化してしまう。


 だがオレだって、今まで散々練習してきたんだ。

 マグロ鳥の羽に当てるため、どれほど血の滲む努力をしたことか。

 出来る限り傷のない状態で仕留めるために、何度も何度も……。

 下手打ちゃ町中の人から責められるんだもんなぁ。

 ありがとうマグロ鳥さん、あんたの犠牲は忘れはしない!


『装填・ホローポイント!』


 オレの弾丸により数を減らしていく影狼達。

 レミカ様もホッと一息ついている。


 その時だった!


 三体の影狼がぶつかったと思ったら一つの大きな熊に姿を変えた。


「あっ……」


 その一体には、レミカ様の剣が突き刺さったままの状態であった訳であり……今は熊の腹部に刺さっている状態。

 その熊が両手を振り上げる。


「レミカ嬢!」


 熊の光点はどこだっ!


『装填・ホローポイント!』


 オレの弾丸が熊の光点を撃ち抜く! 熊の体の一部が煙となり四散した。

 しかし! 片腕はまだ残っている。

 片腕となった熊がその腕を振り下ろす。


「くっ、まだだっ!」


 レミカ様の剣が輝く。その瞬間、熊の胴体がみじん切りとなり、その胴体の間をレミカ様が駆け抜けた。


『装填・ホローポイント!』


 残りの光点を撃ち抜く。熊はとうとう全てが四散し消えていった。

 ようやくこいつで全滅のようだ。


「セイジ様、助かりました。ふふっ、これで命を救われるのも2度目ですね」


 微笑みながらこちらへ歩いてくるレミカ様。

 最初の一発で熊の動きが一瞬止まった模様。

 そのおかげでなんとか立て直せたらしい。


「レミカ様?」


 と、こちらへ向かって来ていたレミカ様の動きが止まった。

 次の瞬間、レミカ様の背中から血飛沫が噴出しだした!

 ゆっくりと前のめりに倒れていくレミカ様。


『赤外線スコープ・ON!』


 空中に光点が見える!


『装填・ホローポイント!』


 光点を撃ち抜く。

 ボフンッと見えない空気の塊らしきものが四散する。


「無色透明な精霊……光の精霊か!?」

「そういえば聞いたことあるじょ……闇の精霊の集団がある所には、ボスとなる光の精霊が必ず存在すると……」


 そんなうんちくはどうでもいい!

 レミカ様はっ!?

 スカウトの人がレミカ様の元へ走り寄っている。

 だが、その状況を見た後、ポーションを振り掛けようともせずに左右に首を振っている。


「背骨がやられている……これではもう……助からん。……何か残す言葉はあるか?」


 前衛の人がレミカ様にそう問いかける。


「だ、大丈夫だジョ。ボクチンの回復魔法で……」

「おやめください王子、……苦しむ時間が延びるだけです」

「ぐふっ、残す言葉ですか……それならば・ごほっ」


 オレは問答無用で、エリクサーが入っていた瓶につめていたポーションをレミカ様の口に突っ込む。


「王子、回復魔法!」

「う、うむ!」

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