第29話 火力アップ!

 オレは急いでレベルアップの内容を見やる。

 まずは能力値上昇、


 能力値上昇:火力アップ小


 よしっ、火力が上がったぞ!

 次だ!


 弾選択:チャッカマン


 ……あんのボケ女神! だからこういうのは花火とはいわねえぇええ! だが、今はこれが役に立つ。ありがとう女神さん!

 オレは急いで火をつけて縄を焼ききる。

 こちらに足音が近づいてきている。


『装填・焼夷弾!』


 扉に向かって焼夷弾をぶっ放す。着弾と同時、扉が猛烈な炎に包まれた。これですぐには入って来れないだろう。

 オレはお嬢様の縄を解く。


「お嬢様! 壁、壊す!」


 オレはお嬢様に魔法で部屋の壁を壊すように指示を出す。


『エアハンマー!』


 お嬢様の魔法により壁に穴が空いた。

 オレは持っていたポーションをぐいっと飲み干す。

 すると見る見るうちに傷が治っていく。


 こないだのエリクサーなんだが、若旦那に飲ました後の空になった小瓶にオレのポーション水を入れておくと、時間が経てば経つほど効果がアップしていることに気づいた。

 瓶にも、なんらかの魔法が掛かっている模様。むしろ瓶が本体とか?

 なので、オレは常にその小瓶にポーション水を入れて常備していた。


 オレ達は開いた穴から脱出する。

 すぐに追いつかれそうになるが、


『装填・焼夷弾!』


 地面に焼夷弾をばら撒く。

 オレと誘拐犯達は炎を挟んで対峙する。


『ウォーターブロー!』


 フードの人が水の魔法で火を消そうとする。が、焼夷弾の炎は水では消えない。どころか、酸素を含んでさらに燃え上がる。

 オレはフードの人の肩に狙いを定める。少々痛い目にあってもらって……

 と、隣の男性がフードの女性に飛び掛る!?


「何をする!」

「お嬢様! 俺達ではあいつには敵いやせん! 今、あいつが本気ならお嬢様は殺られていました!」


 オレが攻撃するそぶりを見て慌てたようで、フードの人を庇った模様。

 あの人は、この世界の人にしては珍しく銃の価値を分かっていらっしゃるようだ。少々大げさな気もするが。

 なにも、命まで奪おうとはしていないのだけどなあ。ちょっとばかし肩にぽすんと。

 その時、はらりとフードがとれる。

 中から出てきたのは、赤髪のとても美しい女性であった。


「ラルズ! 顔を見られた! 生きては返すな!」

「無理です! 奴の手元に先ほどの魔道具がありやす。ということは……あれは固有神器」

「固有神器……だと!?」


 二人がオレを慄いた顔で見てくる。

 ふむ、オレは二人に向けて銃を構えるそぶりをする。

 二人は慌てて建物の陰に隠れる。


『装填・劣化ウラン弾!』


 オレは貫通弾にして牽制で何発か撃ち込む。


「お嬢様、逃げやしょう! これは俺達の手に負える敵じゃありません!」

「くっ、しかし……顔を見られたのならどのみち」

「生きてさえいれば挽回の方法はいくらでもありやす! 固有神器を持ってるって事は……本物の勇者か英雄クラス。正面から戦っても勝ち目はありやせん!」


 固有神器ってそんなに凄いのか?

 オレ、銃じゃなくてもっと他の物を貰ったほうが良かったのかなあ?

 二人の足音が遠ざかっていく。


 オレはミズデッポウにして、延焼しないように周りの建物を濡らしていく。

 そうこうしているうちに、ぽつぽつと人影が集まってきた。

 その中に……


「シュマ!」


 若旦那が駆け寄って来てお嬢様を抱きしめる。


「セイジが一緒だから大丈夫だとは思ったが、良かった! 本当に良かった!」

「お兄様……!」


 お嬢様は泣きながら若旦那にしがみ付いている。


「もうすぐ父上達も来るはずだ。ん、血がついてるじゃないか! どこか怪我でもしているのか!?」

「これは、セイジの……」


 若旦那がやっとオレの存在に気づいたのかこっちを見てくる。


「これ、ポーション、飲んだ」


 オレはポーションの瓶をプラプラさせて回復した旨を伝える。


「そうか……ありがとうセイジ! 君にはほんと助けられてばかりだ! このお礼はきっとさせてもらう」


 いえいえ、オレは当然のことをしたまでッス。

 だからそんなに気をつかわないで下さい。

 若旦那のお礼って、なんか嫌な予感がするんですよ~。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 その翌日の事だった。

 白旗を掲げた男の人が門の前で座り込んでいた。

 隣には縄でぐるぐる巻きにされた人が何人か居た。


「セイジ、一緒に来てくれないか」


 オレは若旦那と一緒にその男の人の元に行く。

 その男性は昨日オレ達を襲って来た方の片割れで、なんでもお願いがあるということだった。

 そのお願いとは……


「今回の事を黙っていて欲しい? だと……!?」


 昨日の事を水に流しましょうって事だった。


「バカを言うでない! まもなく王太子がこちらにいらっしゃる! その時に、きっちり話をさせてもらう!」


 そう言って憤慨するお父様。

 なんでも、迷宮のお宝をそちらの希望額でお売りしますって言ったら、王太子が来る事になった。

 どうやらこちらのご領主様は王家に媚を売っていると受け取られたらしく、王家の方々も、そこまでしてくれるならこちらも礼をつくそうと。

 ちょうど息子の結婚式もあるから、それに出席して祝いの言葉もくれるらしい。

 あれだな、結果的にいえば、迷宮のお宝をお金に変えたというより、人脈を手に入れたって感じ?

 こっちゃ単に、やっかいごとを押し付けてるだけなんですがね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る