めがたま。

第13話 プロローグ完結

「それじゃあ、今回の戦利品を精算するか」

「おいセイジ、いつまでもメソメソしてねえで、魔法使いなら魔石いるだろ」

　えっ、なんで？

　なんかタンクさんが魔石をオレに差し出してくる。

　えっ、これどうしたらいいの？

　オレは困った顔をアイラ姉さんに向ける。

「もしかしてセイジ……あなた魔法は独学ですの？」

　独学も何も、銃ぶっぱなしているだけだし。魔法といえるかどうかすら怪しい。

　魔法の理論なんてこれっぽっちも知らないっすよ。

　アイラ姉さんは呆れたような顔をして説明してくれる。

　なんでも魔物の体内には魔石という、色の着いた石が埋まっているらしい。

　で、その魔石、その色に対応した属性の魔法を強化してくれると。赤色の魔石なら炎の魔法強化とか。

　魔法使いってのは、その魔石を用いる事で強力な魔法が使えるようになるんだと。

　むしろ魔石が無ければ、役に立たないらしい。

　それを聞いたオレは魔石をガッツンガッツンと銃にくっつけてみた。

　うむ、なんの反応も示さない。

　これでレベルアップ出来たら楽だったんだが。

「呆れた奴だな……魔石はそんな使い方はしねえぞ」

　タンクさんが補足してくれるには、魔石に魔力を流しながら魔法を唱えるとか。

　魔力カー、あるのかな魔力？

　オレはうむむ～と唸りながら魔石を握り締める。

　炎でろ、炎でろって念じてみたが一向に反応がありません。

　うむ、オレには魔法の才能がないようだ。

「あなた一度、まともに魔法の勉強した方がいいんじゃありません？」

　そんなこと言われてもな～。これたぶん、あんま魔法とか関係ないから意味ないような気もする。

「ふうむ、セイジの魔法は無属性かもしれんの」

「無属性なんて聞いたことありませんわよ？」

　どちらにせよ、孤児達の面倒もあるから学校なんていく余裕はないです。

「じゃあいつもどおり全部売っぱらっちまうか」

「そうだな」

「そういやセイジ、これでおめえも立派な冒険者だよな？」

　ふと、カウンターのおじさんがそう言ってくる。

「よしっ、ちょっと待ってろ」

　そう言ってなにやら紙に書いている模様。

「さっそく指名依頼だ。こいつをこなせばグッとランクアップしやすくなるぜ」

　なんて書いてあるか読めないんですが？

「おめえが偶に獲って来て孤児達に振舞っているあの、マグロ鳥？　というやつか、あいつを獲って来てくれ」

「あっ、ギルマスずるいっ！　ちょっと私、倍出すから、私が先ね！」

「おいこら、」

「受け取ってないならお金が高いほうが優先よね」

「あっ、バカ」

　それを聞いた冒険者さん達が一斉に立ち上がる。

　えっ、姉さんまで何やってんですか？

　ムリムリ無理！　そんなに無理！

　えっ、馬車馬のように働けだって？　カンベンしてくださいよぉ。

◇◆◇◆◇◆◇◆

「どうした浮かない顔をして」

「父上、今回ばかりは、その、少々無理があったのではないでしょうか？」

「身分証が無い奴は私の領民ではない、不法に我が領地に滞在している不届き者だ。従ってその者どもをどうしようが私の自由なのだ」

　青年は何度も後方を振りかえり、一つの馬車を気にしている。

　その馬車には檻のような物を引いており、中にはさめざめと泣く少年少女たちが詰まっていた。

　今、その檻を引いている者達はここの領地の領主の一行であり、その青年は領主の長男であった。

「成人した者に絞っていたのではないのですか？」

　この領地では身分証を持たない者を原則、領民として扱わない。すなわち国外退去させる方向で定期的に人狩りを行っている。

　しかしながら救済措置も用意していて、現在いる領民の一定数以上の推薦があれば、身分証を発行できるようになっている。

　後ろの檻に入っている人達は、その一定数以上の推薦が貰えなかった者達だ。

　身分証を持った者が罪を犯した場合、その罪の重さにより推薦者にも罰則が与えられる。重犯罪ともなれば共に国外退去にもなりかねない。

　なので、そうそう推薦が貰える訳でもないのだ。

　本来は子供であろうともその原則が適用されるのだが、さすがに成人もしていない子供に推薦を貰えといっても無理がある。

　そういうことで未成年はお目こぼしをしてきた訳なのだが……

「前線のある国でな、大規模な攻防があったらしい。金を出すか人を出すか、そう言ってきおってな」

　青年は一瞬口を開きかけたが、思い直して口を閉じる。

　ならばお金を出せばいい、青年はそう言おうとしたが、我が父がそれを選ぶ訳がない。

　ここにいる者達は不法滞在者なのだ、これを差し出せばこちらは痛くもかゆくもない。

「どうせ身分証も貰えない奴などゆくゆくは犯罪者だ。犯罪者を差し出して喜ばれるのだからこれが一番であろう」

　そう言って笑う父から顔を背ける青年。

　ふと一行の足が止まる。どうやら目的地に着いたようだ。

「お父様、お兄様、お帰りなさいませ！」

　青年が乗っている馬車に一人の少女が駆け寄ってくる。

「お嬢様、あんまり走るとあぶのうございます！」

　慌てて周りの者達が駆け寄る。

「今回は幼い孤児達も来ていると聞きました！　少し貰ってもいいですか？」

　少女は毎回、こうやって見た目の麗しい人達を強請ってくる。

「またか？　ダメだダメだ。こんな犯罪者どもを私の屋敷に住まわせる訳にはいかん」

「でもっ、でもですよ！　まだ子供じゃないですか！　犯罪者になるとは限りませんわ！」

　それで今回は張り切っているのか。子供なら頂けると踏んで。

「あっ、なんか変わったのが居ますっ！　ほら、あそこの黒目、黒髪の子！　肌が黒くないのに目と髪だけ黒いなんて珍しいですわ！」