第12話
『装填・劣化ウラン弾!』
オレは、どでかい盾を持った鎧の兵士に銃を乱射する。
何発かぶち込んだらその兵士が音を立てて崩れだす。
後にはぐずぐずに崩れた鎧が残るだけとなった。
「いや、これはびっくりだ。リビングアーマーをこうも簡単にたおせるとは」
「だから言いましたでしょ、セイジはこう見えても魔法使いなんですから」
オレは今日、初ダンジョンに来ている。
なんでもアイラ姉さんが、
「ねえセイジ、ちょっと手伝ってもらいたい事があるんだけど」
と言ってきた。
どうやら、只今、潜っているダンジョンに弓が通用しない敵が居て、大層、困っているそうな。
そこでグリズリーをも貫通したオレの腕を見込んで、ぜひ助っ人にきてくれないかと。
それがこのリビングアーマー。
こいつは鎧の中にある弱点のコアを壊さない限り、無限に鎧や盾を製造し続けるとか。
剣や斧では盾に受け止められてダメージにならない。
弓で鎧の隙間からコアを狙うのがベストなのだが、中にはお肉付きのリビングアーマーが居て、弓が中のコアまで辿り着かないと。
そこでオレの貫通弾の出番だ。
コアさえ傷つければ簡単にたおせる、即ち、貫通する銃には、もってこいの敵なのだった。
「いや~、最初、見た時はこれだけ? と思ったもんだが、意外とつかえるもんだな」
意外とは余計ですよ。
と、そこへウルフ型の魔物が何匹が現れる。
「おっと、あいつらはそんなしょぼい魔法じゃ無理だろ。俺達に任せな」
魔物に銃を向けたオレに対してファイターさんがそう言ってくる。
「少々穴開けたぐらいじゃ死なないからな」
タンクさんが大きな盾を構える。
今回のダンジョン探索は、こないだ一緒だったアイラ姉さんとヒュッケルさん、それにファイター役1名、タンク役1名を加えた合計5名で潜っている。
「フッ」
オレは格好つけて鼻で笑うと、そのまま銃をぶっぱなす。
『装填・ホローポイント!』
次々と頭を撃ち抜いていくオレ。
当たった先から脳漿を飛び散らしながらウルフ達はたおれていく。
「まじか!」
「えっ、それってそんなに威力あったんか!?」
驚いている、驚いているな!
ホローポイント弾は標的に当たったあと弾がつぶれて変形することにより、より多くのダメージを与える事ができるのだ。
ウルフの頭ぐらいなら簡単に潰せる。
そしてだ、
「おおセイジ、随分腕をあげたんじゃねえか」
ヒュッケルさんが、ほとんどの弾が命中したのに驚いている。
そう、ここに来る前にちょうどレベルアップしたのだ。
その内容は、
能力値上昇:反動軽減
紙に書いて飾っていた甲斐があったのか、反動軽減の能力追加があった。即ち、撃った瞬間にぶれにくくなり、狙った場所へ当てやすくなったのだ。
それに加え、今回、弾選択が無かった代わりに、
機能追加:赤外線スコープ
などというお助けアイテムまで!
この機能をオンにすると、弾が当たる場所が赤く表示されて見えるのだ。
ちょっとモノホンとは違うが、まあ機能は一緒だから気にしない。
この二つの能力のおかげで、今までは3発に1発しか当たらなかったものが、逆に3発に1発ぐらいしか外さないようになった。
えっ、それでも結構、外してんじゃないかだって?
そりゃしかたあるめえ、銃なんて使ったことのない素人だもの。そのうち腕も上がる、といいな。
当たる場所が分かってて、弾も真っ直ぐ飛ぶのに、なんで当たらねえんだろな? まだ他にコツとかあるのか?
さらにだ、ミズデッポウで水を大量に出していた所為か、精神力? らしきものが多くなったようで、少々銃をぶっ放しても疲れない。
通常弾ぐらいなら、ジャンジャン連射できまっせ。
そのうちフルオートで撃てるようになったらいいな。また紙に書いとくか。いやさすがに無理かな。
だってそんなの、マシンガンルートがいらね~じゃん。
「ふっ、モンスター退治、オレ、任せろ!」
なんて格好良く決めて見せた訳だが。
「おうセイジ、やれるんだろ? やってみせろや、ほら」
「………………」
銃を撃つ。モンスターに当たる。そしてすり抜ける。
「おいおい、あいつは最弱モンスターだぜ? ほらどうしたセイジ」
うすっ、自分、ちょっと調子に乗っていたッス。
ファイターさん達がちくちくオレを刺してくる。
やめて、押さないで! ひぃ~!
オレの目の前に居たのは、どんなゲームでも大抵最弱モンスター『スライム』であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ププッ、大層、格好つけておきながらスライムに負けるなんてね」
「がっはっは、まあ誰でも得て不得手はあるわな」
「そんな落ち込むな! ハッハッハ」
ダンジョンからの帰り道、さんざん笑い者になるオレであった。
あれだよスライム、水みたいに、たまぁ突き抜けるんでダメージになりゃしねえ。
アイツはオレの天敵だ!
まあスライム以外でも、レイスやゾンビなどの死霊系、ワニなどの大型系には役に立たなかったッス。
弱点のある敵なら、なんとかなるのだが、モンスターの中にはそもそも心臓が無かったり、頭ふっとばされようが平気で向かってきたりする奴らが居る。
そいつらは、どこを攻撃するか、ではなく、どれだけ攻撃するかが肝みたいだ。ゲームのヒットポイントみたいだな。
「まあほら、そこはパーティプレイというやつですわよ。得意な奴が得意な獲物をたおす、セイジは十分に役に立ちましたわ」
いつもの、お肉買取所に着いたとき、アイラ姉さんがそう言いながら一枚の板の様なもを差し出してくる。
えっ、これに名前書くの? なんかいろいろ書いてるが……さっぱり読めねえ。大丈夫かいな?
オレはとりあえず書き方を教わってその板に名前を記入する。
それを受け取ったアイラ姉さんはそれに自分の名前も書いているようだ。
そしてヒュッケルさん、ファイターさんにタンクさんと、順番に渡していく。
最後にそれをカウンターに持っていく。
カウンターのおじさんはそれを受け取ってオレをジロジロ見てくる。
暫く奥に引っ込んだ後、一枚の金属板を持ってきた。
「はいセイジ、今日からこれがあなたの身分証明書よ」
それを受け取ったアイラ姉さんがオレに渡してくる。
それには、先ほどオレが書いた名前とアイラ姉さん達の名前が載っている。
オレはキョトンとした顔で皆を見回す。
「そいつは冒険者である証だ。それを貰うためにゃ、4人以上の冒険者の推薦が要る」
カウンターのおじさんが説明してくれる。
もしかしてアイラ姉さんは、オレに身分証を授ける為に冒険に誘ってくれていたのか?
「一番上がおめえの名前だろ、そしてその下には4人の推薦者の名前が入っている。おめえが悪さした日にゃ、そいつらも罰せられるから気をつけろよ」
えっ、それなのに……ファイターさんやタンクさんは今日が始めてなのに……
オレはまたしても皆を見回す。
ファイターさんがオレの頭をゴシゴシと撫でてくる。
タンクさんは、おめえは信用が置ける奴だって言って肩を叩いてくる。
アイラ姉さんとヒュッケルさんは、そんなオレ達を優しく見つめてくる。
オレは不覚にも、堪えきれず涙を流してしまうのだった。
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