第11話 キッス、キッス!キッスッ!

 いや~、オレは知ってましたよ、二人が相思相愛なんだと。

 兄貴だって、何かと理由をつけては宿屋に来てたし。

 いや~、こんな事が切っ掛けになるとは思いもよりませんでしたが。


 姉さんは、兄貴のプロポーズを受けて硬直していらっしゃる。

 急なことで思考が追いついていない模様。

 だんだん硬直が解けてきたのか、ガクガク震え始める。

 姉さん姉さん、ちょっとその机掴んでるとこ、バキバキいってるッスよ?

 顔が赤くなったり青くなったりしている。そして最後にトマトのように真っ赤になったかと思うと、俯いて小声で、


「よろしくお願いします」


 って言った。プロポーズ成立です!

 その瞬間、宿屋の食堂に居た人達が一斉に奇声を上げ始める。


「やったなバルドック! お前らいいかげんくっつけよと思ってたのが懐かしいな!」


 懐かしいも何も今、先ほどの出来事なんですが?


「この野郎! ついにか~っ! か~、俺もかみさん欲しいぜ!」

「エステラっ、おめでとう! ほんと良かったよね」


 そう言って涙ぐんで、姉さんに祝福をささげる食堂のコックさん。

 二人とも周りの人達に手厚い祝福を受けている。

 孤児の女の子達も、わ~わ~言いながら互いに抱き合っている。


 そのうちなんか皆で歌を歌いだした。ウェディングソングか何かなのかな?

 オレはこっちの世界の歌なんて知らないからなんか疎外感。

 なので、


「キッス、キッス! キッスッ!」


 って煽ってみた。

 そしたら食堂の皆も大合唱。あっ、姉さんが鬼の様な目でこっちを見てる、やべっ、やりすぎたかな?

 そんな姉さんの顎をバルドック兄貴がそっとつかむ。

 そして、触れるか触れないかというキスをするのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆


「は? エステラの宿に風呂を付ける? 何、言ってんだ、あんなボロい宿にそんなもの必要な・あががが」


 早速、大工さんに浴槽作成を頼みに行ったのだが、まあ、普通の反応かね。

 ちょっと兄貴、それやりすぎでっせ。大工さんの顔が瓢箪のようになってまっせ。


 確かに普通の風呂だと経費がかかりすぎて運用は無理だろう。

 だがしかし、その経費の大半といわれる水については無料だ!

 なんせオレのミズデッポウから出すしな。


 そしてその次にかかる燃料費、これは孤児達に調達してもらう。

 風呂と同時に長屋のようなものも一緒に作る予定だ。

 風呂の掃除やら燃料の材木を調達することにより、その長屋に孤児達を住まわしてもらう。


 火種についてはオレの蚊取り線香で。これ、一度火がつくとオレが止めようと思わない限り消えないんだよな。酸素だって必要ない。さすが魔法?

 なので、枯葉などに放り込んでおけば火がつく。

 で、ここで大発見。なんと! 火の中に蚊取り線香放り込んでりゃ、あっという間に燃焼しきるではないか! うむ、当たり前だな。なんでこんな当たり前なことに気づかなかったのだろうか?

 それはともかく、これでハナビもレベルアップがしやすくなる!


 風呂と長屋が出来て以来、ひたすら火の中に蚊取り線香を放り込む毎日。

 なお、お風呂のオープンは夕食時から2、3時間の間だ。

 その間にオレはひたすらお湯を出す。偶にポーションを混ぜる。

 今なら、それぐらいは水を出し続ける事は訳がない。ポーションをずっとは無理だが。


 お風呂が出来て以降、姉さんの宿は大流行だ。

 お風呂だけでも人が集まってくる。

 特に女性に大人気、お肌ツルツルで皆さん大満足されている。


 で、裸の女性が集まれば男性も集まってくる訳で。

 え、混浴なのかって? もちろん男女別です、ちゃんと仕切ってますよ?

 ですがね、板一つ挟んだ向こうにパラダイスがあるとなったら……分かりますよね?


「いや~、笑いが止まらないってのはこのことを言うんだねえ」


 などと、姉さんもご機嫌である。


「全部セイジのおかげだな」


 そんなことないッスよ。兄貴があの時、一大決心をして、お金出してくれたから今があるんス。

 ねっ、これが先行投資の結果っス。


「お兄様、今日はわたくしがお背中をお流し致しますわ」


 孤児の女の子達は、もう隠す必要がなくなったので、必死に女の子アピールを仕掛けてくる。

 だがお前、ちょっとそれは間違っているような気もしないこともないぞ。

 偶にアイラ姉さんも来るからその時に色々学んでいるらしい。


 そういえばこいつら、毎日ポーション風呂に漬かってるせいか、やけにお肌に磨きがかかっているな。

 もはや、どう見ても孤児には思えない。

 ちょっといい服着れば、お嬢様って言っても騙せそうだな。

 まあ、そうやって素手で飯食ってるうちは無理か。


 そうこうしているうちに、やっと待望のアレのレベルが上がりました。


 能力値上昇:火力アップ極小


 弾選択:線香花火


 打ち上げ花火になるには、まだまだ遠そうですなあ……

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