第72話 それは全てを過去にします。

「セイジ様、モンスターです」

「うす!」


 レミカ様が剣を構える。

 あれからさらに数日が経過した。

 いまや、レミカ様は本調子を取り戻したご様子。

 戦闘までこなせるぐらい回復した。

 しかしながらスカウトの人の言葉を信じ、場所は移動していない。


 まあ、うどんとバナナでまだまだ数日は篭ってられそうだしな。


『モデルチェンジ・ハナビ』『換装・花火手榴弾!』


 偶にモンスターがこの袋小路に向かって来るときがある。

 あまり近寄られるとオレ達の存在がバレてしまうので、コソッとモンスターの後方へ手榴弾を投げ飛ばす。

 そうやってモンスターの後方で爆発させると、驚いたモンスター共はその後方へ慌てて戻っていく。


 無駄な戦闘はしないに越した事はありませんよね?

 つ~かあいつら、こんな袋小路になにしに来てんだ? つれしょんか?


「セイジ様、精霊です……」


 モンスター避けの護符だが、精霊には効いていない模様。

 どうやら目や耳にあたる部分がないので、魔力? らしきものを辿ってきてるようだ。

 普通に襲ってきやがります。


『装填・ホローポイント!』


 だがしかし、ここは袋小路、一直線に伸びる坑道。狙い放題だぜ!

 超遠距離からの必中攻撃!

 精霊は魔法を無効にし、モンスター避けの呪布が利かないという問題はあるものの、視界や音で索敵できない分、索敵範囲は狭いようだ。

 遠距離からだと、ただの的であった。


 獣に身を変えてもオロオロと周りを見渡すばかりだ。


 オレが精霊なんて楽勝だなってレミカ様に伝えると、


「神器はそのほとんどが接近武器です。精霊を遠距離から殲滅できるのは……セイジ様くらいかと」


 そう言われました。

 なるほど、精霊もオレと相性がいい敵なんだな。

 と思ってたら光始めましたオレの銃。

 キタキタ! やっときました!


 弾選択:成型炸薬弾


 ハ!?


 なんだっけ成型炸薬弾? そんな弾ってあったっけ? 字を読む限りかなり凄そうな武器なんだが。

 う~ん……使ってみるか……いやいや、何か危険そうな匂いがプンプンする。特に壁に撃ったら絶対駄目な気がする。

 只一つ言えることは、これ、銃器の弾じゃないよね?

 まあ、焼夷弾の時点でアレなのは知っていたが。


「セイジ様、アイアンゴーレムです!」


 ……なんか、おあつらえ向きなのが来たなあ。やってみるか? やっちゃう?


『装填・成型炸薬弾!』


 アイアンゴーレムに当たった瞬間、大爆発を起こした。

 周りの壁に大ダメージでござる。

 これ、狭い洞窟で使っちゃ駄目な奴だ。

 煙が収まった後には、胸にぽっかりと開いた穴を見つめるアイアンマンさんが。

 その穴の周りは鉄が溶けたような状態になっている。


 あっ、思い出した。成型炸薬弾、確か溶けた鉄? のようなものを前方に噴出することにより貫通力をあげ、さらに爆発ダメージを周囲に撒き散らす奴だ。

 対戦車擲弾発射器、所謂、ロケットランチャーに使用される弾だ。


 ゆっくりと背中方向に倒れていくアイアンゴーレム。合唱。


 しかしいいのか女神。

 もうこのハンドガン、ライフル・マシンガン・ロケットランチャーの性能を備えているのだが?

 ルート選択意味ないな。


 ただ、もろ手をあげて喜ぶ事もできないかも。なんかゴッソリいったような気がする成型炸薬弾。

 えっ、何がだって? たぶん精神力?

 体から何かが抜けるような感触がしたんすよぉ。


「え、え~と、凄い?」


 なぜか疑問調になっていらっしゃるレミカ様。

 あまりの凄さに実感できてない模様。

 現状、どんな魔法でもアイアンゴーレムを貫通できるなんて聞いた事無い。


 さすが現代科学の結晶! 今尚、対戦車兵器として一線級に活躍されているだけはある。


「何? 凄い音がしたから急いで来ましたけど……このゴーレム、穴があいてるじゃないの」


 と、そこへ遠くからシュマお嬢様が駆けて来る。

 えっ、なんでこんな所へ?

 そんなシュマお嬢様、オレを見かけると飛び掛ってきた。


「セイジっ! 良かった! 無事でしたのね!」


 ちょっとだけ涙目でござる。

 つ~かお嬢様、なんで体をまさぐるデスか? 匂いとか嗅がないで下さい。


「ふう、大丈夫のようね」


 何ガだよ?


「勇者様、ご無事でしたか!」


 ライラック達まで? あ、迎えに来るって言ってたスカウトさんも居るな。

 話を聞いたところによると、救出の為にメンバーをかき集めたそうな。

 そこで前回の『死者の辿り着く終焉』攻略のメンバーに、スカウトさんを交えた人数でここまで来たらしい。


 つ~か、何気にこいつらすげ~んじゃね? 王子様のミラクルパーティでもここまで来るのに一苦労だったのに。


「まあ私達はラルズさんの能力で、ひたすら敵を避けてましたからね」


 なるほど。まあそれでも、ここまで来れたのは凄いんじゃないかと思うけどな。


「よし、すぐ戻るぞ。こんなとこ長居するような場所じゃねえしな」

「うす!」


 と、フォルテが奥に捨ててあった、うどんが入ってた容器を持って来る。


「兄ちゃん、なんかうんめえ気配がするぜ。これなんだよ」


 お前はほんと、食い物の事になると鼻が利くなあ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る