第71話
「お、おいっ」
「苦しむ時間延びる、かもしれない」
だが、
「諦めるのは、可能性を、潰してからだ!」
諦める事は何時でも出来る、しかし、助けようとすることは今しか出来ない。
ポーションのおかげで傷口は随分塞がってきた。
あとは切り離された背骨を繋げるだけだ。
王子が真っ赤な顔で回復魔法を掛け続ける。
「セイジ、バナナを」
「うす」
「……たとえ一命を取り留めたとしても」
何か言いたそうなファイターさんをスカウトの人が肩を叩いて諌める。
「好きなようにさせてやるがええ」
遠くから青い光が近づいてくる。
「また精霊か!?」
『赤外線スコープ・ON!』『装填・ホローポイント!』
来るならきやがれ! 一匹たりとも近寄らせはしない!
「背骨は繋がったじょ」
その青い光の集団を片付けた頃、王子がそう言ってくる。
「確かに繋がってやすね。動けますかい?」
レミカ様は首を左右に振る。
「でしょうね。背骨は人にとって急所でもありやす。これを切断されて元に戻る人はそうそういやしません」
「そんなっ」
まだだ、まだポーションを飲み続ければ……
「その時間がありやすかね?」
「王子、探索は一旦中止にしましょう。……後は捨てて帰るか、担いで帰るか、どう判断されますか」
「あなたは一国の王子なのです。皆が助かる手段を選んで下さい」
王子様はプルプル震えている。
担いで帰ると選択した場合、これからの敵から逃げることはできなくなるだろう。
かといって、全ての敵との戦闘を行っていたなら全滅になりかねない。
なにせ1名脱退、その1名を守りながら戦わなければならない。
オレはありったけのバナナとチョコバーを出しスカウトの人に預ける。
「なんの真似だい?」
「ここに残る。レミカ様治るまで」
全員があっけにとられた顔をする。
「ダンジョン、袋小路ある、そこ、モンスター来ない」
態々行き止まりのとこまでモンスターは来ない。
そこで息を殺してやりすごそうと。
モンスター避けの護符を張り巡らせておけば数日は大丈夫だ。
「そうか……セイジなら食べ物も、飲み水も自前で用意できる」
「本気か……!?」
オレは力強く頷く。
「ははっ、何が可能性を潰すだ。潰した先から作ってりゃ意味ないさな」
そう言ってスカウトの人が笑う。
そしてふと真顔になってこう言ってくる。
「一週間だ。3日で帰って4日で戻ってくる、それまで……生き延びろ」
「ウスッ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
オレはレミカ様の額に濡れタオルを乗せる。
あれからずっと発熱で唸っている。
やはり致命傷ともなれば、エリクサー印のポーションでもそうそう回復しないか。
オレはバナナを布で搾って、ポーションを混ぜたバナナジュースをレミカ様に飲ませる。
しかし、甘いモンばっかりじゃまずいよな。
塩、貰っておくんだった。
レミカ様は随分、汗をかいている。バナナだけじゃ塩分補給がたりやしない。
つ~かバナナ……確か塩分を排出しやすいんじゃなかったけ? あれ? これ逆効果っすか?
と思ってたら光始めましたバナナ。
よしっ、次は塩分ある物お願いしますっ!
能力値上昇:産地ブランドアップ2
弾選択:ウドン(回復効果つき)
そうきたかぁ……確かにあれ、塩分多いよなぁ。
うぉっ、うめえぇえええ。これはきっとサヌキなウドンに違いあるめぇ!
しかし、トッピングがないとウドンだけでは飽きるな。
おおおっ! かきあげやぁ! トッピング出せるっすか! マジッすか!
おおおっ! 肉やぁああ! 肉ウドンやぁあ! こっちはCHIKUWAまで!
やべぇ出しすぎた、さすが主食、モウ食えねえ。
そうだ! 熱をだした時にはこれ! カマァタマァ!
おっと、ドラエな人風になっちまったゼ。
熱々のうどんに卵をようく混ぜて、醤油出汁でかき混ぜる。うん、うんめええ。
おお、レミカ様も無意識にウドンを貪っておいでだ。
皆さんも風邪の時は、ぜひアッタカイ卵とじウドンをおすすめっす。
つるつる食べやすく栄養満点! 具とかもお好きなものを入れ放題。
体力つきまっせ。
そのうどんのおかげかどうか、3日目にはレミカ様も体を起こすぐらいには回復した。
「ありがとう。もはやセイジ様には旦那様とかおこがましい、奴隷としてこき使ってもらいませんとね」
そう冗談を言って笑顔まで見せてくる。……冗談ですよね?
「しかしこの、うどんという食べ物は素晴らしいですね! 毎日食べていても飽きがまったくきません。つるつるっとお腹に入っていくので……少々食べすぎてしまいそうです」
うどんは太りやすいっていいますしね~。お気をつけ下さい。
レミカ様は随分うどんがお気に入りになられたようです。はい。
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