第73話

「兄ちゃんおかわり!」


 お前はほんと良く食うなあ。

 ダンジョンから脱出した翌日、皆さんがうどん食いたいって言うので振舞ってござる。


「俺は卵と鳥天たのむぜ」

「あっ、私、エビ天お願い」

「むほーー! これは美味なのじゃぁああ!」


 ダンジョン組みは道中食ってたから慣れたご様子でトッピングを頼んでくる。

 王子様は初めて口にするうどんに感動しているご様子。


「むほっ! むほっ! ほぐほぐっ、うんめぇええ!」


 そんな王子様を幸せそうに眺めるカリュリーンさん。

 また太りますよ? バナナと違って塩分多め、カロリー高いっすから。


「心配いらねえぜ兄ちゃん。いっぱい動けばすぐにへこむぜ」


 最近、ラルズさんのしごきにも慣れてきたフォルテがそう言ってくる。


「あ、そういやまたコレ光ってんだけど……こんどは朽ちたりしないよな」


 フォルテがダガーを差し出してくる。

 ふむ、これは能力追加の方だな。

 オレはフォルテのダガーをレベルアップする。


 半透明のウインドウに『LevelUp!』の文字の後に、


『凄く錆びた短剣がレベルアップいたしました。以下の能力が追加されます』


 と出た。そしてその内容だが、


 能力値上昇:飛距離アップ


 属性追加:闇


 飛距離アップってなんだよ? 短剣の癖に。

 オレは遠くの木に向かって短剣を投げる。そんなに力を入れていないのにすっ飛んでいきやがった。


「あっ、また投げた。大事に使ってくれよぉ」


 どうせ装備リセットで戻ってくるだろ?

 フォルテがぶつぶつ言いながら装備リセットでダガーを取り寄せる。

 あとついでに闇属性が付いたことを教える。


「属性? そうなるとどうなるんだよ?」

「知らん」

「あんちゃ~ん」


 隣のシュマお嬢様が代わりに説明してくれる。

 なんでも闇属性が付くと、闇属性の敵に大ダメージなんだと。

 普通、逆の光属性に大ダメージじゃね? って聞くと、


「言い方が悪かったですね。勿論、反属性である光には大ダメージですよ。只それ以上に、同属性の場合、相手の属性値を上回った場合、一発で消滅させられるほどの威力となります」


 ふむふむ、闇を制するものは光でない、それ以上の闇であるってことですか?

 それって属性値が低い場合はどうなるので? えっ、壊れちゃうの!?


「神器である以上、破損はまずない。低いという事もないでしょう。即ち、これを越える闇の神器でない限り、闇に対しては十分な威力を発揮するということですわ」


 つ~ことは、あの闇属性の精霊でもスッパリやれるのかな?

 試しに行くか?

 いやさすがに昨日の今日でダンジョン再開はないか。


 ん、そういやシュマお嬢様のヘアピンはレベルアップしないのだろうか?

 良く見ると光ってる様な気もする。

 オレはお嬢様からヘアピンを貸してもらう。

 うん、光ってるな。あれだ、うさぎさんの飾りと髪に隠れていて分かりにくかった模様。


『LevelUp!』『ヘアピンがレベルアップいたしました。ティアラにグレード変更いたします』


 おっ、ちょっと豪勢になったぞ。

 冠の様な形になって中央に赤い宝石のような物が付いている。左右にはウサギさんマークのワンポイントありだ。

 シュマお嬢様が手を叩いて喜んでおられる。

 ん、まだ光ってんな。

 経験値が2レベル分溜まっていたのか?


『LevelUp!』『ティアラがレベルアップいたしました。以下の能力が追加されます』


 経験値と熟練度の両方が溜まっていたようだな。


 機能追加:攻撃魔法無効化


 いきなり凄いのがきたなオイ!


 これはアレか? あのダンジョンクリアしろっていう女神様のお達しなのだろうか?

 オレはシュマお嬢様の髪にティアラを掛けながらその効果を説明する。

 あっ、興奮したお嬢様が鼻血吹いた。


 まあしかし、どちらにせよ王子様がどうするかだ。


「神器使いが一気に増えたじょ。しかし、あまり大所帯にするのは……」


 大所帯だと何がまずいので?


「まず、洞窟内が窮屈になるじょ。そうなると動きが制限されるんだじょ」


 それ以外にも食料や荷物、怪我や病気など、数が増えれば問題も増えるとのこと。

 ふうむ、食料はオレのうどんがあるし、荷物は食料分減れば結構節約できるだろ。

 問題は動きの制限か……確かに狭い通路に長い列を作っていればモンスターの攻撃を受けやすく、罠にも掛かりやすかろう。

 そうだな、二組に分けるとかどうだろうか。


「2両編成?」


 そう、戦闘組と待機組みの2つのパーティを作り、待機組みは後方にて待機。警戒・索敵しか行わない。

 そして戦闘組と定期的に人を入れ替え体力の回復を図ると。


「それだと全討伐しなくてはならないのではないか?」


 そこはラルズさんに頑張ってもらおう。

 ほら、シュマお嬢様達がダンジョンの奥深くに来たような感じで、待機組みだけ隠蔽かけてもらうとか。


「あら、それでしたらモルスを貸し出ししましょうか」


 姫様が護衛の侍女の人を貸し出してくれるらしい。

 なんでも隠密系の魔法はお手の物だとか。

 あの人の武器も神器だし、以前戦ったあのレベルなら……もしかしたら一番役に立つお方かもしれない。

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