第74話

「それではモルス、セイジのことはお願い致しますわ」

「いっそのこと姫様もご一緒にどうですか?」

「ホホホ、もう2度とダンジョンになんて行きませんわ」

「そんなことおっしゃらずに、ほら、いい機会ではありませんか」


 侍女の方が姫様の手を引っ張っている。

 しかし姫様、柱にしがみ付いて離れない。随分とトラウマになってるからなぁ。

 まあ、嫌がってるようですし、そこらへんで許してあげれば?


「姫様の召喚魔法は世界最高クラス。魔王だって呼び出せます。きっと良い戦力になりますわ」

「あらあら買い被りですわ。わたくしごときが……いい加減離せよゴラァ、召喚魔法なんてもうコリゴリなのよ!」


 もうあちらは放っておこう。


「では現状の戦力を確認するじょ」


 前回の王子様のパーティに、シュマお嬢様のパーティ(ライラック・ドスナラ・ラルズ・フォルテ)を加えたメンバーとなる。

 神器持ちなのは、オレ、レミカ様、ライラックに一応フォルテ。それと姫様の侍女のモルスさんの5人か。

 そういやシュマお嬢様のティアラはどういった扱いになるのだろうか?

 お嬢様の魔法は神器扱いにはならないかな。


「補助特化型の神器ですから、攻撃には影響していませんわ」


 それは残念。


「レミカラート嬢の体の方は大丈夫かじょ?」

「はい、全てセイジ様のおかけです。以前より体が軽くなったぐらいです」


 そのレミカ様、帰ってきて以来なにかよそよそしい。

 なんか一歩引いてるというかなんというか。

 付かず離れずって位置かな?


「ふふっ、随分入れ込まれてしまったようですねセイジ様。彼女の立ち位置は護衛の立つ距離。きっとあなた様の騎士を自負しているのではないですかね」


 モルスさんがそう耳打ちしてくる。


「レミカラート嬢の祖先は騎士の家系であるじょ。覚悟しておくといいじょ」


 王子様まで耳打ちしてくる。なんの覚悟ッスか?


◇◆◇◆◇◆◇◆


「精霊が来たぞ!」

「陣形を変える! セイジ、フォルテ、前に!」

「ウスッ!」


 遠方の精霊はオレが、中距離ではフォルテの短剣の投擲で殲滅する。

 それでも近くまで来られたら、3人の神器持ちの前衛が始末する。


「よしっ、下がって休憩していてくれ」

「うす」


 最初、疲れたら交代っていう方向で進んでいた訳だが、途中から相対する敵によってメンバー交代に変わっていた。

 腐っても王家の血筋、なかなかの状況判断で敵を殲滅してきている。


「おめえの神器はすげぇなあ。あの距離をピンポイントで当てられるだなんて」

「弓ですと、曲射しないと無理ですわね。こんな洞窟じゃ曲射もできませんし、さすが神器というとこですね」


 オレの銃の評価もうなぎのぼりである。


「いやいやこっちの小娘の短剣も大した物だ。見た目は少々あれだが、状態異常に属性までついてる。なにより手元に戻ってくるってのが一番だな」


 フォルテの短剣もかなり役に立っている。

 掠っただけで持続ダメージ追加だ。

 しかもその持続ダメージの腐食、かなり神経にくるらしく、モンスターどもの動きがとたん遅くなる。

 投げても切っても使える分、接近戦でも十分な威力を発揮する。


 銃は近寄られたら盾の人の後ろに隠れるしかできないからなあ。


「おいドスナラ。もっと腰を下げろ、腕は体に密着させるな!」

「はい!」


 ライラックの弟のドスナラだが、現パーティメンバー内でお荷物になっている模様。

 まあ、周りの実力が違いすぎるというのはあるけどな。

 なのでずっと待機組みで、休憩にきたタンク役の人に散々指導(スパルタ)されていたりする。


「運がいいなお前、ここに居る奴らは全員英雄クラスだ。そんな奴らの指導を受けられるんだからな」

「は、はい!」


 弟さん涙目である。その涙は嬉し涙か悲しみの涙か……まったく戦闘していないのに一番怪我を負ってないかドスナラ。

 で、そのドスナラの姉であるライラックなんだが……


「勇者様の護衛は私1人で十分だ!」

「同じ魔法剣士、そんなことを言わずに仲良くしましょうよ、ね?」


 レミカ様とじゃれあっておいでだ。

 レミカ様は後ろからライラックを抱きしめて言う。


「シュマ様、このお方が以前言ってた?」

「え、ええ……こう見えても立派な成人ですよ」

「神よ! ありがとう」

「ち、ちげ~し、私まだまだ成長するしっ!」


 コノ人、小さければ性別関係ないんだ。ってシュマお嬢様が呟いている。

 いったい何の事でしょうかね?


「しかし、ライラックの神器はとんでもない代物ですね」


 恐ろしい物でも見るような目でライラックの魔法剣を見やるレミカ様。

 どうやらこの魔法剣、エンチャント特化型の魔法剣で、掛ける魔法により特性を変化させるんだとか。

 即ち、どの属性の剣にも自由自在という訳だ。

 なおかつ、


『エンチャント・瞬撃』


 素早さの補助魔法を剣にエンチャントすると、レミカ様レベルでの動きをライラックがしている。

 剣により身体能力まで向上されている模様。

 レミカ様曰く、


「これはもう神器というより魔剣の類ですね」


 ってことだ。

 まあ実際、呪われてたしな。

 女神様も大層奮発した模様。……もしかしてSSS級のダンジョンじゃなければ呪い解除されてなかったかも?

 うん、深くは考えないでおこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る