第67話
「あれほどの目にあっていながら懲りていないのですか?」
王子様のパーティが決まった。
魔法使い役は、王子とこないだオレをぶちのめしたレミカラート様。
で、前衛3名、弓役1名、スカウト1名。他、オレという、合計8名のパーティとなった。
まずは腕試しに、目指すSSSダンジョンと良く似た構成の中級ダンジョンに来ている所だ。
「おいおい、王子だけじゃなくて、こんな子供の子守までせにゃならんのか?」
「宮使えはつらいさね、まっ、仮にも英雄、ちょっとは役に立つんじゃない」
「だといいがなあ、はぁ……足手まといにだけは、ならないでくれよ」
散々な言われようである。
「今からでも遅くはありません。引き返すことをお勧めします」
いや、引き帰したら水とか食料とか足りないっスよ?
スカウトの人には事情を説明して今回は荷物が少なめである。
「王子、ほんとに大丈夫っすか? 確かにみせてもらいやしたが……不安しかねぇっす」
まったく皆、オレの事を舐めすぎですぜ。
『装填・聖水弾!』
「おいっ、何を!」
オレの聖水弾がレミカ様の肩に止まっていたゴーストを撃ち抜く。
「なっ、悪しき見えざる手、だとっ」
「いつから憑いていた!」
なんか皆慌てて候。
ダンジョンに着いたので、望遠スコープを使いダンジョンの中を覗いていたのだが、その時にレミカ様の肩に怪しき影が映った。
望遠スコープも赤外線スコープも、姿を隠している敵を発見することが出来るのだ。
「ダンジョン着いた、索敵、そこに居た」
「悪しき見えざる手を見ることが出来るのか!」
なんでも、悪しき見えざる手ってのは呪いの一種で、憎々しいあんちくしょうをこっそりと妨害しまくるそうな。
危険な場面で背中を押したり、攻撃の瞬間をずらして致命的な隙を作ったり。
ちなみにモンスターではなく呪術によって作られた呪詛のようなものらしい。
「ダンジョン攻略を良く思わない連中の仕業でしょうな……大方あの宮廷魔術師……」
「しかし……見えざる手を発見、駆除など……よほど高位の神官でなければ……」
「あっ、言ってなかったじょ、っと言葉遣いが戻ってしまったな。セイジは女神が遣わした本物の勇者ですよ」
「「「ええっ!?」」」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「おう、体汚れたんで例のヤツ頼めるか」
「ウスッ」
オレは素っ裸になったタンクさんにお湯をかける。
「うほっ、生き返るぜ。まさかダンジョンの中で湯浴みが出来るとわな」
「いいですわね……次、私もお願いしてよろしいですか」
弓役の女性の方が言ってくる。
「えっ、お前も裸になるのか? いや~、眼福じゃわ~」
「バッキャロぃ! 誰がお前らの前で脱ぐかってんだ! そこの角で出して貰うんだよ……覗いたらコロスぞ」
「お、おう」
弓の女性はみな、アイラ姉さんのように2面性があるのでしょうか?
うすっ、そこの角っすね。えっ、もう脱ぐんすか!? オレまだ居るんですけど。
「子供に見られてもなんの問題もありませんわ」
オレ……子供で良かったかも……
「ええ、それではセイジはあれで18歳なのですか!?」
「はい、その通りです。彼は女神の遣い、幼い外見は女神の遣いの特徴的な部分ですね」
あっ、タイミング悪い事に王子様とレミカ様がオレのことを話している。
弓の人がオレを見つめてくる。ハハハ、席外しましょうか? えっ、どっちにしろ男にゃ見えないからいいって?
喜んでいいやら、悲しんでいいやら……
◇◆◇◆◇◆◇◆
「セイジ殿、その……あのちょこばーとやらを頂けぬか?」
ごっついおっさんがナヨナヨしながらチョコバーを強請ってくる。
どうやらお気に召したご様子。
「うむ、コレを食すと力が漲るようだ! ぜひ娘にも食べさしてやりたい」
ええ、いいっすよ。帰ったらお渡ししますね。
「あ~、その~、俺にもくれねえか」
男といえども甘いものは惹き付けられる魅力があるっすよね。
それに、甘いものはリフレッシュになるっスから。
「これは……ばなな、魔力が回復していく。天界にはこのような果物がなっているのでしょうか」
いやそれはどうでしょうか? でもありそうな気もする。
バナナは子供から大人まで大人気ですからね。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「後ろからも来たぞ、セイジとスカウトを守れ」
『装填・焼夷弾!』
後方に炎の壁を作るオレ。これで後方の敵は足止めできる。
後は時間稼ぎにフルオートで通常弾でもばら撒いておくか。
「なんだあいつ、普通に強いじゃねえか」
「……私の目は節穴だったようですね」
◇◆◇◆◇◆◇◆
『装填・劣化ウラン弾!』
オレの貫通弾が遥か上空にいるキメラっぽい奴の翼を貫く。
「落ちてくるぞ! みんな囲え!」
今回のボスは翼の生えた異形の獣であった。
天井が数階層の突き抜けになっており、魔法が届かない位置からのブレス攻撃などを仕掛けてきた。
あんなのどうするのかなぁと思ってたら、奴が疲れるのを待って地上に降りてきたときに総攻撃をかけるそうな。
で、疲れさすためにブレスを吐かさなければならないらしい。
そこでオレの貫通弾の登場。なあに、アレぐらいの高さ、マグロ鳥より低いぜ。
望遠スコープと劣化ウラン弾で羽を穴だらけに。
避けようにも、さすがにあの距離では銃口が見えまい。
そして落ちて来たキメラを全員でたこ殴り。
落下ダメージでかなりキてたようでございます。
「ふう、これ最速更新したんじゃね?」
「凄いですわセイジ! あの距離を狙えるなんて!」
弓の女性からブチュー頂けました。
ありがとうございますっ!
「これはほんとセイジのお手柄だな」
「いや~、ほんとびっくりでさあ」
と、神妙な顔をしたレミカ様がオレに近づいてくる。
「すまなかった。見た目で判断するなど愚の骨頂だと知っていたはずなのにな……ぜひお詫びに我が家にご招待したい」
そしてそう言うのだった。
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