第66話 対剣姫戦

「それは余とて同じ事」

「正直な話、私はファイハク王子がダンジョン探索に向かう事自体、反対でございます」


 今回このような催しに参加したのもそれを言いたいが為だったらしい。

 話を聞く限り、もう少し大人になられてからとか、子供のうちは大人に守られていればいいとか、過保護そうなセリフが目立つお方でござる。

 母性が強いのだろうか? うん、母性を象徴する場所はかなり大きいですし。


「余は成人するまでに、なんとしてでもやり遂げねばならぬのだ」

「分かりました。それ程の決意ならばもう何も言いますまい。ただ、どうしても行かれるというのなら私をお選びください」


 そう言ってこちらに向く。


「私がこの者より優れている事を証明いたしましょう」


 えっ、なに? なんか司会者さんが木刀をレミカ様にお渡ししているのですが?

 えっ、オレと決闘? えっ、ヤダよ。そっちのおっさんとすればいいじゃないか。

 ちょっ、おっさん逃げるなよ! どうしよう舞台が整ってしまった。


 会場にオレとレミカ様の二人だけとなる。

 仕方ない、


『手加減・ON!』『装填・不殺弾!』


 開始の合図と同時、不殺弾をぶち込む。が、見事に避けていらっしゃる。


「げぼぉぁああ!」


 そのまま木刀でぶっ飛ばされるオレ。


「ふむ、これでは不公平ですね。魔術師は距離があってこそ光る職業ですし……」


 そう言って会場の端の方へ行くエミカ様。

 オレ、ギブアップでいいですか?


『装填・不殺弾! フルオート!』


 そんなレミカ様に向かって銃を乱射してみる。しかしながら、剣ではじいてらっしゃる。あれ、人間ッスか?


「こんなものですか……まあ、先ほどの大道芸をしないのは褒めてあげます」


 姿が消えたかと思うと一瞬にして目の前に現れる。距離かんけーーねーじゃん!


「見ることすら敵いませぬか? あそこのダンジョンには私より素早いモンスターも居ますよ」


『装填・劣化ウラン弾!』


 レミカ様の木刀がボッキリと折れる。


『装填・焼夷弾!』


 オレはレミカ様から離れながら炎の壁を作り出す。


「ほう……」


 感嘆の声を上げるエリカ様。


「少々見くびっていたようですね」


 そう言いながら腰の剣を抜く。えっ、それ使うのぉ!? やべぇ、木刀のうちに負けとくべきだった。

 オレは中央に散らばっている岩の欠片を見やる。

 明日はわが身か……


『装填・不殺弾! 3点バースト!』


 逃げることにした。

 不殺弾と焼夷弾をばら撒きながら会場を駆け巡る。


「ちょっ、なんでこっち来るの? 危険だろお!」


 一番近い司会者の方に向かって走り寄る。


「逃げる判断をした事は褒めてあげます。しかし、他人を巻き込むのは減点です」


 えっ、と思ったら宙に浮いてた。ああ、オレもバラバラになるのかなあ……


◇◆◇◆◇◆◇◆


「セイジっ! 大丈夫!? しっかりしなさい!」


 目を開けると心配そうな顔をした姫様がそこにいた。


「まさか勇者に勝るとは……彼女は要注意ですわね」


 オレが起き上がるとホッとした顔でそう言い出す。

 また黒い思考が渦巻いておりますね?


「困ったジョ、魔法使い枠はレミカラート嬢に決まってしまったじょ」


 いいんじゃないかな? あの人、オレよりかなり役に立つと思いますよ?

 つ~か、あのレベルでも厳しいのか今度のダンジョン。

 あのスピードで襲ってくるモンスターとかいたらオレじゃ手に負えないぞ。

 ゲームみたいにホーミング弾でもあればいいんだろうが……


 銃の欠点は銃口が向いている方にしか攻撃できないという点だ。

 すなわち、銃口を見れば当たる場所が予想できてしまう。

 次に銃声だ。

 銃声が鳴ったことにより攻撃したことがばれてしまう。


 どんな攻撃も、当たらなければゼロダメージである。


「オレ、魔法使い、あきらめる」


 うん、今回は相性が悪すぎる。

 あんな人がいるならお任せしよう。


「せいじぃ~」


 王子様が泣きそうな目で見てくる。なにも行かないとは言ってないっスよ?


「オレ、衛生兵、やる」

「は?」


 そう、衛生兵でござる。


「オレ、水、出せる」


 そう、オレを連れて行くだけで最も大量に場所を取る水が必要なくなる。

 お湯だって出せる。毎日シャワー浴びれるっすよ?


「オレ、ポーション、出せる」


 効果小とはいえ回復薬も現地調達可能だ。

 対アンデッド戦では聖水煙という切り札もアル。


「オレ、バナナ、出せる」


 そして食料にすら困らない。

 尚且つ、バナナには魔力回復のオマケつきだ。


「セイジは便利だなあ」

「なので皆、オレ、守る」


 そう、荷物持ち役の人と同じように守ってもらおうと。


「今回のスカウトはこの国一の人物を呼んである。普通に戦っても十分強い。なのでセイジ一人守るぐらいなら問題無いじょ」


 それではオレは、徹底的にサポートに徹すると致しましょうか。

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