第52話

「セイジ」


 なんでしょうか?

 それから数日後、またしても姫様から呼び出しがかかる。

 なんか森の方を親指でクィッ、クイッと指差している。


「ケルベロスが出るそうよ」


 うすっ、討伐に行けってことっすね?

 オレは若旦那達に協力してもらってケルベロス討伐に向かう。

 まだ傷が癒えていなかったようで、それほどの労力もなくたおす事ができた。


 そして、だ。光始めましたオレの銃。


 今度は何が増えたのやら。


「兄ちゃん、なんか兄ちゃんからもらった短剣光ってんだけど」


 どうやらフォルテの短剣もレベルアップがあるようだ。

 とりあえずフォルテの短剣から。

 銃を少し離れたとこに置き、小さくレベルアップと唱える。


 すると短剣の上に『LevelUp!』という半透明なウィンドウが。


『折れた短剣がレベルアップいたしました。錆びた短剣にグレード変更いたします』


 これだけ? まあ、初級ダンジョンのアイテムだし仕方ないか。


「兄ちゃん、これ、悪くなってねえか?」


 折れていても切れてたからなあ。錆びてると鈍器にしかならない。まあ、頑張れ。


「まあ、練習用として使うなら折れてるのよりましだろ」


 ラルズさんがそう言って励ます。

 さて、次はオレの銃なんだが。


『ハンドガンがレベルアップいたしました。以下の能力が追加されます』


 能力値追加のほうだったか。


 機能追加:フルオート/3点バースト


 ホワイっ!?

 えっ、フルオート!? えっ、それってマシンガン!? えっ、いいの!?


 オレは恐る恐るフルオートにして撃ってみる。

 おおっ、ちゃんと連射できてる!

 3点バーストはどうだ? おっ、これフルオートより3点バーストの方が連射性能がよさそうだな。


 女神様! あんたはええひとやぁ。さすがは女神と言われるだけはある! よっ! 太っ腹。


 オレはフルオート機能をオンにして大木にぶっぱなす。

 あれ、これ意外と難しいぞ? だんだん銃口が上に向いていく。

 あと、物が小さい所為か、撃ちながら銃口を移動させるのも重くて狙いづらい。


 そういや、フルオートは照準がぶれて大半の弾が無駄になるとか聞いたことがあるな。

 3発ずつ連射する3点バーストは、その欠点を補う為に開発されたんだっけか?


 だがしかし、これはすごい火力アップだ!

 弾倉交換のない状態でフルオートってことは、ほぼマシンガンと同じ。

 さすがにマシンガンほど連射性能が良い訳ではないが、十分、実用に耐えうる。大木が蜂の巣だ。

 よし、これで特殊弾をばらまけば……


『装填・劣化ウラン弾!』


「ん、セイジ。何こんなとこで寝てんだい?」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 使いどころが難しいなコレ。

 単発だと、ああ、精神力? が切れそうだな、やべえってのが分かるが、フルオートだと気づかないうちに気絶していた。

 特殊弾は3点バーストに抑えといたほうがいいかもしれない。

 フルオートは余裕があるときにしか使えないな。まあ通常弾なら問題はないだろうが。


 やはりマシンガンは弾切れが要注意でござる。


「セイジッ! ちょっと聞いてるの!」

「うすっ」


 そしてシュマお嬢様、最近しきりとダンジョン行きたいと言ってくる。

 そんなこと言われましてもね、ほら、オレが一緒に行くとモンスターが無限に寄って来る訳ですよ。

 えっ、なんすかそのダサい服? えっ、モンスター避けの魔法が掛かっている? ……オレがそれ着るのぉ?


「ここなんてどう? ほら、未踏ダンジョン。ここを攻略すれば私も英雄よっ!」


 そこS級って書かれてないっすか? それにもう英雄ならなれたじゃないっすか?


「名ばかりの英雄なんていらない! おれはっ、英雄王になるんだっ!」


 だからそれはなんの影響ですか?


「未踏破ダンジョンは、ほとんどがS級だからね。まあ、S級じゃなきゃ踏破されてるよね」


 若旦那は、シュマにはちゃんと初級から順番にと言っているのだが、シュマお嬢様はどういう経緯かは兎も角、英雄になられたお人。

 初級ダンジョンで不甲斐ない場面を見られる訳にはいかないと。

 それならせめて中級にしましょうやっていうラルズさんの助言の元、出来る限り、シュマお嬢様が英雄と知られていなさそうな場所を探る。


「リュト王国とかどうでしょうか? あそこならぎりぎり語源が同じですし」

「そうだな、あそこは治安も良かったし、この国とはあまり交流もない。そこならばシュマが英雄と知れ渡っている事もない」

「じゃあ初級でも問題はなさそうだな」


 行くメンバーはどうされるので?

 こないだと一緒? シュマお嬢様、オレ、フォルテと、ラルズさんも?

 ラルズさんは基本は手伝わない? 危険があった時だけですか……残りのメンバーは現地調達になりそうっすね。


「若旦那、ハルシアお嬢様宛てにお客様が来られたのですが」


 そんな風に会議を行っていたところ、お客さんが館に訪れた。で、そのお客様というのが、


「お姉様! いいかげんお戻りくださいっ!」


 ハルシアお嬢様の弟君だった。

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